【本編完結】お互いを恋に落とす事をがんばる事になった

シャクガン

文字の大きさ
34 / 129

11月15日(2)

しおりを挟む
「知らなかったの?」
「うん」

映画を見終わって私たちの間にある空気は重たかった。
勝手に私が微妙な空気を感じているだけかもしれないけど、だって……だって……あんな…


濃厚なエッチなシーンがある恋愛映画だって思わなかったんだもん!!


なんて映画のチケット渡してくれてるんですか美月さん!!!

『彼氏とか誘って楽しんできてね』ってそういう意味だったんですか!?高校生に渡す映画のチケットじゃないですよ!

俳優さんと女優さんがすっぽんぽんでしたよ!?この映画18禁じゃないんですかね?

それを涼ちゃんと2人で見るなんて……恥ずかしすぎる……
ちゃんと調べてみるべきだった。ただの恋愛映画だと思ったのに。

「なかなか過激だったね」
「ゔ、うん………」

あー気まずい……映画見終わった後って『面白かったね!』とか言ってカフェで映画の感想を語り合うような雰囲気じゃないのかな?

この後2人でカフェ行って映画の感想とか語り合えないよ!
俳優さんの体がシックスパックでとか女優さんのスタイルがボンッキュッボン!!で綺麗だったとかそんな感想を語り合えない!!濃厚な舌を絡め合うキスシーンの話とかできない!!

2人の出会いからすれ違いを経ての最後のエッチなシーンだったけど全部そこに持っていかれちゃったよ!

隣に座る涼ちゃんはどんな反応をするのか冷や汗かきながら横目で伺ったら……平然と見てたけど……

「ふふ」

突然涼ちゃんが笑い出した。

「そんなに最後のシーンが気になっちゃう?」
「うぇ!?」
「さっきからずっとソワソワしてる」

顔が熱くなっていくのがわかった。気にしすぎて逆に不審な人になっちゃってるらしい……

「気になっちゃうっていうか……友達同士で見るには刺激が強かったというか」
「確かに高校生2人で見るにはちょっとね……でも」

涼ちゃんはちらっと私を見た。

「凪沙は……そういう経験とかしたことあるの?」
「んっ!!!」

映画館を出てあてもなくショッピングモールの中を手を繋いで2人で歩いている道中。
まさかそんな話を急に振られるとは思ってなかった。

「急に何!?」
「だって凪沙って前に彼氏いたよね?」
「いたけど………」
「じゃあ、あるんだ?」

なんで恋愛映画の濃い目なエッチシーンを観た後にこんな私の性事情をお話ししなくちゃいけないんだろ……
だからって特に話すこともないんだけど。

「ない」

恥ずかしくなって涼ちゃんの方から顔を背ける。
ペットショップが見える。猫かわいい……

「ないの?」
「ないよ」

私まだ高校2年生なんだし、なくても不思議じゃないでしょ。

「彼氏いたからって必ずシてるわけじゃないと思うけど?それに付き合ってたって言っても長続きしなかったんだから」
「そうなんだ……」

なんで涼ちゃんはちょっと嬉しそうにしているんだ。口元を手で隠しててもバレてるからね?

「涼ちゃんは?」
「え?」
「涼ちゃんは恋人いたことある?もしかしてもう経験済み?あ、ちょっと待って。やっぱりカフェ行こう!!涼ちゃんの恋バナ聴きたい!!」

「え?え!?えぇぇぇ!?!?」

繋いでいた手を引っ張り近くにあったカフェに涼ちゃんを連れ込んだ。



窓際のカウンター席のテーブルに先月発売されたばかりの新作のフラペチーノを置いた。ここも涼ちゃんが支払ってくれた。美月さんご馳走様です。

「凪沙って新作とか新商品とか好きなの?」

隣に座った涼ちゃんの手には特にカスタマイズしていないカフェラテが握られている。

「新商品好きっていうより、流行には敏感でいたいんだよね。誰かと話す時の話題にもなるし、コスメ系だと新色が出たりとかしたら試してみたり?自分磨きにもなるし、他の人にもオススメできるし」

「すごいね。そういうところでも頑張ってるんだね」

ありがと。と言ってフラペチーノを飲む。うん。甘い。

「今つけてるリップも新色だったりするの?」
「そうそう。初めて使ってみたんだけど似合う?」

唇をチュッとするように涼ちゃんに見せた。

「………………あー、うん!よく似合ってる」

すっごい間があったけど似合ってなかったかな?こういう色合いは結構私にあってるんだけど……
涼ちゃんは窓の外に目を向けてカフェラテを一口飲んだ。

「それで、涼ちゃんは今までどんな恋をして来たのかな?」
「ゔっ……」

窓の外を見つめながら、めちゃめちゃ嫌そうな顔をしている。横顔だけでもすごくよくわかる。

「な、凪沙の話も聞きたいなぁ?」
「私!?私は特にないよ?仲良かった男の子と付き合って別れた。以上」

「えぇ!もっと詳しくっ!」
「本当に面白い話じゃないよ?」

仕方なく元彼の話をすることになった。二股されたこと、体目的だった人、付き合った後にゲイだと告白して来た人。考えてみたら高2にしては酷いお付き合いをしてきたと思う。よく男性不信にならなかったなって思うくらい。

「よく男性不信にならなかったね?」

涼ちゃんも同じ事を思ったらしい……

「どの人も別れた後は私って男運ないなぁくらいにしか思わなかったな」
「そうなの?」
「うん。みんな元々は仲の良い友達からで、付き合ってみたら本性が見えて、こんな人だったんだって思ってその後は友達には戻らなかったけど……そんなものかなって」

「それって………本当に好きだったの?」

「好きだったよ。でも、今考えたらその好きって恋愛的な意味じゃなかったかもね」

恋愛的な意味の好きじゃなかったら、私ってまだ本当の恋をしてきたことがないって事になる。

私はいつ本当の恋を知るんだろうか………


俯いて手元のフラペチーノに視線を向けていると、横から涼ちゃんが優しく頭を撫でてくれた。
優しく撫でてくれる涼ちゃんの手の温もりで、少し落ち込んだ気持ちも優しく癒された。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...