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11月15日(1)
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姿見の前で今日のコーディネートの最終チェックをする。
ベージュのプリーツスカートとシンプルなシャツにカーディガン、今日の為に新しく買った少し大人びた印象のある服装。
左手の怪我も治って今日は涼ちゃんと映画に行く約束をしている。
学校では下ろしたままの髪も今日はハーフアップにしてバレッタで留めている。
「ちょっと気合い入りすぎ?」
いやいや、でも涼ちゃんを落とすなら可愛くしないと!
いくら自分磨きをしてきて流行りや自分に合った服装を研究してきたとはいえ、涼ちゃんの好みに合っているかわからないから私なりにがんばって可愛く仕上げないといけない。
涼ちゃんの好みに合わせるのもいいけど、できたら私の好みの服装、メイク、髪型を涼ちゃんには好きになってもらいたかった。
カチッと時計の針が一個進んだ。
「あ、そろそろ家出ないと」
玄関でショートブーツを選ぶ。少し身長が高くなったようだ。
初めて休日に私服で涼ちゃんと会う。
涼ちゃんはどんな服装でくるのかワクワクしながら、大きなショッピングモールのある駅に向かった。
『もうすぐ着くよ』とメッセージを送って電車を降りた。ポンとイケメンな猫が『了解』と親指を立てているスタンプが届く。
どことなくこのスタンプ涼ちゃんに似てる……今度買ってみようか。
改札の出口に向かっていると、改札の外にこちらに手を振っている人が見えた。
キャップを被った人物は遠目から見たら男性かと思うような格好をしている。足が長く見える細身のパンツにシャツとジャケット、ボディバックを肩からかけて笑顔でこっちに手を振っていた。
「涼ちゃんお待たせ」
「全然待ってないよ~」
今日は一段と楽しそうに笑顔を浮かべている。
「服すごく似合ってるよ。可愛い。ハーフアップも良いね」
「あ、ありがとう」
会ってすぐに服装を褒めてくるとか嬉しいけど、手慣れてない?
「涼ちゃんはなんだかかっこいいね?」
「ふふ。ありがとう。普段からこんな格好してるから男に間違われちゃうんだけどね?でも、凪沙と歩くならこの格好で良かったよ?」
そう言って手を繋いでくる。
「デートだからね?行こ?」
「う、うん……」
すごく手慣れてる。こうやって色んな女の子の手を引いて来たんだろうか?
いや、でも涼ちゃんも女の子だから男の子の手を引いてきた?
あれ?私、涼ちゃんのことまだまだ知らないことの方が多いみたいだ。
今までどんな子と付き合って来たんだろう?
大型のショッピングモールには映画館やアミューズメントも入っていてなんでも楽しめる。私はあまりここまでくることが無いのでどんな施設が入っているのかは曖昧だ。
「先にご飯にしよ?何食べたい?」
今日はお昼も一緒に食べてから映画見ようと涼ちゃんが誘ってきていた。
「私はなんでも良いけど、涼ちゃんって好きな食べ物何?」
「凪沙のお弁当」
「えぇっ、それは好きな食べ物にならないんじゃない?」
「凪沙が作ってくれた物は全部好き。ハンバーグも生姜焼きも卵焼きも美味しかった。食べたい。好き……」
手をキュッと握って私の瞳を見つめながら徐々に真剣な表情に変化していく。
そこまで私の作ってるお弁当が好きなのは嬉しいけど……
「さすがにお弁当は作って来てないよ?」
「そうだよね……じゃあ」
あ!あれは?と涼ちゃんが一つの店舗に指を差した。
「クレープ好きなの?」
「好き~」
涼ちゃんは嬉しそうに手を引っ張っていく。
私のお弁当より好きそうにしてる。絶対好きな食べ物クレープだったでしょ。
あっけなく好きな食べ物ランキング1位から『凪沙のお弁当』が引きずり下ろされた。
「お昼ご飯がクレープ?」
「大丈夫!おかず系もあるから!!」
ビシッと看板に指をさして誇らしげだ。うん。可愛いから許す。
「バナナブラウニーのホイップ増し増し一つ!!!」
涼ちゃんは人差し指を立てて店員さんに注文をした。
えっ!?結局デザート系なの!?
「凪沙は!?!?」
「え、えっとーー」
クレープのメニューの多さに目があっちこっち彷徨ってしまう。どれも美味しそう……
じゃあ、コレっと看板に指をさした。結局私もデザート系。
「それね。イチゴチョコ一つお願いします!!」
涼ちゃんと並んでフードコートの椅子に座った。
「ねぇ、お金払うよ?」
何故か涼ちゃんはお会計の時に私の分のお金を受け取ってくれなかった。
「大丈夫だよ。今日凪沙とデートするって言ったら、母さんからお小遣いもらったんだよね。凪沙に一切支払わせるなって言われてるから」
「美月さん!?!?」
ここでもお弁当のお礼の刺客があったなんて油断した!!
今度ちゃんとお礼しておこう。
涼ちゃんは美味しそうにホイップ増し増しのクレープを頬張った。
「涼ちゃんって甘いもの好きなの?」
「うん。好きだよ」
はいっと涼ちゃんがクレープを差し出してきた。
「?」
「一口どーぞ」
「ありがとう」
ホイップ増し増しのクレープを一口食べた。ほとんどホイップ……
美味しいんだけど、ホイップってカロリー高いんだよね。
「おいしぃ」
「美味しいよね。でも、普段はあまり甘い物食べないんだよね」
「どうして?」
「特別な時に食べるのがまた美味しいから。だから今日は初デート記念で特別な日」
涼ちゃんが口の端についたホイップを舌でぺろっと舐めとった。
ベージュのプリーツスカートとシンプルなシャツにカーディガン、今日の為に新しく買った少し大人びた印象のある服装。
左手の怪我も治って今日は涼ちゃんと映画に行く約束をしている。
学校では下ろしたままの髪も今日はハーフアップにしてバレッタで留めている。
「ちょっと気合い入りすぎ?」
いやいや、でも涼ちゃんを落とすなら可愛くしないと!
いくら自分磨きをしてきて流行りや自分に合った服装を研究してきたとはいえ、涼ちゃんの好みに合っているかわからないから私なりにがんばって可愛く仕上げないといけない。
涼ちゃんの好みに合わせるのもいいけど、できたら私の好みの服装、メイク、髪型を涼ちゃんには好きになってもらいたかった。
カチッと時計の針が一個進んだ。
「あ、そろそろ家出ないと」
玄関でショートブーツを選ぶ。少し身長が高くなったようだ。
初めて休日に私服で涼ちゃんと会う。
涼ちゃんはどんな服装でくるのかワクワクしながら、大きなショッピングモールのある駅に向かった。
『もうすぐ着くよ』とメッセージを送って電車を降りた。ポンとイケメンな猫が『了解』と親指を立てているスタンプが届く。
どことなくこのスタンプ涼ちゃんに似てる……今度買ってみようか。
改札の出口に向かっていると、改札の外にこちらに手を振っている人が見えた。
キャップを被った人物は遠目から見たら男性かと思うような格好をしている。足が長く見える細身のパンツにシャツとジャケット、ボディバックを肩からかけて笑顔でこっちに手を振っていた。
「涼ちゃんお待たせ」
「全然待ってないよ~」
今日は一段と楽しそうに笑顔を浮かべている。
「服すごく似合ってるよ。可愛い。ハーフアップも良いね」
「あ、ありがとう」
会ってすぐに服装を褒めてくるとか嬉しいけど、手慣れてない?
「涼ちゃんはなんだかかっこいいね?」
「ふふ。ありがとう。普段からこんな格好してるから男に間違われちゃうんだけどね?でも、凪沙と歩くならこの格好で良かったよ?」
そう言って手を繋いでくる。
「デートだからね?行こ?」
「う、うん……」
すごく手慣れてる。こうやって色んな女の子の手を引いて来たんだろうか?
いや、でも涼ちゃんも女の子だから男の子の手を引いてきた?
あれ?私、涼ちゃんのことまだまだ知らないことの方が多いみたいだ。
今までどんな子と付き合って来たんだろう?
大型のショッピングモールには映画館やアミューズメントも入っていてなんでも楽しめる。私はあまりここまでくることが無いのでどんな施設が入っているのかは曖昧だ。
「先にご飯にしよ?何食べたい?」
今日はお昼も一緒に食べてから映画見ようと涼ちゃんが誘ってきていた。
「私はなんでも良いけど、涼ちゃんって好きな食べ物何?」
「凪沙のお弁当」
「えぇっ、それは好きな食べ物にならないんじゃない?」
「凪沙が作ってくれた物は全部好き。ハンバーグも生姜焼きも卵焼きも美味しかった。食べたい。好き……」
手をキュッと握って私の瞳を見つめながら徐々に真剣な表情に変化していく。
そこまで私の作ってるお弁当が好きなのは嬉しいけど……
「さすがにお弁当は作って来てないよ?」
「そうだよね……じゃあ」
あ!あれは?と涼ちゃんが一つの店舗に指を差した。
「クレープ好きなの?」
「好き~」
涼ちゃんは嬉しそうに手を引っ張っていく。
私のお弁当より好きそうにしてる。絶対好きな食べ物クレープだったでしょ。
あっけなく好きな食べ物ランキング1位から『凪沙のお弁当』が引きずり下ろされた。
「お昼ご飯がクレープ?」
「大丈夫!おかず系もあるから!!」
ビシッと看板に指をさして誇らしげだ。うん。可愛いから許す。
「バナナブラウニーのホイップ増し増し一つ!!!」
涼ちゃんは人差し指を立てて店員さんに注文をした。
えっ!?結局デザート系なの!?
「凪沙は!?!?」
「え、えっとーー」
クレープのメニューの多さに目があっちこっち彷徨ってしまう。どれも美味しそう……
じゃあ、コレっと看板に指をさした。結局私もデザート系。
「それね。イチゴチョコ一つお願いします!!」
涼ちゃんと並んでフードコートの椅子に座った。
「ねぇ、お金払うよ?」
何故か涼ちゃんはお会計の時に私の分のお金を受け取ってくれなかった。
「大丈夫だよ。今日凪沙とデートするって言ったら、母さんからお小遣いもらったんだよね。凪沙に一切支払わせるなって言われてるから」
「美月さん!?!?」
ここでもお弁当のお礼の刺客があったなんて油断した!!
今度ちゃんとお礼しておこう。
涼ちゃんは美味しそうにホイップ増し増しのクレープを頬張った。
「涼ちゃんって甘いもの好きなの?」
「うん。好きだよ」
はいっと涼ちゃんがクレープを差し出してきた。
「?」
「一口どーぞ」
「ありがとう」
ホイップ増し増しのクレープを一口食べた。ほとんどホイップ……
美味しいんだけど、ホイップってカロリー高いんだよね。
「おいしぃ」
「美味しいよね。でも、普段はあまり甘い物食べないんだよね」
「どうして?」
「特別な時に食べるのがまた美味しいから。だから今日は初デート記念で特別な日」
涼ちゃんが口の端についたホイップを舌でぺろっと舐めとった。
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