決められたレールは走りません

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アルトとフィアーノ

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「おかえりなさいませ。」

「ただいま。父上は?」

「先ほどお戻りになられた所です。執務室の方におられるかと。」


「分かった。ありがと。」


カリニャンから戻ってすぐのリュカはそのまままっすぐ父アルトの元へと向かった。




コンコン。

「はい。…あぁリュカか。カリニャンはどうだった?」

「…良いところだと思うよ。シャルがすごく活き活きしてた。」

「だろうな。接客がだいぶいたについてたからな。楽しんでそうだな。」

ハハハッと笑いながら話すアルト。娘が楽しく過ごしいる様子が聞けて満足なようだ。

「変装はバレなかったか?」

指輪を返してきたリュカに問う。

「驚かそうと思ったのに、店長さんにバラされたよ。指輪外す前に言われたもんね。」

悔しそうに話すリュカを見てアルトは笑う。

「フィアーノは私の変装で慣れてるからな。あいつはどんなに忙しくても目ざとく指輪見つけるよ。」


(機嫌も良さそうだし、聞くなら今だな。)

「ね、フィアーノさんってなにもの?父上とも知り合いで、王宮にも出入りしてるって…只者じゃないでしょ?」

「…んー。」

話すのを躊躇っている様子の父に念を押す。

「店長さんにも直接聞いたんだ。上手く話せそうにないからアルト様に聞いてみてって。…気になって仕方ないよ。シャルの隠れ場所にカリニャン選んだのも偶然じゃないんでしょ?」

「…まぁ、あの街は私も住んでたからね。治安の良さはもちろん、街の中もある程度分かって安心でね。…フィアーノは今でこそ平民だけど、本来は王族なんだよ。前国王の弟の息子でね。国王の従兄弟になるのかな。」

「えっ?そんな…知らない。今の国王は争いなく唯一の後継者だったんじゃ?」

「…前国王の弟は貴族たちに担ぎ出されててな…謀反を企ててたんだ。モルトが引き継ぐまでに粛正を進めて、王家でこっそり片付けられたからあまり知られてない。息子のフィアーノの存在も隠されたんだ。本人も幼い頃からカリニャンにいたから、多分王都は苦手だろうよ。」

「粛正って…フィアーノさんは誰とカリニャンに?」

「当時の乳母とだな…半年後には亡くなったから、そこからは街の人と。…寂しかったと思うよ。」

「…なんか、壮絶だな…国王はフィアーノさんのこと知ってんの?」

「知らないと思う。父親の弟がいたことは知ってるだろうけど、フィアーノのことは徹底的に隠されてたからな。モルトに王位を譲る時に1度だけ王宮に呼ばれて、そこで話をしたのが最初で最後だろうな。」

「なんで父上は知ってんの?」

「モンティ家を継ぐ前の数年、フィアーノの様子を見てたんだよ。一応父親の二の舞にならないように見張り役って形だったんだけど、途中からはもう、弟みたいな感じだったな。街の人たちと一緒になって成長を見守る感じで。」

「だからお世話になったって言ってたのな…なるほど。苦労してんだな…。シャルに会ったのはその時か。」


思ってたよりも重い過去に、リュカは内心驚いていた。


「ん?会ったって?」

「フィアーノさんが言ってたんだ。王宮で幼いシャルが頑張ってるの見て感心したって。」

(シャルのこと知ってたのか…驚いた。これも何かの縁かな。)


カリニャンの街を選んで良かったと改めて安心したアルトだった。



「さ、私たちも対策しないとな。王家に捕まる訳にはいかないから。」

「そりゃもちろん。俺はやっぱり王子許せないからね。シャルにはこのまま楽しんでもらいたいし。」

 あーでもない、こーでもないと、2人の作戦会議はそのまま深夜まで続くのだった。
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