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第2章 領地編1~新たな出会い~

第6話 くっそーーーーっっ!!!!

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 次の日。雲1つない快晴だ。まさに、お出かけ日和である。
 昨日泣きすぎて腫れてしまった目は、魔術で自然治癒力をあげることで治す。

 鏡に向かって笑顔を作れば、いつもの私が笑っている。
 うん、大丈夫。もう泣かない。


 結局、その日には返しにいかなかった鍋とスープボウル、スプーンを持って調理場までやって来た。

「コックラ、返しに来なくてごめんね」
「何言ってるんスカ。お嬢は返しに来てくれてるじゃないっスカ。ちゃんと鍋を水に浸けとくのも流石ッス。
 ……お米、取り引きできるといいッスね。もし、定期で仕入れられるようになったら炊き方教えてくださいッス」
「……なんで分かったの?」
「そりゃ、普段からお嬢は米米言ってるッスからね。きっと動物のエサとしてじゃなく、人が食べるものとして買いたいんだろうなぁ……ってお嬢のことを知る人なら皆が思うッスよ」

 そうなのだろうか。確かにここ5年はいつもお米を探してた。エサとして仕入れた方が安く手にはいるだろう。
 それでも、エサではなく人が食べるものとして買いたいと分かってくれるのって、私という人間を見ていてくれたからだ。
 それって、当たり前のようで、決して当たり前なんかじゃない。

「ありがとう」
「何がッスカ? そうそう、お米もまぁまぁおいしかったッスよ」
「えっ? まぁまぁ?」
「まぁまぁッスね。なんかちょっとパサパサしてたッス。調理方法によっては、もう少しおいしいかもなんで研究が必要ッスカね」
「研究……」

 確かに玄米は米粒が硬くてパサパサしている。においもちょっと独特だ。料理人としての素直な感想なのだろう。
 だけど……だけどさ、私が昨日あんなに恋しくて泣いた玄米ちゃんをそこまで言う必要ってある? なんか、すんごい悔しいんだけど。

「お米はね、昨日の他にも白米というものがあるんだから。白米はパサパサしないし、独特のにおいもない。玄米とはまた違ったおいしさの、コックラの言う気になる点をぜーんぶ解決してくれているんだからね!」

 ビシィッ! っとコックラを指差して言えば、「はぁ……」と気の抜けた声が返ってきた。
 くっっっっそーーーー!! 絶対に、ぜーったいにギャフンって言わせてやるんだから!!


 コックラが用意してくれたサンドイッチと水筒にお礼を言いながら受け取り、私は鼻息荒く家を出た。
 お母様には夕方までには帰るって伝えたので、それまでにはせめてフォクス領の様子を偵察しないとね。そうしないと、お母様、ノア、ミモルから雷が落ちる。そして、1ヶ月の一人歩き禁止令が発動するのだ。
 あんな窮屈きゅうくうな毎日はもう懲り懲りこ ご 

 少しでも早く着くために、全速力で駆け出した。馬車よりも自動車よりも、今の私は速く走れる。たぶん、新幹線並みだろう。

 まずは、山を1つ越え、谷をフィーエルヤッペン棒幅跳びの要領で飛び越える。すると、急に魔物が増えた。

 さっきまではウサギのような可愛い姿のものや、草食で大人しい魔物ばかりだった。それなのに、今度は額に10個は目があるだろう狼や、毛先が尖っていて麻痺毒を持っている巨大イノシシ、真っ赤なプテラノドン……、次から次へと湧いて出てくる。

「うりゃあっ」

 毒を持っていない魔物は硬質化した拳でねじ伏せ、毒のある魔物には小石を投げつける。投げた小石は魔物を貫通するスピードが出ているので、上手く急所を狙えば一発だ。
 そんな私を見たレッドプテラは逃げていった。

 魔物が次々と出てくることに面倒になった私は、両ポケットに小石を拾って入れながら移動する。そして投げる。ひたすら投げる。

 こんなに魔物が多いんじゃ、フォクス領と取引できるようになったとしてもこの山は避けて通らないとかな。
 なんて思いながらも石を投げる手は止まらない。

 あまりにも出てくるものだから、ダッシュすれば魔物とぶつかって事故になるだろう。走るスピードを抑えなければならないこともまた厄介だった。

 やっと、山を4つ、谷と河を1つずつ越えれば、また谷が出てきた。またもやフィーエルヤッペンの要領で反対側の崖に飛び移る。
 すると、そこは異様なほど静かだった。









 
 
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