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アルトとモルト
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スーッ。
国王モルトが机に向かって執務をこなしていると、目の前に1通の手紙が差し出された。
「急ぎか?」
目の前の男、宰相リディスに怪訝な顔で問う。いつもなら空気を読んで執務を優先させるのに…
「差出人を見てから言って下さい。貴方が待ちに待っていたお相手からですよ。」
どことなく得意そうに話すリディスの顔に、モルトも期待して封筒を裏返す。
《モンティ・アルト》
(アルトからだっ!)
待ちきれない様子で封を開け、中を確認する。
「リディス、明日の午前中を空けろ!謁見の準備だ。」
「はいはい。そう言うと思いましたょ。アルトに会いたいですもんね。」
「ん?アルトが用があると言ってるんだ。国王として話は聞かねばな。」
(強がって…会いたかったんだろう?大切な友人に。)
リディスは知っている。ツンデレなアルトが大好きな国王モルトも、頼りない国王が放って置けない心優しいモンティ伯爵も、どちらも素直には認めないが、お互い大事に思っている。自分はその両方とも親友なのだから。
「元気そうで何よりだ。」
謁見の間には国王モルト、宰相リディス、モンティ伯爵家当主アルトの3人がいる。勝手知ったる相手なので、最初の挨拶以降は皆ゆるくなる。
「リディス、これを。」
アルトは同じ伯爵家であるムートン家当主カルロから回して貰ったリストを渡す。当初の内容に、自家で集めた情報をさらに補足したものだ。
「モルト。そろそろ、挽回しないと足元を掬われるぞ?王家主催の夜会、次はいつだ?」
「来月の頭にはバルドの誕生日がある。どの規模になるかは分からぬが、今皇后たちが準備を進めている所だ。」
「ちょうど1年経ったか…ならば私は、その夜会に伯爵家当主として参加しよう。」
「お前の娘は…?」
「さあ…?君の息子の頑張り次第ではないか?連れて帰るまではして貰わないと。」
ニヤッと笑うアルトは憎たらしい表情でモルトを見やる。
(バルドの報告も聞かねばだな…シャルノア嬢との和解は出来たのか…社交界に戻ってきても、バルドの横に並ぶまではいっていない。息子よ。アルトを納得させねば、彼女との未来も王太子としての未来も遠いぞ…。)
この場にいない息子に対し、エールを送り続けるモルトであった。
謁見の場を離れた後、アルトはリディスに見送られながら話をする。
「リストは確認した。大半はこちらでも把握している。バルド様のやらかしで動き出したオーロ男爵が中心だろう?」
「新興貴族たちは日和見主義だからな、あまり期待はしていないがまあ許容範囲内ではある。ただ、数人気になる動きの者もいてね…裏でもっと上の人間が動いてそうな気がするんだ。」
「…違う伯爵家?いゃ、お前がいる間は問題ないな。侯爵家辺りか?」
「まだ分からん。次の夜会でそれを確認したいんだ。王家主催じゃないとはっきりした動きが見えてこないからな。」
「なるほど。それでモルトの背を押しに来たのか…シャルノア嬢はどうなんだ?徐々に表には出てきたんだろう?」
「ああ。最近は良い表情に戻りつつある。後は王家主催のものなんだが…本人の気持ちが伴わないとな。無理矢理には連れて出たくないんだ。」
「それが親心だよね。本当にあの時のバルド様には困ったものだよ。王宮内全て敵に回したようなものなのに、全く省みず、我が道を進めるんだからね。」
「…そこは、男親に似たのかもな。モルトも大概だろ。」
「確かに。」
クシュンッ。
執務室に戻っていたモルトは大きくくしゃみをした。
(誰かが噂しているな…まったく。)
回れ右をしたモルトは、そのまま奥の離宮へ向かう。
(息子の話も聞かなければ。そろそろ結果は出して貰わねば困る。)
スタスタと歩みが早まるモルトであった。
国王モルトが机に向かって執務をこなしていると、目の前に1通の手紙が差し出された。
「急ぎか?」
目の前の男、宰相リディスに怪訝な顔で問う。いつもなら空気を読んで執務を優先させるのに…
「差出人を見てから言って下さい。貴方が待ちに待っていたお相手からですよ。」
どことなく得意そうに話すリディスの顔に、モルトも期待して封筒を裏返す。
《モンティ・アルト》
(アルトからだっ!)
待ちきれない様子で封を開け、中を確認する。
「リディス、明日の午前中を空けろ!謁見の準備だ。」
「はいはい。そう言うと思いましたょ。アルトに会いたいですもんね。」
「ん?アルトが用があると言ってるんだ。国王として話は聞かねばな。」
(強がって…会いたかったんだろう?大切な友人に。)
リディスは知っている。ツンデレなアルトが大好きな国王モルトも、頼りない国王が放って置けない心優しいモンティ伯爵も、どちらも素直には認めないが、お互い大事に思っている。自分はその両方とも親友なのだから。
「元気そうで何よりだ。」
謁見の間には国王モルト、宰相リディス、モンティ伯爵家当主アルトの3人がいる。勝手知ったる相手なので、最初の挨拶以降は皆ゆるくなる。
「リディス、これを。」
アルトは同じ伯爵家であるムートン家当主カルロから回して貰ったリストを渡す。当初の内容に、自家で集めた情報をさらに補足したものだ。
「モルト。そろそろ、挽回しないと足元を掬われるぞ?王家主催の夜会、次はいつだ?」
「来月の頭にはバルドの誕生日がある。どの規模になるかは分からぬが、今皇后たちが準備を進めている所だ。」
「ちょうど1年経ったか…ならば私は、その夜会に伯爵家当主として参加しよう。」
「お前の娘は…?」
「さあ…?君の息子の頑張り次第ではないか?連れて帰るまではして貰わないと。」
ニヤッと笑うアルトは憎たらしい表情でモルトを見やる。
(バルドの報告も聞かねばだな…シャルノア嬢との和解は出来たのか…社交界に戻ってきても、バルドの横に並ぶまではいっていない。息子よ。アルトを納得させねば、彼女との未来も王太子としての未来も遠いぞ…。)
この場にいない息子に対し、エールを送り続けるモルトであった。
謁見の場を離れた後、アルトはリディスに見送られながら話をする。
「リストは確認した。大半はこちらでも把握している。バルド様のやらかしで動き出したオーロ男爵が中心だろう?」
「新興貴族たちは日和見主義だからな、あまり期待はしていないがまあ許容範囲内ではある。ただ、数人気になる動きの者もいてね…裏でもっと上の人間が動いてそうな気がするんだ。」
「…違う伯爵家?いゃ、お前がいる間は問題ないな。侯爵家辺りか?」
「まだ分からん。次の夜会でそれを確認したいんだ。王家主催じゃないとはっきりした動きが見えてこないからな。」
「なるほど。それでモルトの背を押しに来たのか…シャルノア嬢はどうなんだ?徐々に表には出てきたんだろう?」
「ああ。最近は良い表情に戻りつつある。後は王家主催のものなんだが…本人の気持ちが伴わないとな。無理矢理には連れて出たくないんだ。」
「それが親心だよね。本当にあの時のバルド様には困ったものだよ。王宮内全て敵に回したようなものなのに、全く省みず、我が道を進めるんだからね。」
「…そこは、男親に似たのかもな。モルトも大概だろ。」
「確かに。」
クシュンッ。
執務室に戻っていたモルトは大きくくしゃみをした。
(誰かが噂しているな…まったく。)
回れ右をしたモルトは、そのまま奥の離宮へ向かう。
(息子の話も聞かなければ。そろそろ結果は出して貰わねば困る。)
スタスタと歩みが早まるモルトであった。
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