【本編完結】お互いを恋に落とす事をがんばる事になった

シャクガン

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10月27日(3)

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「いや~すごかったなB組。やっぱ強いわ」

B組対E組の試合は涼ちゃんと結ちゃんの活躍により2セット先取してB組が勝利した。

「それに悠木涼が得点入れる度に『キャーキャー』ってこれもすごいな」
「涼ちゃん大人気だねぇ」

周りを見渡してちさきちゃんはため息をついた。

ここまで女の子に人気だなんて最近まで全然知らなかったな。
試合が終わったコートの方を見ても涼ちゃんはいろんな子に囲まれていて、笑顔でハイタッチをしている。

「去年はここまで人はいなかったと思うけど…」

亜紀ちゃんが周りに目を向けながら呟いた。

「そうなんだよ!なんか今年のバスケの試合から涼くんレギュラー入りしたから、試合の度にギャラリーがどんどん増えていって今じゃ半分は涼くん目当てなんじゃないかってくらいなんだよね」

いつの間にか隣にやってきていた結ちゃんが語った。

「結ちゃん。試合お疲れ様。大活躍だったね」
「凪沙ちゃんの応援のおかげだよ!なんかパワーが送られてきた気がする!!」

うん。応援はしてたけどパワーは送った覚えはない。まぁ、それでやる気が出たなら否定はしない。
不意に結ちゃんが両手を上げて手のひらを見せてきた。

「?」
「ハイタッチだよ!B組勝利のハイタッチと次のA組の試合頑張れハイタッチ!!」
「ふふ、結ちゃん。まずは一勝おめでとう」

私は両手を上げて優しく結ちゃんの手に手のひらを合わせた。
音も鳴らないくらい手を合わせるだけのハイタッチに結ちゃんは不思議そうな顔をするけど、結ちゃんも手を少し離してから私の手に優しく合わせた。

「うん!凪沙ちゃんも頑張ってね!いっぱいパワー送るから!!」
「がんばるね!!」

「しゃっ!」

パシィィィン!!

結ちゃんと手が離れてすぐ横から結ちゃんの手に力強く手が叩かれた。

「B組のパワーもらったぁぁ!!」
「あぁぁ!!凪沙ちゃんに送るパワーがぁぁ!!」

ちさきちゃんが結ちゃんの手をハイタッチしてコートに駆けていく。結ちゃんはちさきちゃんの後ろ姿に叫んで、またすぐパシンッと手を叩かれた。

「パワーありがとう」

亜紀ちゃんまで結ちゃんとハイタッチしてパワーをもらって行く。
いや、もうパワーってなんだろ??

「うぅ……凪沙ちゃんのパワーが………」
「だ、大丈夫だよ?いっぱいもらってるから!」
「で、でも私のパワー不足で負けちゃったら………」

結ちゃんのパワー不足で負けるなんてことはないから安心してほしい……言わないけど……
負けるとしたらそれはA組の実力不足、または私…………

「大丈夫!!結ちゃんの応援で頑張れるから!!」
「うん!!頑張ってね!!凪沙ちゃん!!!」

結ちゃんが大きく手を振って見送ってくれる。
私もちさきちゃんと亜紀ちゃんの後を追うようにコートに向かって駆け出した。

コートには仲良し3人組ももう揃っていて、その中には涼ちゃんの姿もあった。

「涼ちゃん。お疲れ様」
「凪沙の応援のおかげだよ」
「みんなの応援のおかげでしょ?」

涼ちゃんはひと試合終えたばかりなのに、汗ひとつも息切れもしてないくらい爽やかな返事が返ってきた。

「あたし達も応援してましたが!?!?」
「もちろん高坂と東雲の応援のおかげでもあるよ」

ニコォと目を細めて涼ちゃんは笑って答える。

「嘘くさ………」
「なんか最近私の扱いがちさきと同じになってきた気がする……」

ちさきちゃんと亜紀ちゃんが呆れた表情をした。

「クスッ、冗談だよ。じゃ、みんな試合頑張ってね!凪沙も頑張って」
「う、うん」

涼ちゃんは私の肩をポンと叩いて結ちゃんがいる方へ走って行った。

次の試合の相手はD組で運動部の人もいるみたいだけど、C組のようにバレー部はいないチームだ。
身長も私たちと同じくらいの人達で、元バレー部の人がいる私達チームの方が有利かもしれない。

――私は左手をさすった。

「凪沙」
「凪沙さん」
「「「天城さん」」」

呼ばれて振り返るとみんなが丸く集まっていた。

「円陣やろう!」

ちさきちゃんがニカッと笑う。私もみんなの所に行く。

「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「………?」
「え?何?」

みんながちさきちゃんの方を見た。
ちさきちゃんが山野さんの顔を見る。

「ここはリーダーじゃね?」
「え!?そ、そうですか!?じゃ、じゃあ…僭越ながら………」

山野さんがみんなの前に右手を出した。
それに合わせるようにちさきちゃん、亜紀ちゃん、寺田さん、杉本さんが手を乗せる。
最後に私も右手を乗せた。

「エーーぐみィィィ!!!!!えい!!えい!!」
「「「「「「おぉーーーーーー!!!」」」」」」

全員が拳を突き上げた。

「今更だけどさ………」
「………?」
「……」

ちさきちゃんが拳を上に上げながら呟いた。

「えいえいおーってダサいよな………」
「……………」

拳を突き上げたまま全員が黙る。

「えぇぇ!!そ、そうですか!?ダサいですかね!?え?何が良かったですか??」

山野さんが慌ててオロオロしながらみんなに尋ねた。

「大丈夫。ダサくないよ。あまり使わないだけで……」

亜紀ちゃんがなんのフォローにもなってないフォローを入れて、山野さん以外の人が吹き出して笑った。

その状況にさらに山野さんが困惑してオロオロし出したところで、先生から集合がかかった。


次の試合が始まる。私は右手をキュッと握った。




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