【本編完結】お互いを恋に落とす事をがんばる事になった

シャクガン

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11月22日(1)

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「ごめん。お待たせ」
「ううん。全然待ってないよ」

待ち合わせ時間の10分前。多少待っていたとしても笑顔で『待ってないよ』と言っちゃいそうなくらい楽しげに笑顔を浮かべている。

「私服姿初めて見たけどすっごく可愛い……」
「そう?ありがとう。結ちゃんも可愛いよ」

「えっ!?いやいや凪沙ちゃんの方が可愛いから!!」

えへへと照れくさそうに笑っている結ちゃんはロングスカート姿で秋っぽさのある色合いをしていて、髪型も外ハネさせてセットされている。すごく女の子らしさのある服装で似合っていた。

ちなみに私はパンツスタイル。この後行くお店的にこういう格好の方が良いかと思ったからだ。

今日は前に結ちゃんにお願いされたお出かけの日である。

「今日はごめんね。夕方からバイトだから、ちょっと早めに帰らないといけなくて」
「全然いいよ。凪沙ちゃんと出かけられるだけで嬉しいから」

いつもより少し落ち着きのある雰囲気の結ちゃんと2人並んでショッピングモールに向かって歩き出した。先週涼ちゃんと行ったあのショッピングモールの中にお目当てのお店がある。

「結ちゃん?ちょっと緊張してる?初めてのお店だから?」
「ん!?そ、そうかな??緊張してる様に見える?スーーーハーーー………よし!!………ってやっぱダメだぁ。凪沙ちゃんとデートだと思うと緊張しちゃうぅ……」

頭を抱えてながら結ちゃんは唸っていた。
そっか。これもデートなのか。

私は結ちゃんの手を握った。

「うわっ!!」
「デートだったら手、繋ぐんじゃないの?――あ、いやだった?」

「つ、つ、つ!!つなぎまする!!」
「ふふ。なに時代の人なの?」

「凪沙ちゃんの手ちっちゃぁ……手までかわいい……あぁ……」

結ちゃんは私の手を感触を確かめるようににぎにぎしていた。ずっとにぎにぎにぎにぎ……お店に着くまで続けていた。手を繋いでいるというよりは遊ばれてる感覚に近くて、私も結ちゃんにいいように弄ばれていた。涼ちゃんよりも小さめな結ちゃんの手は少し冷たかった。

「結ちゃん着いたよ?」
「あ、あーーー!可愛いーーー」

にぎにぎしていた私の手から離れてガラス張りのお店に駆け寄っていく。
お店の中にはたくさんの猫がグータラしていたり、お店にいるお客さんからおやつをもらったり、高い位置から神のように下界の人間の様子を窺っている猫たちで溢れていた。

「凪沙ちゃん付き合ってくれてありがとう!!」

(凪沙ちゃん×猫、可愛い×可愛い……最強かよ)私と猫を眺めながらボソっと呟いている結ちゃんは、かなりの猫好きらしいけど、家では猫は飼えない環境でどうしても猫カフェに行ってみたかったと言っていた。

私も猫は好きだから喜んでついてきた。

「早速入ろうか?」
「早く行こう!!」

諸々の手続き、注意事項を確認してアルコール消毒を済ませ、いざ猫たちがいるお部屋へ!!



自然と近寄ってきた三毛猫に手を伸ばすと手の匂いを嗅いで擦り寄ってきた。

バシャシャシャシャシャ………

久しぶりに聞くこの音。
携帯の連写音である。

「かわぁいぃぃ……」

バシャシャシャシャシャ………

お店に入ってから数十分。結ちゃんはずっと携帯を構えて連写音を響かせていた。
もちろんフラッシュはOFFされている。

「結ちゃんも触ってみたら?」
「凪沙ちゃんと猫の組み合わせが最強すぎて写真におさめないといけない使命ができた」

「え?猫触りにきたんだよね?」
「写真に残して後世まで語り継ぐという任務がある」

「そんな任務誰に任されてるの?ほら、結ちゃんも触って!」

結ちゃんから携帯を没収して手を引っ張る。三毛猫は人懐っこく伸ばされた手に顔を押し付けてきた。

「おぉ!!ふっわふわっ!!かわえぇぇ」

いつも元気な結ちゃんが猫を触って溶けた様子で撫でているのを私も写真に収めた。

「結ちゃんの撮った写真も見ていい?」
「いいけど……」

手に持っていた結ちゃんの携帯を覗いてみる。
写真のページにはたくさんの………私が写っていた。私が猫を触っているところ……猫は見切れている。膝に登ってきた猫に驚いている所……猫の手が写っている。猫を遠くから見つめているところ……猫はいない。

「結ちゃん……猫は?」
「………にゃーー?」

視線を逸らし猫の真似をしながら猫を触り出した。



時間制の猫カフェはあっという間に時間になってしまった。

「可愛かったーー!今日はありがとう凪沙ちゃん!!」
「私も猫触れてすっごい癒された。また来たいね」

「私も久しぶりに猫撫でられて癒されたぁ。また撫でたい」

結ちゃんは私の頭を撫で撫でしてきた。

「わーー。私猫じゃないよぉ!!」
「凪沙ちゃんもふっわふわっだーー」

ぽんぽんと優しく結ちゃんに撫でられる。楽しげに笑って猫と私の頭を比較してどっちも撫で心地良いなんて言っているけど、涼ちゃんが撫でる時と違って感情が揺れることはなかった。


「じゃあ、また学校で」
「うん。今日は私に付き合ってくれてありがとう!」


じゃあね。と言ってショッピングモールがある最寄り駅で結ちゃんと別れた。

駅の改札に向かって歩き出す。

まだ夕方の日が傾き出す前。ラッシュ時間ではないこの時間でも人通りは多い。
改札を通るために携帯を取り出そうと鞄を漁っていると、私のすぐ近くで誰かが立ち止まった気配がした。

「凪沙?」
「えっ?」

声の方を振り向くと見知った顔に私は血の気が引くのを感じた。







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