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第2章 領地編1~新たな出会い~
第50話 魔女っ子?マゾっ子?
しおりを挟む「「ただいま」」
ノアと共に屋敷の重厚な扉を潜る。後ろにはレッドプテラを代表して、べにちゃんとしゅいちゃんがいる。他のみんなは、自由に待機中だ。
始めてきた場所なのに、自由にして良いと知った瞬間、レッドプテラたちは驚くほど自由に各々が好みの場所でくつろぎ始めたのには笑ってしまった。
屋根に止まったり、池で水浴びを楽しんだり、庭の花や実を食べて庭師のカッティンに怒られたりしている。
カッティンよ、魔物が怖くないのかい?
『お姉様、お家のリーダーに会うんですよね? でも、べにたちのリーダーはお姉様なんですよね?』
そう言いながら、大きな翼を半分に折り畳み、短い足でちょこちょこと歩く姿はめちゃくちゃ可愛い。
「うーん。確かにこれから会ってもらうのはスコルピウス領のリーダーでもあるんだけど、私とノアのお父様だよ」
『そうなんですね』
『ねぇ、リーダーとか言う前に手土産もなしって人間的にアウトなんじゃないの? べに、ラビビットでも狩ってきなさいよ』
『うへぃ! 手土産が必要なんですか!? 大変です。極上のラビビットを献上しないとですね!!』
そう言って窓の方へと向かう、べにちゃん。
確かにうさぎ型の魔物のラビビットは美味しい。けどね、今それは必要ないんだよ。
「手土産なんていらないよ。しゅい、べにのことをからかって遊ぶのやめなよ。自分が緊張してるからってさぁ」
『そんなこてしてないわよ! ノアは黙ってて!!』
「僕にそんな口を利いて良いと思ってるの?」
ノアがちょっと意地悪な顔をして笑う。小悪魔的な感じ……とでも言うんだろうか。窓ガラスから光が差し込んで1枚のスチルみたいだ。
「かっこいい……」
可愛い……じゃない。あんなに天使で可愛いのに、かっこいいのだ。これは惚れる。全人類が惚れる。今、この瞬間のスチルがもらえるのなら、私の持っている全財産を差し出しても全く惜しくない。
私の言葉にべにちゃんは首を傾げ、しゅいちゃんは何度も頷いている。
しゅいちゃんは、さっきまでノアを怖がっていたはずなのに、どういうこと?
あれか? 普段可愛いのに、かっこいいは最強ってことなのか? わかる、わかるよ。今のノアは最強だよね! ううん。今だけじゃない。いつだって、ノアが世界一だよね!!
『そういえば、しゅいさんはマゾっ子でしたもんね。 前リーダーにもからかわれると嬉しそうでしたし。乗り換えですか?』
どこか納得したような雰囲気で、べにちゃんはさらりと爆弾を投下する。
ノアが最強でメロメロだったんじゃないんだ。マゾっ子かぁ。
というか、マゾっ子って……。魔女っ子みたいに言わないで欲しい。マゾっ子がダメとかじゃないんだけど、魔術を使う身としては受け入れがたい。
前世の私から見たら、今の私って魔女っ子なんだもん。もちろん、マゾっ子ではない。大事だからもう一度言うと、魔女っ子じゃなくて、マゾっ…………んぁーーー!! 間違えた!
「だから! 私は魔女っ子であって、マゾっ子じゃないのよ!!」
『お姉様?』
『アリア?』
どうやら声に出ていたらしい。べにちゃんとしゅいちゃんがこっちを見てる。
「べにもしゅいも、気にしないで。姉さん、よくああやって自分の世界に行っちゃうだけだから」
『お姉様、かっこいいです!』
『へぇ……』
べにちゃんのキラキラした瞳も、しゅいちゃんの冷たい視線も痛い! やめて!! なにか、なにか新しい話題を……。
「そ、そういえば! べにちゃんとしゅいちゃんは、人間にはなれないの?」
『人間、ですか?』
「そう! オロチっていう蛇の子がね、人になれるの!」
『なるほどです。べに、やってみますね!』
そう言って、べにちゃんは眉間にシワを寄せて唸り始めた。
『うぬぬぬぬぬ! ぬぉぉぉぉお!!』
わくわくとした気持ちで見守っていたが、私の頭の中にとある言葉が浮かんできた。それは、ラッキースケベ案件であった。
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