【本編完結】お互いを恋に落とす事をがんばる事になった

シャクガン

文字の大きさ
15 / 129

10月17日(1)

しおりを挟む
「なぎさぁぁ!!」
「はい!!」

バシッ!!

ちさきちゃんがなんとかレシーブをして誰もいない方向に高く飛んでいったボールを追いかけてトスをする。ボールはネットより少し遠い位置に上がってしまったが、それを山野さんがうまくタイミングを合わせてスパイクを打った。

「山野さんナイス!!」

B組のコートに落ちたのを確認するとみんなが駆け寄って追加点を喜んだ。


今日の朝練はA組6人とB組6人揃ったので必然的にA組対B組の対戦になった。昨日の作戦通りちさきちゃん寺田さん杉本さんがレシーブで私がトスを上げている。亜紀ちゃんも少しスパイクを打つのに慣れてきた感じがするし、山野さんの元バレー部の実力もかなり凄かった。

「まだB組には勝てないかぁ」
「全体的に見てもB組ってみんな上手い人が揃ってるよね」

朝練が終わって更衣室で制服に着替えながら今日の試合を振り返る。

「でも、昨日の朝練や体育の授業でやった試合の時よりだいぶ良くなってますよ。点差も1セット目は25-20とかなり良い線までいってます。このままいけば今後1セットくらいは取れるようになると思います」

山野さんが励ますように今日の試合を評価してくれた。

「山野さんがいてくれて助かったよ。じゃなきゃあそこまで点数取れなかったと思うし」
「いえいえ、私なんかバレーくらいしかできないので…」

顔を赤らめながら手を振って可愛く謙遜をしている。

「凪沙ちゃーん!………はっ!!今日の下着可愛い!いや、凪沙ちゃんも可愛いけど…凪沙ちゃんがつけてるとより可愛い!!」
「へっ!?結ちゃん!?ど、どうしたの!?」

まだシャツのボタンを留めている最中にやってきた結ちゃんはシャツから覗く―ピンクの小さい花がたくさんあしらわれた―下着に目をやって下着の感想を頂いた。
慌てて前を隠したけど、女同士なら普通かと思いボタンを留めていく。

「一緒に教室に行こうと思って誘いに来ました!」
「そうなの?まだ着替え終わってないし先に行っててもいいよ?」

何故か私以外のみんな着替え終わってる。みんな早い…

「じゃ、先行ってるわ」

そう言ってちさきちゃんと亜紀ちゃんは先に教室に行ってしまった。続々とみんなが教室に行っている中、結ちゃんと2人残されてしまった。

「私は待ってるからゆっくり着替えていいよ」
「ごめんね。待たせちゃって」

更衣室中央に並べられたベンチに片足だけあぐらをかいたようなスタイルで座った結ちゃんは私の着替えをじっとして見つめている。
少し急いでネクタイを締める。下はまだジャージだから上からスカートを履いてジャージを脱ぐ。

「…………」
「なんか見られながら着替えるの恥ずかしいね」
「あ、ごめんね。やっぱ凪沙ちゃんって可愛いよね。スタイルもいいし」
「クスッ…いつも結ちゃんは私を褒めてくれるけど、結ちゃんも可愛いよ」
「うぇっ!?あ、いや…その……」

テヘヘと笑って顔を赤くしながら照れる結ちゃんは可愛かった。

少し短めの髪を後ろで一つに結んで前髪もちょっと短く揃えられた髪型も結ちゃんぽくてとても似合っている。スポーツをしているから体が引き締まっているのもわかるし、身長も私よりずっと高くて羨ましく思う。

今は朝練した後だからか前髪が上にぴょんと跳ねていて可愛らしさが増していた。

そのクセを直してあげようと手を伸ばす。
座っている結ちゃんがこちらを不思議そうに見つめている。
今は立っている私の方が高い位置にいて結ちゃんから上目遣いされるととても女の子らしかった。

笑いかけながら「はねてるよ」と前髪のクセを頭を優しく撫でるように直していく。

「あ…………え……」

先ほどより顔を真っ赤にした結ちゃんが固まった。

――ガチャッ

音がした方を見ると開いたドアの前には涼ちゃんが立っていた。

撫でていた手をゆっくり撫でながら離していく。クセは落ち着いたようだ。

「涼ちゃん?」

「え?涼くん!?先に教室戻ったんじゃ……」
「あーうん。携帯忘れたみたいで…」

そう言ってロッカーを開けて中を確認して携帯を取り出している。

「2人して何し―――」
「あ!やっぱ先に教室戻るね!」
「え?結ちゃん?」

顔の赤みが取れない結ちゃんは勢いよく立ち上がったかと思えば急足で出て行ってしまった。

今度は涼ちゃんと2人きりになった。

涼ちゃんはロッカーをパタンと閉めてこちらに振り返る。
その瞳はいつもの優しげな瞳とは違って何かを決意したような真剣な眼差しだった。

「一緒に教室に戻る?」
「うん」

最後にブレザーを着て荷物を持つ。

じゃあ、行こっかと涼ちゃんの隣を通り抜けようとすると腕を掴まれた。
振り向くと涼ちゃんと目が合った。

「あ、あのさ…凪沙」
「?」

さっきの決意に満ちた瞳はどこに行ったのか瞳が左に行ったり右に行ったり落ち着かない。
ぎゅっと目を閉じたかと思えば、開いた時には真っ直ぐこっちを見ていた。

「私球技大会頑張るから…優勝目指して頑張るから……」
「う、うん。涼ちゃんが頑張ってくれるの嬉しいよ」

涼ちゃんが私を恋に落とす事以外で頑張ってくれるなら私は喜んでそれを応援する。

――たとえ敵チームだとしても…

「だから…B組が優勝したら………」
「……」



「デートしよう!!」



「ん?」

デート?

デートとはあのカップルとか恋愛的な関係を望んでいる人が日時や時間を決めてお出かけをするやつですよね。私は今までデートいうものをした事はありますよ。期間は短くても付き合ってきた人はいるので初めてではないです。でもそれは男の子としたことがあるってだけで女の子とはした事がない…あ、いや待て。友達同士でも今はデートと言うから多分そっちの意味ってことでいいのかな。

「優勝できるように頑張るから、デート…ダメかな?」

色々考えていて返事をしない私に不安になったのか眉を下げて涼ちゃんはこちらを見ていた。
いつの間にか腕を握られていたはずの手は私の手を握っていた。

「わかった。いいよ。B組が優勝したらその時は一緒にお出かけしようか」
「やった。ありがとう!」

握っていた手を更にぎゅっと握って、ここでようやく涼ちゃんに笑顔が戻った。更衣室に来てから涼ちゃんはずっと険しい表情をしていたから安心する。

更衣室を出て一緒に教室へ向かう。
廊下は登校してきたばかりの生徒で賑わっていた。

涼ちゃんが頑張って優勝を目指すのなら私も何か目標が欲しい。優勝できたらそれはそれで嬉しいけど、現状それは難しいかもしれない。
球技大会は五クラスあるチームの総当たり戦って体育の授業の時に説明されていた。全クラスと対戦して勝ちが多いクラスが優勝って事になるんだけど…

「じゃあさ、涼ちゃん。A組がB組に勝ったら私も何かお願いしていい?」
「え!?何かって?」
「んー。それは今後考えておく」
「何それこわっ」
「大丈夫だよ!変な事しないから!」
「え…変な事って…」

「がんばろうね涼ちゃん!」

球技大会の新しい目標も出来てさらにやる気が出た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる

まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」 父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。 清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。 なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。 学校では誰もが憧れる高嶺の花。 家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。 しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。 「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」 秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。 彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。 「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」 これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。 完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。 『著者より』 もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。 https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858

処理中です...