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第2章 領地編1~新たな出会い~

第41話 脳内に焼き付けよう

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「求愛ってどうやって断ればいいのぉ!」
 
 半泣きである。魔物に求愛されたとか、どうなってるんだ。うっかり受けてしまったら大変なことは間違いない。
 
「待ってて! セバスに聞くから!! 絶対に動かないでね。何か反応したらダメだからね!」
 
 かなり念を押されてしまった。頼りない姉ですまない。ノアも焦ってるんだろうな。早口だったし……。

 もしかしたら、魔物から求愛ダンスをされた人間は私が史上2番目かもしれない。因みに1番目は私のご先祖様。求愛したのか、されたのかは分からないけど。スコルピウス家の魔力が高いのは、魔物であるご先祖様のおかげだ。

 魔物からの求愛にどうしたら良いのか分からず無反応な私に、リーダーの求愛行動は続く。
 他のレッドプテラたちが見守っているような気がするのは気のせいだと思いたい。
 
 ピーギャアピーギャァ!!
 
 何もできずにいる間も、リーダーは回転しながら私の周りを旋回するという求愛ダンスは続く。体感では既に30分くらい経過したように感じるが、ノアからの返事はない。
 その間も求愛は止まらず、回転しながら時々炎まで出すものだから炎の輪がくるくると回っているようにまで見える。

 すごい! 大道芸みたい!! 拍手したい……けど、我慢だ。多分、拍手は不正解。自己判断、ダメ絶対。

 それなのに、リーダーはヒートアップしていく。自分で作った火の輪をくぐったり、器用にくちばしと短い尻尾を使って火の玉のジャグリングも見せてくれる。なんだか、求愛というより私の興味を引こうとしているように思えてきた。

「姉さん! 断り方が分かったよ! 分かったんだけど……その……」
「どうしたの?」

 珍しく言い淀んでいるノアに、もしかしたら求愛を断るのはかなり難しいのでは? と不安になる。

「僕が言うのを覚えてね。求愛の断り方だから。いくよ。キギャキギャギャピーキギャギャ、キキャギャギャピギャー」
「…………えっ?」
「レッドプテラの求愛を断る鳴き方だから覚えて。求愛が終わるまで伝えるから。姉さんの声は僕には聞こえないし。もう一回言うよ。キギャキギャギャピーキギャギャ、キキャギャギャピギャー」

 どことなく恥ずかしそうにレッドプテラの鳴き方をするノアが可愛い。これは、覚えられても確認のために何回か聞いても良いやつだろうか。
 脳の海馬かいばを一時的に強化すれば記憶力がアップするから、レッドプテラの求愛の断り方もすぐに覚えられるだろうけど。

 あれ? もしかしなくても、言葉だけじゃなくて恥ずかしそうに話すノアも視力をあげれば見れる? 見ながら声とともに記憶できるんじゃ……。

「キギャキギャギャピーキギャギャ、キキャギャギャピギャー」

 視力を強化した私は、少し頬を染めながら言うノアを脳内に焼き付ける。あぁ、尊い……。じゃなくて、私もやらないと。

「キギャキギャギャピーキギャギャ、キキャギャギャピギャー!!」

 そう叫んだ瞬間、くちばしと短い尻尾を上手く使って火の玉ジャグリングを披露していたレッドプテラの動きが止まった。そして、真っ逆さまに落ちていく。

「え? えぇぇぇぇ!?」

 キラキラと光る何かが見える。それはリーダーの目からこぼれていて……。
 えっと、泣かした……のか? 

 木々にぶつかりながらも無抵抗に落ちていく様に罪悪感が過る。ジャグリングしていた火の玉は全てリーダーにあたっていた。

 
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