溜息だって吐きたくなるわっ!〜100賢人仕込みの龍姫は万年反抗期〜

ぽん

文字の大きさ
72 / 473
混沌なる後宮

71

しおりを挟む
 龍の姫巫女に毒が盛られた。

 この恐ろしい事態に皇妃メッサリーナが出した決断は侍女の始末だった。

「おの愚か者を引っ立てよ。」

「皇妃様!
 お許しを!お許しを!」

 引き摺られる様に衛兵に連れて行かれる侍女が泣き叫んでいる。
 皇妃とて侍女がやりたくてやった筈がない事くらい分かっていた。
 あの侍女は第1姫付きの侍女である。
 
 横目で顔を青褪める娘を見やりながら、今ここで娘・・・アブリエル・エマを断罪する訳にはいかないのだ。

 今日の茶会は先日の皇帝の失態を補う為に催した筈だった。
 ロンサンティエ帝国の立場が絶対ではないと分かってしまった今、龍の姫巫女との関係を深める必要があったのだ。

 娘であるアブリエル・エマには茶会の意義を言って聞かせた筈だった。
 何度も何度も教えた筈だった。

 自分とそっくりの娘を幼少期より可愛がってきた。
 皇帝の寵愛を失っても子供達だけが皇妃メッサリーナの生きる意味だった。

 皇帝の正妻として・・・次期皇帝の母として・・・。
 その牙城が崩れていく。

「皇妃様。
 今日の采配は龍の使者及び後宮管理人として私が行います。
 後宮の警備も改めて考え直す必要があるようですね。」

 先日まで女達の獲物として逃げ回っていたディミトリオ・ハクヤが“龍王島”からの帰還後から大きな顔をしている。

 今までは皇帝に嫌われた皇弟大公に憐れみ含め、夫に愛されない欲望を満たすオモチャに使ってきたが、そうも言っていられそうもない。

 皇妃メッサリーナは才女であった。

 宰相ムク・フランを父に持ち、貴族の
子女が通う学園でも優秀な成績を収めてきた。

 皇妃に選ばれ、2人の子宝にも恵まれた。
 夫が他の女の元に通っていようが後宮という場所で絶対的な地位を確保しているのは彼女の政治手腕が大きい事も起因していた。

 彼女は魑魅魍魎が住まう後宮で生き残りをかけたのではない。
 その後宮を支配してきたのだ。
 
 しかし、彼女は今になって自分達よりも地位が高い女性が後宮入りするとは考えてもいなかった。

 “龍王島”? 龍の姫巫女?
 
 真宵ごとと片付けていたモノが現実にやって来たのだ。

 かつての皇妃は龍の姫巫女とどの様に付き合ってきたのだろうか・・・。
 歴史の上では龍の姫巫女は・・・皇帝と結ばれ皇妃となっている。

 皇妃メッサリーナは愕然とした。
 もしかしたら、目の前の可憐と妖艶さを兼ね備えた若き娘が私から夫を・・・いや、今の立場を奪うかもしれないのだ。
 
 いや、もしかした自分の息子と結ばれ次期皇妃として後宮の実権を握るかもしれない。
 
 最悪は、他の者と結婚し皇帝一家を葬るつもりかもしれない・・・。

 皇妃メッサリーナは娘の罪を暴く訳にはいかなかった。
 侍女を見捨てる事で娘が助かるのなら、その方が良いであろう。

「この一件は侍女の一存である。
 それを踏まえた上で処理なさい。
 龍の姫巫女様に手をかけるなど、断罪に値する。
 愚か者にはそれ相応の罰が必要です。」

 そう言った皇妃メッサリーナにディミトリオ・ハクヤは頭を下げた。

「皇妃様の仰る通りで御座います。
 企てた者は断罪に処されるべきです。」

 ディミトリオ・ハクヤの瞳に怯える皇妃であった。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!

しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。 けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。 そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。 そして王家主催の夜会で事は起こった。 第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。 そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。 しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。 全12話 ご都合主義のゆるゆる設定です。 言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。 登場人物へのざまぁはほぼ無いです。 魔法、スキルの内容については独自設定になっています。 誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。

今さら「間違いだった」? ごめんなさい、私、もう王子妃なんですけど

有賀冬馬
恋愛
「貴族にふさわしくない」そう言って、私を蔑み婚約を破棄した騎士様。 私はただの商人の娘だから、仕方ないと諦めていたのに。 偶然出会った隣国の王子は、私をありのまま愛してくれた。 そして私は、彼の妃に――。 やがて戦争で窮地に陥り、助けを求めてきた騎士様の国。 外交の場に現れた私の姿に、彼は絶句する。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

聖女を怒らせたら・・・

朝山みどり
ファンタジー
ある国が聖樹を浄化して貰うために聖女を召喚した。仕事を終わらせれば帰れるならと聖女は浄化の旅に出た。浄化の旅は辛く、聖樹の浄化も大変だったが聖女は頑張った。聖女のそばでは王子も励ました。やがて二人はお互いに心惹かれるようになったが・・・

処理中です...