溜息だって吐きたくなるわっ!〜100賢人仕込みの龍姫は万年反抗期〜

ぽん

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道端に咲く野菊

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「マムが死んだ・・・?」

 宰相より報告があった皇帝ハイゴール・ウィリは驚愕してベッドから飛び起きた。
 隣で眠っていた愛妾ベルナが眠そうに目を擦りながら起きると、しなだれかかってきた。
 ハイゴール・ウィリは鬱陶しそうに腕を振り払うとベッドから出た。

「何があった?」

 不満そうなベルナも気にする事もなく2人の男が部屋を出てマムの部屋に向かう。

「昼間の事で御座います。
 マム様は龍の姫巫女様の“百合の宮”を訪れました。
 その際に龍の姫巫女様の暗殺を企てられたとか。」

 神妙な顔の宰相フラン侯爵にハイゴール・ウィリは顔を顰めた。

「どういう事だ?
 何の冗談なんだ?」

「その際に龍の姫巫女様より諭され御自身の部屋にお戻りになられたそうで御座います。
 しかし、その後・・・ご自分で喉を切られました。」

「自死したと申すか!?」

 叫んだハイゴール・ウィリを宰相が宥める。

「陛下。
 続きが御座います。
 マム様に龍の姫巫女様の殺害を命令したのはフィルズ伯爵家で間違いないかと・・・。
 マム様はシモツキ・レイ様とご両親を盾に取られ、命令に逆らえなかったと遺書が残されておりました。」

 宰相が差し出す手紙をひったくって奪うと皇帝は目を落とした。

 かつて仕えていたフィルズ伯爵からの要求が日に日に酷くなっている苦悩と、龍の姫巫女を手にかけようとした己を恥いる内容だった。
 娘の行く末を願い罪を償うと・・・。

「なんて愚かな事を・・・。
 何故、私に言わんのだ!」

 ハイゴール・ウィリの手紙を握る手に力が入る。
 寵愛が薄れた後宮の女が何を皇帝に願い出る事が出来るだろう。
 宰相は、思い浮かんだ言葉を飲み込んだ。

 粗々しく扉を開くと、泣き腫らす侍女と顔の表情を固くした兵士がいた。

「マムは?」

 ハイゴール・ウィリが声をかけると、兵士は顔を歪めて頭を下げた。

「あちらに。」

 扉を開けば血の匂いが充満していた。
 ベッド一面に広がる真っ赤な血にハイゴール・ウィリの顔が歪む。

「医師が止血を試みましたが、間に合いませんでした。
 此方が使われたナイフです。
 毒が塗られています。
 フィルズ伯爵家から送られたナイフです。」

 兵士の報告が耳から耳に流れていき頭に残らない。

 ハイゴール・ウィリはベッドに近づくと青白い顔で目を瞑るマムを見下ろした。

「馬鹿な女だ。
 伯爵家如きの言う事を聞くとは・・・。」

 その目は徐々に怒りに染まっていった。

「誰の物を勝手に使役していたのかフィルズ伯爵に教えてやれ。」

 寵愛こそ薄れたがマムは自分の所有物だった。
 他の誰かの道具ではなく、自分の物だったのだ。

 ハイゴール・ウィリは無言で振り返り部屋を出て行こうとした。

「マム様は如何様に?」

 問いかける宰相にハイゴール・ウィリは立ち止まった。

「静かに眠らせてやれ。」

「・・・承知しました。
 姫様・・・シモツキ・レイ様はどうなるのでしょう?」

「マムの娘だな?
 ・・・様子を見る。
 今日は疲れた。」

 部屋を出て行った皇帝陛下を見送ると宰相は兵士にフィルズ伯爵とその家族の捕縛を命じた。
 愛妾マムはその日のうちに埋葬され、後宮に1つ部屋が空いたのだった。
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