【本編完結】お互いを恋に落とす事をがんばる事になった

シャクガン

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10月16日(1)

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朝、いつもより早い時間にお弁当用の卵焼きを作る。
普段の卵焼きは甘めの味付けのシンプルな卵焼きだけど今日はちょっと海苔を挟んで手を加えてみた。
いつも使っているお弁当箱よりちょっと大きめのお弁当箱におかずを詰めておにぎりは別でラップに巻いて食べやすくした。

「朝練でお昼はお腹が空くからちょっと多めにしてるだけ…」

両親はもう仕事でいないのに誰に言い訳をしてるんだって感じだけどそう言い聞かせる。

でも涼ちゃんが次の日にはあれだけ行動を起こしたんだから私も何かしなきゃいけない。

私が頑張るだけ無駄だなんて事はないって否定して涼ちゃんに頑張って欲しいと言ったんだから…涼ちゃんの事は友人としてしか見れなくても何もしない訳にはいかない。

私も行動を起こして頑張らなければ……




「おはよー!!」

体育館横の女子更衣室でジャージに着替えていると、朝から元気な声が聞こえてきた。

この声は結ちゃんだなって思って入口の方を覗くとB組の人たちと挨拶を交わしている結ちゃんがいた。結ちゃんの後からA組の仲良し3人組のも入ってきてこっちに向かってきた。

「おはようございます!天城さん」
「おはよう~みんな来てくれたんだ!ありがとう」
「絶対来るって言ったじゃないですか」
「山野は朝からモーニングコールかけてくるくらい気合い入ってるっすよ」
「寺ちゃん朝起きないからじゃん」
「私のところにもかけてきたのは?」
「杉ちゃんはついでかな?」


3人がわいわいと楽しそうに話しているのをホント仲良しだねなんてクスクス笑いながら聴いているとB組グループの方から叫び声が聞こえた。

「あーーーーー!!!」

驚いて振り返ると結ちゃんが猛ダッシュでこっちに迫ってきていた。毎回ダッシュしてこなくてもいいのに…
あ、ほら仲良し3人組が驚いて後ずさりしちゃってるじゃん。

「凪沙ちゃん!凪沙ちゃんがいる!!なんで!?どうしたの!?え!?ポニテ可愛い!!」

私の名前と質問と褒め言葉を弾丸のように打ち込んできた結ちゃんに押され気味になってしまう。
とりあえず質問に答えることにした。

「えっと、今日からB組の朝練にA組も混ぜてもらうことになったんだよ?涼ちゃんから聞いてない?」
「聞いてないよ!涼くん何も言ってなかった!何で!?昨日も部活で一緒だったのに!!」

両膝と両手を地面につけて項垂れているけど、そんなに知らなかった事ショックだったのかな…

「でもありがとうございます!!」

地面に向かって感謝を叫んで、喜んでるみたいだし良かったかな。
山野さんが「気持ちわかるよ」なんて頷いてるけど何がわかったんだろうか……

「ホントだポニーテール可愛いね。凪沙」
「あ、涼ちゃん。おはよ~」

いつの間にか涼ちゃんも来ていたみたいで朝からニコニコとこちらにやってきた。

「涼くん!おはよ!凪沙ちゃんが来るなら先に言ってよ!」
「他のみんなにはA組の人たちも参加することは言ってあるよ。結は…言ったら昨日からうるさそうだったからやめといた」
「何で!?でも、喜んではしゃいじゃうから合ってる!!」
「でしょ?それで、高坂と東雲は来てないの?」

周りを見渡しても2人の姿はまだなくて声も聞こえてこない。

「まだ来てないみたい」
「起きれたら来るって言ってたし、寝坊してるのかもしれないから先に練習はじめよっか」

B組で参加しているのは4人でA組も4人。軽く準備体操をしてからコートを使って練習試合をしようかという流れになった。

「凪沙ちゃん!一緒に準備体操しよ!?」
「いいけど、B組の人と組まなくて良いの?」
「体育の時はいつも涼くんとやってるんだけど今は朝練だからいいでしょ?」

そう言って結ちゃんは私の腕を引っ張って………「にゃっ!!」………行こうとして、結ちゃんの肩に誰かの手がガシッと掴まれた。

「結」
「涼くん?どうしたのかな?」

涼ちゃんはチラッとこっちを見て、口にグッと力を込めたかと思えば「ふぅ」と息を吐いた。

「結は私と一緒に準備体操しよ」
「え?私はなぎs―――「身長的にも結がちょうどいいからこっちでやろうね」
「準備体操って身長関係ないよね!?そんなに私と準備体操したいの?私の事好きなの?私涼くんにモテモテ?」
「違うから」

無表情な顔の涼ちゃんが結ちゃんの肩をがっちり掴んでつれていく。私は1人ポツンと残された。

「あ、天城さん一緒にやりましょう!!」

残された私に気を遣ってか、山野さんがこっちに来て話しかけてくれた。

「山野さんありがとう」
「いえいえ、私もぼっちだったので助かります。天城さんとできるなんて逆に感謝です!」
「大袈裟だなぁ」

クスクスと笑って私たちは準備体操を始めた。

遠くの方で前屈をしている結ちゃんが涼ちゃんに背中を押されて叫んでいるのが見えた。


「おっはよー凪沙!」
「おはよう。凪沙さん」

準備体操が終わった頃、ちさきちゃんと亜紀ちゃんがジャージ姿でやってきた。

「ちさきちゃんに亜紀ちゃん。おはよぉ。起きれたんだねぇ」
「あ、まぁ……亜紀が家まで起こしに来てくれたからね。ハハ…き、今日は凪沙ポニテなんだね!似合ってて可愛いよ」
「ありがと。なんか今日はみんなからポニーテール褒められちゃって照れる。ちさきちゃんもポニーテールだね。私とお揃いだ!ちさきちゃんも可愛いよ」
「あたしはただ髪もメイクもする時間なくてさ」

「高坂と東雲も来れたんだ。これから軽く試合しようって話してたんだけど、A組の方が人数増えちゃったね」

涼ちゃんも2人に気づいたのかこっちにやってきた。
確かにこのままだと4対6でB組が不利になってしまうけど、バスケ部2人いるから勝てる気がしないな……


「練習試合なら朝練だし適当でいいじゃん?」


そんなちさきちゃんの一言で適当に別れた5対5のA B組混合チームは…

「ちょっと!!こっち不利じゃない!?何でバスケ部2人と元バレー部そっち行っちゃったの!?」
「練習試合だし適当でって高坂が言ったじゃん」
「私は凪沙ちゃんと同じチームが良かったので!」
「わかります!」

山野さんが全力で頷いている。だから、何がわかったの?

何故か私がいるチームに涼ちゃん結ちゃん山野さんと寺田さんが入っていて多分、上手い人たちがこっちに偏ってしまっていた。
これ練習になるんだろうか?一抹の不安を抱えながら練習試合がスタートした。
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