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第1章 王都編

第10話 みんな気付いてた

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 家族会議は進み、決定したことがある。
 
 まずは、レオナルド王子の婚約者候補を辞退すること。私の魔力制御訓練を早急に始めること。そして、学園には通わないことだ。
 
「アリア、本当にいいのかい?」
「学園に通えば、お友達ができるわよ?」
 
 でも、お父様とお母様は学園に通わないという選択を迷っているみたい。
 
「お友達なら、領地でもできるもの。大丈夫です」
「そうだけど、貴族の友達がいないと社交界で寂しい思いをするかもしれないわよ。高等部からだと既に派閥もできてるでしょうし……」
 
 お母様は学園に通ったのが高等部からだったから、自分と同じ苦労をさせたくないみたい。だけど、何よりも重要なのって婚約者候補を辞退することだ。
 それに婚約者候補を辞退したら、別の攻略対象者の候補にならないように気を付けなくちゃいけないし。会わないで済むのなら、それに越したことはない。
 
「大丈夫ですよ。高等部で貴族のお友達も作りますから。派閥ができている方がかえって見極めやすくていいかもしれませんし」
「アリアちゃんがそう言うのならいいけれど。いつでも学園には通えるから、気持ちが変わったら言ってね」
 
 そんなに心配しなくても大丈夫なんだけどな。結構、敵意って分かる方だし。(前世の)友達には野生の勘だ! なんて言われたくらいには勘が働くんだよね。
 
 何より、高等部からって貴族の子供も多いらしいから大丈夫だと思う。国で決められているのは、高等部からの学園入学のみで初等部と中等部は任意で行く必要はない。
 将来のパイプのために幼い頃から親が通わせるだけ。うちは子どものためを思ってくれているけど、家や親自身のためって家門も多いだろう。家庭教師で勉学は足りるからね。
 
「お母様、そんなに心配しないでください。お父様、絶対に婚約者候補になりたくない方々が他に何人かいるので、その家から打診があったら断ってくれますか?」
 
 念には念を入れなくては……、と頼んだことで上手く説明ができなくなり結局ゲームの内容をノアが攻略対象だと言うことを除いて、洗いざらい話さなくてはならなくなってしまった。私は多分アホの子なんだろう。
 
 気分が悪くなるだろうから、乙女ゲームの世界だってことは隠したけどね。
 
 
「ぼく、その子イヤだなぁ。一人だけ何でもうまくいくお話の主人公みたいでさ」
 
 ノアの言葉に心臓がドキリと跳ねた。まとを得すぎである。
 伝えてはいないけど、ノアの恋のお相手かもしれないのにお気に召さないらしい。まぁ、自分の命がかかっているなら当たり前か。
 
 ノアが不満げに唇を尖らせていると、お父様が真剣な眼差しを私へ向けた。
 
  
「その子爵家の令嬢が誰に恋に落ちるかで運命は変わるってことであっているかい?」
「はい。なので、可能性のあるお家とはあまり関わりたくないんです。もしも、ってこともありますから」
 
 お父様は難しい顔で攻略対象者となる家名を確認するように口にしていく。
 
「アリアの婚約者候補が伯爵家より下の家格になるか、他国に嫁ぐしかなくなるけどいいのかい? ほら、お妃様に憧れてただろ? お妃様になるには他国に嫁ぐことになるじゃないか。そうしたら、なかなか会えなくなるから俺としては国内に居て欲しいのだが」
「ぼくもアリアちゃんが遠くに行っちゃうなんてイヤだよ!」
 
 あぁ、そうか。この世界は結婚が当たり前なのか。いい出会いがなければ、独身でもいいやー! って思っていたけど、そうはいかないのか。……本当にダメなのかな。
 
「他国に嫁ぐつもりはないですよ。それに、もし素敵な出会いがなければ結婚はしなくてもいいかなぁ……なんて」
「「それがいい(よ)!」」
 
 お父様とノアがすごく嬉しそうな顔をした。
 
 あれ? お嫁に行かなくても良い系なの? それなら気が楽だけど。まぁ、行っても行かなくても──。
 
「どちらにしても、家は出ていくので安心してください」
「「ずっといればいい(よ)!!」」
 
 仲良いな。でも、ずっと実家のすねをかじって生きていくつもりはないのだよ。私にも野望はあるわけだし。どう言おうか悩んでいれば、お母様が助け船を出してくれた。
 
「アリアちゃんの人生だもの、応援してあげないとダメよ」
 
 流石、お母様である。けど、貴族なのにそんなに自由でいいのだろうか。
 
「アリアちゃんは気にしなくていいのよ。子どもの幸せが私たちの幸せだもの。新しい人生を楽しまないとね」
「…………へっ?」
 
 今、新しい人生って言った? 私、前世のことはゲームのことしか言ってないのに。どうして?
 
「だって、アリアちゃんは記憶持ちでしょう?」
「最近は言わなくなったから前の記憶が薄れたと思っていたが、違かったんだな。いや、魔力が解放された時に思い出したのか。話し方が急に変わったし大人びたもんなぁ」
 
 当たり前のように話すお父様とお母様に思考が追いつかない。
 
「気が付いていた……の?」
 
「まぁ、気がつくよな」
「そうね。娘の変化くらい気がつくわよね」 
 
 自分の知らないうちに受け入れられていたことに、心が震えた。
 
「アリアちゃんは、アリアちゃんだよ。ずっと優しい、大好きなお姉さまだもん」
「ノアっっ!!」
 
 ミモルとメモル、セバスも、うんうんと頷いてくれている。私はすごく幸せ者だ。
 
「ありがとう……」
 
 言葉が詰まって、それ以上何も言えなかった。
 
 
 
 
 
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