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混沌なる後宮
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しおりを挟む「何だあれは?」
ディミトリオ・ハクヤ・ロンサンティエは訪ねてきたリリィの離宮の正面玄関が騒がしい事に眉を顰めた。
「宰相が来ていますね。
・・・あぁ。
自分の息のかかった者を送り込もうとしてリリィに・・・いや、リリィ様に拒絶されたのではないですか?」
呆れた顔で溜息を吐いたクレイに苦笑しディミトリオ・ハクヤは後ろにいたスサとセキエイに声を掛けた。
「問題ないと思うが、気をつけてやってくれ。」
「「承知しました。」」
楽しそうな護衛の2人が頷くとディミトリオ・ハクヤの存在に気づいた宰相が飛んで来た。
「大公様・・・ご機嫌麗しく。」
「あぁ、宰相もな。
これは何事だ?」
「それが・・・姫巫女様の護衛達が先走り致しまして・・・あの。
立ち会いが行われる運びになりました。」
「ふふ・・・立ち会いか。」
「大公様。
お止め下さい。
龍の姫巫女は安全に保護されるべき存在です。
護衛が1人だけなど、ありえません。」
普通の場合なら宰相の言っている事が正しいだろう。
しかし、“龍王島”に渡り、コテツとアリスを知っている男達は同意する事はなかった。
ディミトリオ・ハクヤは気の毒そうな顔で宰相を見下ろした。
「あの2人は、これまで魔獣や野獣の巣窟でリリィを守っていたのだ。
龍の姫巫女の護衛の力量も計りたいだろう?
宰相。
ここは見守ろうではないか。」
微笑むディミトリオ・ハクヤであったが、本心ではコテツとアリスの強さの一旦を見られるのではないかと期待していた。
目の前の男が止める気はないのだと悟った宰相は苦虫を潰した様な顔をした。
この男が帰還してから、己の思惑から外れる事が多く、苛立ちを隠す事が出来ない。
そんな上司の怒りを知ってか知らずか、皇帝に仕える騎士達はイキリ立っていた。
歴史あるロンサンティエ帝国において、誉高き騎士として皇帝陛下に忠誠を誓う日々。
建国の要という龍の姫巫女の護衛騎士を任じられたのは昨日の事。
尊敬する宰相閣下からの任命に心が震え、意気揚々と離宮に来てみれば龍の姫巫女の両脇には既に当たり前の様な顔で仕える2人の男女がいた。
宰相の言伝を伝えても、追い返された屈辱を忘れる事はない。
何よりも龍の姫巫女に興味すら持たれていない事に貴族上がりの者達は自尊心が傷ついていた。
「準備は良いのか?」
騎士としての武装している自分達と比べて、目の前に立つ男は実に身軽な侍従としての姿だった。
男・・・コテツは騎士を一瞥すると頷いた。
「必要ない。」
手ぶらで前に出てきたコテツに騎士達のコメカミが音を立てた。
「馬鹿にしやがって。」
試合開始の声を待つ事なく、コテツに切り込んだ騎士が剣を振り上げる。
沸き立つ騎士達が次に目にしたのは、一瞬で地面にめり込んだ仲間の姿だった。
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