溜息だって吐きたくなるわっ!〜100賢人仕込みの龍姫は万年反抗期〜

ぽん

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義心の先にあるもの

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「フロドゥール国はどうだった?」

 皇帝ファヴィリエ・ルカに尋ねられて、リリィは持っていたナイフを置いて顔を上げた。

 離宮“百合の宮”のキッチンからは美味しそうな香りが漂っていた。

 クツクツと湯気立つ鍋からは真っ白なシチューの姿が窺える。

 1つ1つのポットに注ぐと生地を丁寧に乗せて飾り付けをした。
 表面を溶き卵でコーティングすると熱したオーブンの中に入れていく。

 今日は、パイシチューと呼ぶそれを楽しみに皆が集まってくる。

 秘密の扉を利用して一足先にやってきたファヴィリエ・ルカにリリィは何てない顔で答えた。

「別に特別な感情はないわ。
 あるとすればドラゴニルスの男への嫌悪感ね。
 他国の手前、我慢したけれど、やっぱり無理やりにでも引っ捕まえてくれば良かったかもと思ってるくらいよ。」

 顔を顰めたリリィにファヴィリエ・ルカは苦笑した。

「それで良いよ。
 無理な事をすれば、向こうから無理難題を押し付けられる要因になってしまうじゃないか。
 それでなくとも、龍の姫巫女様が城の側面に作った大穴の補修代は、こちらが出す事になるんだよ?
 普通に扉から出てくる事は出来なかったの?」

 ファヴィリエ・ルカの言葉が至極真っ当と理解しつつもリリィはニッコリと笑った。

「だって、そっちの方がカッコ良いじゃない。」

ブホゥッ!

 庭の池が大きく波立っているのは、寝そべっていた青龍・スイテンがリリィの言葉に吹き出したからだろう。
 耳の良い彼らはリリィのどんな声も聞こえている。

「うちの城は壊さないでよ。
 修理費だって帝国民の国税から出てるんだからね。」

「はーい。」

 可笑しな会話にファヴィリエ・ルカは堪えられずに笑ってしまった。
 一通り笑い終えるとファヴィリエ・ルカはテーブルに置かれたクッキーを数枚取ると1枚を涎が垂れている白銀の龍・ルーチェに渡し、一枚を自分の肩で催促している緑龍・ジンに、続けて目を瞑っていた赤龍・カシャの口に差し込み、もう一枚を庭の池に向かって放り投げた。

 青龍・スイテンが器用にキャッチするのを見届けると自分も一枚食べ始める。

「実際問題。
 やって来るかな。
 フロドゥール国の王様は・・・。」

 呟くファヴィリエ・ルカにリリィは肩を竦めた。

「さぁね。
 一応、煽っておいたけど重い腰を上げるかどうかは分からないわ。
 たしか、あの人って、即位してから一回も国を出た事ないんでしょ?
 引き篭もりにも程があるわよ。」

 それにはファヴィリエ・ルカも困ったように笑った。

「まぁ、ロンサンティエ帝国とは色々あったし、来たって生産性のない話しか出来ない愚かな皇帝に会いに来てもね。
 私はレイド・フロドゥールの気持ちを理解するよ。」

 先代達の所業を許す事のないファヴィリエ・ルカにリリィが肩をするめ「まぁね。」と返事した時だった。

「おーぃ。
 レイド・フロドゥールが来るぞ。」

 と言いながらディミトリオ・ハクヤがリビングダイニングに入ってきたのだった。
 
 
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