溜息だって吐きたくなるわっ!〜100賢人仕込みの龍姫は万年反抗期〜

ぽん

文字の大きさ
359 / 473
英傑の記憶②〜帰還〜

359

しおりを挟む
「それで何があった?」

 皆の驚きで話が途中で止まったのを弟のシンセロ・ニコが促した。
 こんな時の兄のマッタリとした話し方は弟の彼が1番に分かっているのだ。

「えっと、“龍王”様に会ってだな。
 願いは何だと聞かれた。
 その時に村に帰りたいって言えば良かったんだけど・・・。」

 怒られる子供のように大きな体を竦めたフランコ・トワをシンセロ・ニコは我慢強く問いかけた。

「だけど?」

「嵐とかを止める事が先だと思って。
 天災をやめてくださいって頼んだんだ。」

 数日に一回はやってくる嵐や地震が、ピタリとこなくなった事に人々は驚いていた。
 それが、目の前の男の言葉一つの事と知り、驚かずにはいられない。

「皆んなが生きるのが楽になると思ったんだ。
 嵐で海や川が暴れないし、育てた野菜だって実るだろうって・・・。
 まさか、人が人を襲ってるなんて考えもしなかった。」

 人を疑わない・・・それこそがフランコ・トワの良いところであるのだが、田舎者の彼は人の心の底を覗くのが苦手なのだ。

 シュンとするフランコ・トワをガバッとシンセロ・ニコが抱きしめた。

「よく無事で・・・帰って来てくれたな。兄さん。」

「心配かけてゴメン。
 父さんの事も母さんの事も、ラフィネの事も・・・ニコに背負わせてゴメンな。」

「まっ・・・守れなくてゴメン。
 兄さんゴメン・・・守れなかった。」

 兄と弟は静かに涙を流した。
 村の皆もしんみりと涙を目に溜めて兄弟の再会を見守っていた時だった。

「おい。
 涙の再会はもう良いかい?
 だったら、こっちも助けてくれないかい。」

 幾つもある他の牢屋の方から声がした。

 フランコ・トワがシンセロ・ニコに問いかける様に見下ろすと弟はコクンと頷いた。

「此処にいるのは、俺達の村の連中だけじゃない。
 砦の周辺の村々が襲われて、同じような目に遭わされてる。
 俺達は協力して盗賊達に反旗を掲げたが、ご覧の通りに失敗したんだよ。
 今のは山向こうの村のジョルジュさんだ。」

「そうか・・・。
 盗賊達は山向こうまで・・・。」

 フランコ・トワは持っていた鍵を使い、人がいる牢屋を開けて回った。

 此処に来るまでに見張りについていた盗賊達は西の洞穴と同じように牢屋に放り込んだ。
 
 ジョルジュと言われる男は背が高く、体付きもしっかりしていた。

「有難うな。兄ちゃん。
 それで?
 聞こえてきたが、“龍王島”に行ってたって?
 何だ、その夢の話は・・・。
 海の岩礁で頭でも打ったのか?」

 けして馬鹿にしたわけでもない、しかし信じられない事も事実とジョルジュはフランコ・トワを真っ直ぐに見た。
_____

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!

しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。 けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。 そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。 そして王家主催の夜会で事は起こった。 第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。 そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。 しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。 全12話 ご都合主義のゆるゆる設定です。 言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。 登場人物へのざまぁはほぼ無いです。 魔法、スキルの内容については独自設定になっています。 誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

聖女を怒らせたら・・・

朝山みどり
ファンタジー
ある国が聖樹を浄化して貰うために聖女を召喚した。仕事を終わらせれば帰れるならと聖女は浄化の旅に出た。浄化の旅は辛く、聖樹の浄化も大変だったが聖女は頑張った。聖女のそばでは王子も励ました。やがて二人はお互いに心惹かれるようになったが・・・

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

処理中です...