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11月22日 Side涼1
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カランカランと扉に付いた鐘が鳴る。お店に入ると嗅ぎ慣れたコーヒーの香りが漂ってきて、お店の奥からは「いらっしゃいませ~」と声がした。
今はお客さんもいないみたいで静かな店内には落ち着いたクラシック音楽がかかっているだけだった。
前まではたまにしか来なかったお店も、最近では週に何回もくる様になった。主に凪沙を送り届けるという大事な任務の為ではあるが、まだ夕方の今の時間にお店に来るのは割と珍しいと思う。
親が経営しているお店という特権で凪沙のシフトは把握済み。確か今日は夕方からシフトが入っていて21時までの予定だ。部活が休みの今日は家で少し暇を持て余してしまった私はお店の休憩室に置いてある漫画を読みにきたという口実で凪沙の仕事姿を見にきた。
特別教室で2人っきりのお昼ご飯を食べた日。
無理やりキスしてしまったことを謝った。もしかしたら、嫌われたかもしれないと思ったと素直に凪沙に告げると『大丈夫』『嫌じゃなかった』っと言ってくれて内心すごく安堵した。と同時にめちゃくちゃ嬉しかった。
その上『上手だね』なんて言われて、それって気持ちよかったってことだよね?
私は浮かれてまた凪沙にキスをしてしまった。流石に前みたいなキスは自重したけど―……学校だったし……
多分今も自分では気づかないうちに浮かれているんだと思う。普段は来ないような時間に喫茶みづきに来てしまうくらいには……
お店の奥からここの経営者、もとい私の母親が顔を出した。
「なんだ涼か」
「なんだとはなんだ。暇だったから漫画読みに来ただけ」
口実を口にして店に入る。
店内をキョロキョロと見渡してから、キッチンも覗き込むと凪沙の姿が見当たらなかった。
「凪沙は?」
「それがまだ来てないのよ。無断で遅刻とか欠勤する様な子じゃないと思うんだけど……」
凪沙がまだ来てない?
無断欠勤を凪沙がするとは思えない。寝坊?急な用事?体調不良?
夕方のこの時間に寝坊とかはしないだろう。急な用事や体調不良だとしても何かしらの方法で連絡をしてくるだろうからそれも考えられない。
「携帯に連絡入れても繋がらないのよね……」
キッチンでディナー用の仕込みをしながら母さんは困った様子をしている。
私は携帯をポケットから取り出して凪沙にかけてみるけど、繋がらなかった。
「私凪沙の家行ってみる」
「そうしてくれる?事故とか事件だったら大変だから」
事故!?事件!?
まさかそんな事はないだろうとは思うけれど、私は喫茶みづきから飛び出して走って駅に向かった。
電車に飛び乗り数駅離れた凪沙の家の最寄り駅で降りて走って凪沙の家に行く。
家の近くまで何度も送ってはいるけど、実際に凪沙の家のチャイムを鳴らすのは初めてだった。
数回チャイムを押しているが反応がない。
一軒家の凪沙の家は人の気配がなく静かだった。
ポケットから携帯を取り出して凪沙と共通の友人に電話をかけた。
「もしもし……」
「あ、東雲?」
「どうしたの?」
凪沙と私が唯一仲が良い共通の友人。
本当なら高坂の方に連絡をしたかったけれど、生憎高坂の連絡先を私は知らなかった。でも、東雲なら高坂の連絡先を知っているだろうし、あわよくば凪沙の場所がわかれば……
「あの、凪沙知らない?今日バイトなんだけど、まだ来てないんだ。家にも来てみたんだけど、誰もいないみたいだし」
「ちょっと待ってて……」
携帯の向こうから何か話し声が聞こえる。東雲1人でいたわけじゃなかったみたいだ。
「(亜紀ちょっと貸して)――もしもし?悠木涼?」
「高坂!?凪沙どこいるか知らない?」
「凪沙いないの?」
「そうなんだ。シフト入ってるのにお店にも家にもいないし、携帯も繋らなくて……」
言葉にすると余計に心配になってきていた。
心臓がドクンドクンと脈打つ。
「悪いけど、私は知らないんだ」
高坂でも知らないとなると、走って探し回るしかないのかな……
「でも、今日は結ちゃんと遊ぶって言っていたな」
「えっ?結と?」
2人ってそんなに仲が良かったとは知らなかった。学校で顔を合わせる程度だと思っていたのに、遊びに行くほど仲が良いなんて……
「ありがとう高坂!結にも電話してみる」
「何かあればまた連絡してくれたらいいからな」
「うん。ありがとう。じゃね」
私はあいさつもそこそこに急いで結に電話をかけた。
「もしも~し。涼くん?どうしたの?」
「凪沙知らない?」
「え?」
「凪沙どこにいるか知らない?今日出かけてたんでしょ?」
「えぇっ!!バレてる!?」
「それは後で問い詰めるとして、知ってるの?知らないの?」
「えっと、凪沙ちゃんなら今日バイトだからって夕方前には解散したよ?」
「本当に?」
「こんなことで嘘はつきません!!」
「そ、そっか……」
凪沙は今日のシフトの事を把握してた。結と解散した後に喫茶みづきに向かう途中でいなくなったってことになる。一体どこで?
「どこに遊びに行ってたの!?」
「ショッピングモールだよ。ねぇ。凪沙ちゃんがどうかしたの!?」
「喫茶みづきに来てないんだ」
私は乱暴に携帯を切ると、再び駅に向かって走り出した。
今はお客さんもいないみたいで静かな店内には落ち着いたクラシック音楽がかかっているだけだった。
前まではたまにしか来なかったお店も、最近では週に何回もくる様になった。主に凪沙を送り届けるという大事な任務の為ではあるが、まだ夕方の今の時間にお店に来るのは割と珍しいと思う。
親が経営しているお店という特権で凪沙のシフトは把握済み。確か今日は夕方からシフトが入っていて21時までの予定だ。部活が休みの今日は家で少し暇を持て余してしまった私はお店の休憩室に置いてある漫画を読みにきたという口実で凪沙の仕事姿を見にきた。
特別教室で2人っきりのお昼ご飯を食べた日。
無理やりキスしてしまったことを謝った。もしかしたら、嫌われたかもしれないと思ったと素直に凪沙に告げると『大丈夫』『嫌じゃなかった』っと言ってくれて内心すごく安堵した。と同時にめちゃくちゃ嬉しかった。
その上『上手だね』なんて言われて、それって気持ちよかったってことだよね?
私は浮かれてまた凪沙にキスをしてしまった。流石に前みたいなキスは自重したけど―……学校だったし……
多分今も自分では気づかないうちに浮かれているんだと思う。普段は来ないような時間に喫茶みづきに来てしまうくらいには……
お店の奥からここの経営者、もとい私の母親が顔を出した。
「なんだ涼か」
「なんだとはなんだ。暇だったから漫画読みに来ただけ」
口実を口にして店に入る。
店内をキョロキョロと見渡してから、キッチンも覗き込むと凪沙の姿が見当たらなかった。
「凪沙は?」
「それがまだ来てないのよ。無断で遅刻とか欠勤する様な子じゃないと思うんだけど……」
凪沙がまだ来てない?
無断欠勤を凪沙がするとは思えない。寝坊?急な用事?体調不良?
夕方のこの時間に寝坊とかはしないだろう。急な用事や体調不良だとしても何かしらの方法で連絡をしてくるだろうからそれも考えられない。
「携帯に連絡入れても繋がらないのよね……」
キッチンでディナー用の仕込みをしながら母さんは困った様子をしている。
私は携帯をポケットから取り出して凪沙にかけてみるけど、繋がらなかった。
「私凪沙の家行ってみる」
「そうしてくれる?事故とか事件だったら大変だから」
事故!?事件!?
まさかそんな事はないだろうとは思うけれど、私は喫茶みづきから飛び出して走って駅に向かった。
電車に飛び乗り数駅離れた凪沙の家の最寄り駅で降りて走って凪沙の家に行く。
家の近くまで何度も送ってはいるけど、実際に凪沙の家のチャイムを鳴らすのは初めてだった。
数回チャイムを押しているが反応がない。
一軒家の凪沙の家は人の気配がなく静かだった。
ポケットから携帯を取り出して凪沙と共通の友人に電話をかけた。
「もしもし……」
「あ、東雲?」
「どうしたの?」
凪沙と私が唯一仲が良い共通の友人。
本当なら高坂の方に連絡をしたかったけれど、生憎高坂の連絡先を私は知らなかった。でも、東雲なら高坂の連絡先を知っているだろうし、あわよくば凪沙の場所がわかれば……
「あの、凪沙知らない?今日バイトなんだけど、まだ来てないんだ。家にも来てみたんだけど、誰もいないみたいだし」
「ちょっと待ってて……」
携帯の向こうから何か話し声が聞こえる。東雲1人でいたわけじゃなかったみたいだ。
「(亜紀ちょっと貸して)――もしもし?悠木涼?」
「高坂!?凪沙どこいるか知らない?」
「凪沙いないの?」
「そうなんだ。シフト入ってるのにお店にも家にもいないし、携帯も繋らなくて……」
言葉にすると余計に心配になってきていた。
心臓がドクンドクンと脈打つ。
「悪いけど、私は知らないんだ」
高坂でも知らないとなると、走って探し回るしかないのかな……
「でも、今日は結ちゃんと遊ぶって言っていたな」
「えっ?結と?」
2人ってそんなに仲が良かったとは知らなかった。学校で顔を合わせる程度だと思っていたのに、遊びに行くほど仲が良いなんて……
「ありがとう高坂!結にも電話してみる」
「何かあればまた連絡してくれたらいいからな」
「うん。ありがとう。じゃね」
私はあいさつもそこそこに急いで結に電話をかけた。
「もしも~し。涼くん?どうしたの?」
「凪沙知らない?」
「え?」
「凪沙どこにいるか知らない?今日出かけてたんでしょ?」
「えぇっ!!バレてる!?」
「それは後で問い詰めるとして、知ってるの?知らないの?」
「えっと、凪沙ちゃんなら今日バイトだからって夕方前には解散したよ?」
「本当に?」
「こんなことで嘘はつきません!!」
「そ、そっか……」
凪沙は今日のシフトの事を把握してた。結と解散した後に喫茶みづきに向かう途中でいなくなったってことになる。一体どこで?
「どこに遊びに行ってたの!?」
「ショッピングモールだよ。ねぇ。凪沙ちゃんがどうかしたの!?」
「喫茶みづきに来てないんだ」
私は乱暴に携帯を切ると、再び駅に向かって走り出した。
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