溜息だって吐きたくなるわっ!〜100賢人仕込みの龍姫は万年反抗期〜

ぽん

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皇帝が欲しかったもの

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 報告を聞いたリリィは紅茶を流し込んだ。
 しかし、気分の悪い話に胸焼けした食道をスッキリさせるには紅茶では力不足だったようだ。

「それで、ベルナはどうしているの?」

「部屋から出てきません。
 時折、女の啜り泣きと子供の泣き声が聞こえてきます。
 食事は辛うじてとられている様ですが、それにも弱性の毒などの嫌がらせされているので十分とは言えないでしょう。」

 クレイの報告にリリィは部屋に閉じ籠っているベルナを想像した。

「ベルナ様には今までの侍女や侍従に対する横暴な振る舞い。
 散財に加え、皇帝の執務時間を奪っていたと問題視されています。」

 庶民の娘が一夜で皇帝の愛妾になったのだ。
 調子に乗った行動を取った事に対して周りの反発の気持ちは理解する。
 しかし・・・。

「皇帝の執務の時間を奪ったって・・・。
 馬鹿らしい。
 それこそ、皇帝自身の意思でしょうに。
 女1人の為に時間を潰したのは皇帝だわ。
 その全ての負をベルナが背負うなんて不公平ね。」

 リリィの棘のある声にクレイは苦笑した。

「最もなご意見です。
 ですが、これが後宮での負け組の末路です。」

 負け組・・・。

 これ程に寵愛を失った女達に対する侮辱の言葉はないだろう。

 これにより、クレイがベルナに同情していないと分かる。

 それもそのはずだった。

 ベルナは皇帝からの寵愛を背景にクレイの主人であるディミトリオ・ハクヤをも自由に使おうとしていたのだ。
 皇帝が現れない日はディミトリオ・ハクヤをベッドに誘った事も1度や2度ではない。

 ベルナに多少の憐れみを持つディミトリオ・ハクヤほどクレイは大人にはなれずにいた。

「素直な子ね。」

 苦笑するリリィにクレイは鼻を膨らませて頷いた。

「私は気にいりませんが、主人が心配しています。
 寵愛を失った女性が現れると、こうやって後宮は乱れていくのです。
 皇妃様を含め、どの女性達も次はリリィ様だと理解しているでしょう。
 このいざこさにリリィ様が巻き込まれる事は主人の本意ではありません。
 いくら、リリィ様がお強いとはいえ人の傷つけ方など数多あるのです。」

 幼い時分より後宮の荒波を生きてきたクレイにとって、女の嫉妬や執着ほど恐ろしいものはないと思っている。

 それが皇帝への愛なのか、自身の立場なのか人によって違うだろう。
 しかし、問題はこうやって混乱している間に襲ってくる。
 クレイの表情を見つめていたリリィは溜息を吐いた。

「皇帝に会うわ。
 この茶番を早々に終わらせましょう。
 この国には龍気が必要なの。
 あの男が皇帝に収まっている間に宝樹が蘇る事はありえない。
 それなら、早めに捨て去る事が大切でしょう。」

 簡単に言ってくれる。

 クレイはリリィの堂々たる宣言に苦笑するのだった。

 
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