溜息だって吐きたくなるわっ!〜100賢人仕込みの龍姫は万年反抗期〜

ぽん

文字の大きさ
463 / 473
その後のあれこれ

443

しおりを挟む
「ディライト子爵を皇帝陛下の専属侍従に任命した?」

 とある部屋でサイラス・ブランチ辺境伯は雷妖精のシトリンが拾った報告に目を丸くした。
 息子の言葉に片眉をクィッと上げた男がいた。

「ん?それは、あの皇帝の学友とかいう若造か?」

「そうです。父上。
 気弱そうな一面もありますが、一気に3匹の妖精と契約を結ぶという器用さを持っています。
 周囲が突飛な行動をとっても常識的に物事を見る冷静さもありますね。
 皇帝と宰相が信頼する者を近くに置きたいと考えたのでしょう。
 しかし、リチャード殿は数年前にディライト子爵家を受け継いだばかりで、妹御がおられたはずですが、彼は先代子爵に指名された立派な子爵家当主です。
 それが、皇帝の専属侍従など問題ないのでしょうか?」

 息子サイラスの懸念を父ガク・ブランチは鼻で笑った。

「ふん。
 本来、ディライトの先代は元気に存命しているではないか。
 社交よりも土いじりが好きだと領地に引込み、面倒事を息子に押し付けた変わり者だ。
 領地の運営は父親に任せ、いずれ妹の婿をディライト子爵家に引込み裏方をさせれば問題なかろう。
 どうせなら、我が家から出してやれ。
 ブランチなら、姫様に悪意ある者はおらん。
 姫様の夫の側にいることになる男だ。
 姫様に憂いがあってはならん。」

 あくまでリリィ贔屓の父の言葉に反感を持つでもなく、サイラスは当たり前のように頷いた。

「分かりました。
 横槍が入る前に早速、打診しておきましょう。
 父上の方はどうですか?」

 ガク・ブランチ元辺境伯は、今や帝都の冒険者をまとめるギルドマスターだ。

 若い頃から辺境の地を守るだけあって、剣術だけでなく策略家としても能力を発揮していた。

 荒くれ者が多い冒険者を一手に支配下に置いた手腕は衰えていない。

「ギルド運営なら問題ない。
 ただな。
 妖精だ云々が広まる以前から魔法を使えていた者達の一部が腐っておる。
 素直な若い冒険者が次々と妖精と契約し力を付け始めたからな。
 それまでの常識に縛られている者は時代に遅れていくのだ。」

 魔法を使える事が特権であったはずが、当たり前となり、自分達の能力は妖精の気まぐれに過ぎなかったと突き付けられたのだ。

 それまでの彼等のどこに妖精が興味を持っていたのかは分からない。
 しかし、確実に契約した者達と自分との違いを感じているのだろう。
 そこで、帝国が推奨する方法で妖精と絆を結ぶ努力をすれば良いものを、これまでのプライドが邪魔をして他者の考えを排除し、凝り固まった考えを捨てられない者もいるのだ。

 当のガク・ブランチなどは妖精に好かれ光の玉に纏わりつかれるが、頑なに契約をしようとしなかった。

「老先短い老人と契約を結ぶなど、残されていく妖精が可哀想ではないか。」

 そう言ったガク翁の顔は策略家の顔など成りを顰め、好々爺の如く光の玉を愛でていたのだった。
 

「こっちは、こっちで気長に対処していくしかあるまい。
 それで?ウチの孫②はどうしてる?」

 愛も変わらず鋭い目で問いかけられたサイラスは苦笑した。

「勿論。
 アリスと共にリリィ様のお側に。」

「フンッ。
 アヤツも太々しくなったものだ。
 無茶を振っても反論してくるようになりおった。」

「・・・父上、あの子に無茶を言っていたと自覚あったのですね。」

 流石のサイラスも甥を気の毒に思った。
 
「分からいでか。
 あれは、やり通す男と知っているからこその無茶だ。
 全く、どいつもこいつも分かっておらんな。
 シトリンや。
 わしの生意気な孫②にチト電流でも流せんものかの?」

「私のシトリンに変な事を頼むのやめて下さい。」

 ブランチ辺境伯家の親子の攻防は、宴が始まるまで続いたのだった。
 
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!

しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。 けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。 そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。 そして王家主催の夜会で事は起こった。 第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。 そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。 しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。 全12話 ご都合主義のゆるゆる設定です。 言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。 登場人物へのざまぁはほぼ無いです。 魔法、スキルの内容については独自設定になっています。 誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

聖女を怒らせたら・・・

朝山みどり
ファンタジー
ある国が聖樹を浄化して貰うために聖女を召喚した。仕事を終わらせれば帰れるならと聖女は浄化の旅に出た。浄化の旅は辛く、聖樹の浄化も大変だったが聖女は頑張った。聖女のそばでは王子も励ました。やがて二人はお互いに心惹かれるようになったが・・・

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

処理中です...