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その後のあれこれ
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「ディライト子爵を皇帝陛下の専属侍従に任命した?」
とある部屋でサイラス・ブランチ辺境伯は雷妖精のシトリンが拾った報告に目を丸くした。
息子の言葉に片眉をクィッと上げた男がいた。
「ん?それは、あの皇帝の学友とかいう若造か?」
「そうです。父上。
気弱そうな一面もありますが、一気に3匹の妖精と契約を結ぶという器用さを持っています。
周囲が突飛な行動をとっても常識的に物事を見る冷静さもありますね。
皇帝と宰相が信頼する者を近くに置きたいと考えたのでしょう。
しかし、リチャード殿は数年前にディライト子爵家を受け継いだばかりで、妹御がおられたはずですが、彼は先代子爵に指名された立派な子爵家当主です。
それが、皇帝の専属侍従など問題ないのでしょうか?」
息子サイラスの懸念を父ガク・ブランチは鼻で笑った。
「ふん。
本来、ディライトの先代は元気に存命しているではないか。
社交よりも土いじりが好きだと領地に引込み、面倒事を息子に押し付けた変わり者だ。
領地の運営は父親に任せ、いずれ妹の婿をディライト子爵家に引込み裏方をさせれば問題なかろう。
どうせなら、我が家から出してやれ。
ブランチなら、姫様に悪意ある者はおらん。
姫様の夫の側にいることになる男だ。
姫様に憂いがあってはならん。」
あくまでリリィ贔屓の父の言葉に反感を持つでもなく、サイラスは当たり前のように頷いた。
「分かりました。
横槍が入る前に早速、打診しておきましょう。
父上の方はどうですか?」
ガク・ブランチ元辺境伯は、今や帝都の冒険者をまとめるギルドマスターだ。
若い頃から辺境の地を守るだけあって、剣術だけでなく策略家としても能力を発揮していた。
荒くれ者が多い冒険者を一手に支配下に置いた手腕は衰えていない。
「ギルド運営なら問題ない。
ただな。
妖精だ云々が広まる以前から魔法を使えていた者達の一部が腐っておる。
素直な若い冒険者が次々と妖精と契約し力を付け始めたからな。
それまでの常識に縛られている者は時代に遅れていくのだ。」
魔法を使える事が特権であったはずが、当たり前となり、自分達の能力は妖精の気まぐれに過ぎなかったと突き付けられたのだ。
それまでの彼等のどこに妖精が興味を持っていたのかは分からない。
しかし、確実に契約した者達と自分との違いを感じているのだろう。
そこで、帝国が推奨する方法で妖精と絆を結ぶ努力をすれば良いものを、これまでのプライドが邪魔をして他者の考えを排除し、凝り固まった考えを捨てられない者もいるのだ。
当のガク・ブランチなどは妖精に好かれ光の玉に纏わりつかれるが、頑なに契約をしようとしなかった。
「老先短い老人と契約を結ぶなど、残されていく妖精が可哀想ではないか。」
そう言ったガク翁の顔は策略家の顔など成りを顰め、好々爺の如く光の玉を愛でていたのだった。
「こっちは、こっちで気長に対処していくしかあるまい。
それで?ウチの孫②はどうしてる?」
愛も変わらず鋭い目で問いかけられたサイラスは苦笑した。
「勿論。
アリスと共にリリィ様のお側に。」
「フンッ。
アヤツも太々しくなったものだ。
無茶を振っても反論してくるようになりおった。」
「・・・父上、あの子に無茶を言っていたと自覚あったのですね。」
流石のサイラスも甥を気の毒に思った。
「分からいでか。
あれは、やり通す男と知っているからこその無茶だ。
全く、どいつもこいつも分かっておらんな。
シトリンや。
わしの生意気な孫②にチト電流でも流せんものかの?」
「私のシトリンに変な事を頼むのやめて下さい。」
ブランチ辺境伯家の親子の攻防は、宴が始まるまで続いたのだった。
とある部屋でサイラス・ブランチ辺境伯は雷妖精のシトリンが拾った報告に目を丸くした。
息子の言葉に片眉をクィッと上げた男がいた。
「ん?それは、あの皇帝の学友とかいう若造か?」
「そうです。父上。
気弱そうな一面もありますが、一気に3匹の妖精と契約を結ぶという器用さを持っています。
周囲が突飛な行動をとっても常識的に物事を見る冷静さもありますね。
皇帝と宰相が信頼する者を近くに置きたいと考えたのでしょう。
しかし、リチャード殿は数年前にディライト子爵家を受け継いだばかりで、妹御がおられたはずですが、彼は先代子爵に指名された立派な子爵家当主です。
それが、皇帝の専属侍従など問題ないのでしょうか?」
息子サイラスの懸念を父ガク・ブランチは鼻で笑った。
「ふん。
本来、ディライトの先代は元気に存命しているではないか。
社交よりも土いじりが好きだと領地に引込み、面倒事を息子に押し付けた変わり者だ。
領地の運営は父親に任せ、いずれ妹の婿をディライト子爵家に引込み裏方をさせれば問題なかろう。
どうせなら、我が家から出してやれ。
ブランチなら、姫様に悪意ある者はおらん。
姫様の夫の側にいることになる男だ。
姫様に憂いがあってはならん。」
あくまでリリィ贔屓の父の言葉に反感を持つでもなく、サイラスは当たり前のように頷いた。
「分かりました。
横槍が入る前に早速、打診しておきましょう。
父上の方はどうですか?」
ガク・ブランチ元辺境伯は、今や帝都の冒険者をまとめるギルドマスターだ。
若い頃から辺境の地を守るだけあって、剣術だけでなく策略家としても能力を発揮していた。
荒くれ者が多い冒険者を一手に支配下に置いた手腕は衰えていない。
「ギルド運営なら問題ない。
ただな。
妖精だ云々が広まる以前から魔法を使えていた者達の一部が腐っておる。
素直な若い冒険者が次々と妖精と契約し力を付け始めたからな。
それまでの常識に縛られている者は時代に遅れていくのだ。」
魔法を使える事が特権であったはずが、当たり前となり、自分達の能力は妖精の気まぐれに過ぎなかったと突き付けられたのだ。
それまでの彼等のどこに妖精が興味を持っていたのかは分からない。
しかし、確実に契約した者達と自分との違いを感じているのだろう。
そこで、帝国が推奨する方法で妖精と絆を結ぶ努力をすれば良いものを、これまでのプライドが邪魔をして他者の考えを排除し、凝り固まった考えを捨てられない者もいるのだ。
当のガク・ブランチなどは妖精に好かれ光の玉に纏わりつかれるが、頑なに契約をしようとしなかった。
「老先短い老人と契約を結ぶなど、残されていく妖精が可哀想ではないか。」
そう言ったガク翁の顔は策略家の顔など成りを顰め、好々爺の如く光の玉を愛でていたのだった。
「こっちは、こっちで気長に対処していくしかあるまい。
それで?ウチの孫②はどうしてる?」
愛も変わらず鋭い目で問いかけられたサイラスは苦笑した。
「勿論。
アリスと共にリリィ様のお側に。」
「フンッ。
アヤツも太々しくなったものだ。
無茶を振っても反論してくるようになりおった。」
「・・・父上、あの子に無茶を言っていたと自覚あったのですね。」
流石のサイラスも甥を気の毒に思った。
「分からいでか。
あれは、やり通す男と知っているからこその無茶だ。
全く、どいつもこいつも分かっておらんな。
シトリンや。
わしの生意気な孫②にチト電流でも流せんものかの?」
「私のシトリンに変な事を頼むのやめて下さい。」
ブランチ辺境伯家の親子の攻防は、宴が始まるまで続いたのだった。
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