決められたレールは走りません

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お祝いの席で

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「なぁ、あきらかに俺ら場違いじゃね?」

「…仕方ないですよ。あの状況で断れる人間がいるのなら教えて欲しいです。」

「まあ、そうだな…今からでも、帰るか?」

「ここまで来て何言ってるんですか⁈無理に決まってるでしょ。」

神殿から王家の馬車に乗り、連れられるまま王宮へと辿り着いてしまった2人。引き返すことなど不可能で、案内のメイドの後ろでヒソヒソと会話していた。
 
 大きな扉が開けられ、辿り着いた部屋はダンスホールのように広々としており、長机の上には料理が既に並び始めていた。

「フィアーノ、よく逃げずに来たな。ハハッ。まあせっかく来たんだ、ゆっくりしていくといい。」

「王宮でそんな寛げないですよ。あいつら、何か企んでたりしません?」

「それはどうだろ?まあ、2人は仲人なんだから、十分参加資格あるでしょ。」

先に着いていたモンティ家の父兄は腰を落ち着けくつろいでいた。フィアーノは2人に会うのは久しぶりだが、緊張だらけの王族との会話に比べたら気安く話しやすい。

「身内だけの席と聞いていますが、あと他に誰が来られる予定でしょう?アルト様、ご存知ですか?」

ヴァンの問いに、アルトは笑いながら答える。

「ほんとに身内だけだよ?両家親族のみ!モンティ家からは以上。あとは、王家のみなさま。」


(それ、王家の食卓にこの4人で混ざると…)

この後揃うだろう顔ぶれを想像して、2人は項垂れる。

「いゃいゃいや。お2人は慣れてるかもしれないけど、俺たちには敷居が高過ぎるって。粗相するかも…」

焦り出すフィアーノの横で、ヴァンも青ざめた表情になっている。

「ん?私たちもこの場が初めてだよ?なに、気にせずとも大丈夫。ま、横に座んなさいな。」

アルトに言われるがままになっていると、扉から人が入ってくる。アルトに向かってきた人物は宰相リディスであった。

「モンティ家のお2人。この度はおめでとう。やっとこの日が迎えられて、私も安心で泣けてきそうです。」

「やっとだな。これでしばらくはお主も肩の荷が下りるだろ。良かったな。」

肩を叩いて喜び合う様子から、アルトの友人だろうか、と考えていたフィアーノは、リュカから宰相だと聞かされ慌てて挨拶をする。

「リディス、彼らが今回の主役たちをとりもった仲人たちだ。こっちが店長フィアーノ。こっちがヴァンだ。彼はこの国の宰相で1番の苦労人、リディスだ。私の学院での友人だ。」

「はじめまして。お2人にはどうしてもお礼が伝えたかったんです。いろいろと拗れてしまった彼らを、しかるべき所に、関係に、納めて頂き感謝しております。」

(すごい言いようだな…きっと相当苦労したんだろうな。)

優しそうな表情の下にはきっと今までの苦労が隠れているんたろうな、と想像出来てしまった。

「いえ、私たちはブランシェでシャルノア嬢を見守っていただけですので。」

差し出された手で握手を交わしながらフィアーノは答えた。

「私からすればお2人は救世主ですよ。あのままでしたら、きっと王家の評判はガタ落ちでしたから。」

(この人、結構ズバズバ話すな…)

「そうだな。あのままだとリディスは昼夜問わず、仕事に忙殺されただろうな。」

「本当に。アルトが王宮に来てくれるだけでどれだけ楽になったか。」

アルト様、えらく気安いなぁと思っていたら、側にいたリュカが耳打ちしてきた。

「うちの父とリディス様は学生時代からの仲良しで、そこには国王陛下も混ざってんの。」

(はぁ⁈アルト様って何者⁈実は相当な立場?)

 自分の知っている人が違う人物に見えてくる。驚いて瞬きしていると、話していた2人がこちらを見ていた。

「国王がこの場で何か無茶を言ってきたら、すぐこの人に伝えて下さい。きっと助けてくれますから。」

では、私はこの辺で。と去っていくリディスを見ながらフィアーノは推測する。

(実はアルト様が1番の権力者⁈)



 宰相リディスとすれ違うように、再び扉が開き、国王と皇后、王女たち。そしてその後ろには主役の2人がやってきていた。それぞれ着席し、グラスに飲み物が注がれたタイミングで国王モルトが話し出す。

「む、それでは揃ったかの。本日新しく誕生した皇太子夫婦の前途を祝して、乾杯。」

「「「「「乾杯」」」」」




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