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10月17日(2)
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学校中にチャイムの音が鳴り響く。
一気に教室の中が騒がしくなって、ある男子は購買に向かってダッシュをして先生に怒られていたり、ある女子はお昼ご飯を持って男子の居なくなった席を確保していたり各々お昼をスタートさせていた。
私の前の席に座る彼女は机に突っ伏してお昼休みの到着に気づいてないみたいだった。
「ちさきちゃん。ちさきちゃん!お昼だよ!」
とりあえずボールペンの丸い部分で背中を突きながら呼びかけてみるも反応がない……
すると亜紀ちゃんがやってきて肩を優しく叩いた。
「ちさき」
「んん…」
ボールペンで突いて呼びかけても起きなかったちさきちゃんが亜紀ちゃんの声ですぐに目を覚ました。
ゆっくりと上体を起こしまだ眠そうな顔で時計を見て。「昼か…」とお昼の到着に人一倍テンション低めで迎えた。
そのテンションと相対するように人一倍テンション高めで1人教室に乗り込んできた人物がいた。
「凪沙!!お昼だよ!!」
“ババーン“と効果音が付きそうなハイテンションだ。
「悠木涼…目立つからちっちゃくなって入ってこいって言ったでしょ」
「だから、身長はもう少し欲しいくらいなんだって」
「身長の話じゃなくて―――」
「じゃあ!!また屋上でいい?行こっか」
話がおかしな方向に行って教室で騒いで注目される前にさっさと屋上に向かうことにした。
屋上へ向かう為に廊下をみんなで歩いていると、ちさきちゃんが不思議そうな顔をした。
「悠木涼…お昼は?」
「え?」
「涼さんいつもコンビニのおにぎりですよね?」
今日は何も持ってきていない涼ちゃんの視線が泳いできて私に止まった。その視線を泳ぐように私はちさきちゃんと亜紀ちゃんに目を向けると2人がこっちを見ていてまた泳いで涼ちゃんに視線を戻した。
「あー。なるほど」
ちさきちゃんが私の持っているお弁当袋に目をやって気づいたらしい。
「いつもと違うし、大きめだし、そういう事ね」
「だ、だって涼ちゃんいつもおにぎりだけって言ってたから栄養偏るなぁって思って?」
「あたしもいつもパンだけど?あたしにも作ってきてくれるの?」
「えぇ!んー。まぁいいけ――」
「ダメだよ!凪沙のお弁当を食べていいのは私だけだから!!」
そう言って涼ちゃんが私の手を掴んでズンズンと廊下を進んで行く。
周りはお昼を迎えて楽しそうにしている生徒で溢れている。
その中を一際目立つ涼ちゃんが私の手を握って歩き通り過ぎていく。
周りの視線が私たちに注がれて注目を集めているのがわかる。
「りょ、涼ちゃん。すごい見られてるよ?」
「見せつけてやればいい。凪沙は私が落とすから手出しさせない」
屋上に続く階段を登っていく。
「えぇ!?涼ちゃんの方でしょ?私がみんなから睨まれちゃうよ」
屋上の扉を開けて一歩踏み出し涼ちゃんは振り向いた。私と目が合う。
「凪沙自覚なさすぎ…」
「それは涼ちゃんでしょ?」
「いいや。凪沙だね。自覚なさすぎだからバイト終わりの暗い道を1人で帰せないんだよ」
「最初のうちは1人で帰ってたよ?大丈夫だったんだから」
「ずっと大丈夫だとは限らないでしょ?」
初めてバイト終わりに涼ちゃんに送ってもらった後もバイトがある日は終わる時間近くになると涼ちゃんがお店に来て駅、もしくは私の家の近くまで送ってくれている。
昨日も送ってもらった。
「痴話喧嘩は後にしてくんない?」
いつの間にか追いついて扉の前で話していた私たちの後ろにちさきちゃんと亜紀ちゃんが立っていた。
「痴話喧嘩じゃないんだけど」
ムッとして言い返すけど、はいはいと適当にあしらわれた。
亜紀ちゃんがどこからか出したレジャーシートを広げた。
「はい。涼ちゃん」
「ありがとう!!」
お弁当袋から出した私とは色違いの青色のお弁当箱を涼ちゃんに手渡す。
瞳をキラキラと輝かせて嬉しそうに受け取ってお弁当箱を眺めている。
「どのくらい食べるのか分からなかったから、私と同じ量なんだけど足りるかな?一応別でおにぎりも作って―「食べる!!」
「やっぱりそれじゃ足りないかな?今度からおにぎり別で作るね」
おにぎりも受け取ってお弁当とおにぎり両方持った涼ちゃんがお弁当を崇め奉りそうな勢いで天に掲げていた。
「涼さんとは一年の時からお昼食べてるけど…こんな姿初めてみる」
「お弁当であそこまで感動してるような奴いないだろ…」
亜紀ちゃんとちさきちゃんがそれぞれお昼ご飯を食べながら涼ちゃんを観察している。
私も自分の黄色いお弁当箱を取り出して蓋を開けた。今日は生姜焼きがメインで入っていて他にも作り置きしているきんぴらやトマトなど彩りも重視していつもより多分気合が入ってしまったお弁当だ。
「おいしぃぃぃ。凪沙ほんと料理上手だね。全部美味しいよ!」
「ほんと?ありがとう。喜んでくれて嬉しい」
「生姜焼きも卵焼きもおにぎりもトマトも全部美味しい!」
トマトは農家さんが作ってるから私関係ないんだけどね……美味しそうに食べていく姿を見ると嬉しくなる。親以外にこうやって食べてもらうのは初めてかもしれない。
「傍から見てるとあんた達付き合ってるようにしか見えないんだけど……」
「え?そんなことないでしょ?」
「今日だけでも十分そんな風に見えるけどね。お弁当作ってきたりお手手繋いで歩いてたり」
「おてて……あれは私引っ張られてただけでそんな風には…」
「傍から見てるとって言ってるでしょ。あたしは付き合ってないって知ってるけど他の人はどうだかね」
私は亜紀ちゃんの方を見てみた。黙々とお弁当を食べていた亜紀ちゃんと目が合う。メガネの奥の瞳は何を考えているのか分からない。
「ふうふ?」
「!?そこまでじゃないでしょ!?」
傍から見ても流石にそこまでじゃない!だってまだ高校生だし!!
一気に教室の中が騒がしくなって、ある男子は購買に向かってダッシュをして先生に怒られていたり、ある女子はお昼ご飯を持って男子の居なくなった席を確保していたり各々お昼をスタートさせていた。
私の前の席に座る彼女は机に突っ伏してお昼休みの到着に気づいてないみたいだった。
「ちさきちゃん。ちさきちゃん!お昼だよ!」
とりあえずボールペンの丸い部分で背中を突きながら呼びかけてみるも反応がない……
すると亜紀ちゃんがやってきて肩を優しく叩いた。
「ちさき」
「んん…」
ボールペンで突いて呼びかけても起きなかったちさきちゃんが亜紀ちゃんの声ですぐに目を覚ました。
ゆっくりと上体を起こしまだ眠そうな顔で時計を見て。「昼か…」とお昼の到着に人一倍テンション低めで迎えた。
そのテンションと相対するように人一倍テンション高めで1人教室に乗り込んできた人物がいた。
「凪沙!!お昼だよ!!」
“ババーン“と効果音が付きそうなハイテンションだ。
「悠木涼…目立つからちっちゃくなって入ってこいって言ったでしょ」
「だから、身長はもう少し欲しいくらいなんだって」
「身長の話じゃなくて―――」
「じゃあ!!また屋上でいい?行こっか」
話がおかしな方向に行って教室で騒いで注目される前にさっさと屋上に向かうことにした。
屋上へ向かう為に廊下をみんなで歩いていると、ちさきちゃんが不思議そうな顔をした。
「悠木涼…お昼は?」
「え?」
「涼さんいつもコンビニのおにぎりですよね?」
今日は何も持ってきていない涼ちゃんの視線が泳いできて私に止まった。その視線を泳ぐように私はちさきちゃんと亜紀ちゃんに目を向けると2人がこっちを見ていてまた泳いで涼ちゃんに視線を戻した。
「あー。なるほど」
ちさきちゃんが私の持っているお弁当袋に目をやって気づいたらしい。
「いつもと違うし、大きめだし、そういう事ね」
「だ、だって涼ちゃんいつもおにぎりだけって言ってたから栄養偏るなぁって思って?」
「あたしもいつもパンだけど?あたしにも作ってきてくれるの?」
「えぇ!んー。まぁいいけ――」
「ダメだよ!凪沙のお弁当を食べていいのは私だけだから!!」
そう言って涼ちゃんが私の手を掴んでズンズンと廊下を進んで行く。
周りはお昼を迎えて楽しそうにしている生徒で溢れている。
その中を一際目立つ涼ちゃんが私の手を握って歩き通り過ぎていく。
周りの視線が私たちに注がれて注目を集めているのがわかる。
「りょ、涼ちゃん。すごい見られてるよ?」
「見せつけてやればいい。凪沙は私が落とすから手出しさせない」
屋上に続く階段を登っていく。
「えぇ!?涼ちゃんの方でしょ?私がみんなから睨まれちゃうよ」
屋上の扉を開けて一歩踏み出し涼ちゃんは振り向いた。私と目が合う。
「凪沙自覚なさすぎ…」
「それは涼ちゃんでしょ?」
「いいや。凪沙だね。自覚なさすぎだからバイト終わりの暗い道を1人で帰せないんだよ」
「最初のうちは1人で帰ってたよ?大丈夫だったんだから」
「ずっと大丈夫だとは限らないでしょ?」
初めてバイト終わりに涼ちゃんに送ってもらった後もバイトがある日は終わる時間近くになると涼ちゃんがお店に来て駅、もしくは私の家の近くまで送ってくれている。
昨日も送ってもらった。
「痴話喧嘩は後にしてくんない?」
いつの間にか追いついて扉の前で話していた私たちの後ろにちさきちゃんと亜紀ちゃんが立っていた。
「痴話喧嘩じゃないんだけど」
ムッとして言い返すけど、はいはいと適当にあしらわれた。
亜紀ちゃんがどこからか出したレジャーシートを広げた。
「はい。涼ちゃん」
「ありがとう!!」
お弁当袋から出した私とは色違いの青色のお弁当箱を涼ちゃんに手渡す。
瞳をキラキラと輝かせて嬉しそうに受け取ってお弁当箱を眺めている。
「どのくらい食べるのか分からなかったから、私と同じ量なんだけど足りるかな?一応別でおにぎりも作って―「食べる!!」
「やっぱりそれじゃ足りないかな?今度からおにぎり別で作るね」
おにぎりも受け取ってお弁当とおにぎり両方持った涼ちゃんがお弁当を崇め奉りそうな勢いで天に掲げていた。
「涼さんとは一年の時からお昼食べてるけど…こんな姿初めてみる」
「お弁当であそこまで感動してるような奴いないだろ…」
亜紀ちゃんとちさきちゃんがそれぞれお昼ご飯を食べながら涼ちゃんを観察している。
私も自分の黄色いお弁当箱を取り出して蓋を開けた。今日は生姜焼きがメインで入っていて他にも作り置きしているきんぴらやトマトなど彩りも重視していつもより多分気合が入ってしまったお弁当だ。
「おいしぃぃぃ。凪沙ほんと料理上手だね。全部美味しいよ!」
「ほんと?ありがとう。喜んでくれて嬉しい」
「生姜焼きも卵焼きもおにぎりもトマトも全部美味しい!」
トマトは農家さんが作ってるから私関係ないんだけどね……美味しそうに食べていく姿を見ると嬉しくなる。親以外にこうやって食べてもらうのは初めてかもしれない。
「傍から見てるとあんた達付き合ってるようにしか見えないんだけど……」
「え?そんなことないでしょ?」
「今日だけでも十分そんな風に見えるけどね。お弁当作ってきたりお手手繋いで歩いてたり」
「おてて……あれは私引っ張られてただけでそんな風には…」
「傍から見てるとって言ってるでしょ。あたしは付き合ってないって知ってるけど他の人はどうだかね」
私は亜紀ちゃんの方を見てみた。黙々とお弁当を食べていた亜紀ちゃんと目が合う。メガネの奥の瞳は何を考えているのか分からない。
「ふうふ?」
「!?そこまでじゃないでしょ!?」
傍から見ても流石にそこまでじゃない!だってまだ高校生だし!!
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