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11月22日(2)
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「凪沙?」
「え?」
ショッピングモールがある最寄り駅の改札前。携帯を取り出そうと鞄を漁っていると突然名前を呼ばれた。
声がする方を振り向くと見知った顔で、それもあまり会いたくもない部類に入る人だ。
元カレ
高一の時に少しだけお付き合いした人。高校は別だが中学が一緒で仲は良かった。
高校デビューしたらしい彼は高校入学後見た目の印象が変わった。真面目そうな見た目から少しチャラついた感じになり、元々整った顔をしていたからかメガネからコンタクトにしたらイケメン寄りになっていた。
中学のままの印象で付き合ったけど、高校デビューと同時に性格まで変わったのかっていうくらい、下心丸見えで近寄られてドン引きして別れた。
隣には何故この人と一緒にいるんだと思う“あいつ“がいた。
名前も知らない、いつだったか私に告白をしてきたE組のあいつだ。いまだに名前も知らないし知ろうとも思わないけど、元彼と知り合いだったらしい。
もう1人後ろに立っている人は同じ高校、同じ学年の――確か涼ちゃんと同じクラスの田中くんだったかな?大人しめな印象の彼は以前少し話したことがあったと思う。
「偶然じゃん。何してんの?」
「健二には関係ないでしょ」
前よりチャラついた話し方をしてくる元彼(健二 けんじ)はニヤニヤとした笑顔で話しかけてくる。
「なぁ、ちょっと俺達とお話しねぇ?」
「え?ちょ、ちょっと!!」
私の肩を抱き寄せてから駅とは反対方向に歩き出す。健二と名前も知らないあいつに挟まれて後ろには静かに田中くんが付いてきた。
「待って!私これからバイトなんだけど?」
「え?そんなのバイトより俺たちの方が大事でしょ?」
どう考えてもバイトの方が大事に決まってる。高校デビューと同時に知性までどこかに置いてきたらしい健二はガッチリと私の肩を掴んで離しそうにない。
「ホントにバイトだから行かないと!」
「はぁ?俺たちの方が大事だろうが」
「いっ!!……」
掴まれてた肩に力が入れられた。痛い……
隣にいるあいつは私を見下ろして口の端を上げた。
これ逃げられないやつだ。
「わかったから!じゃあ、せめて連絡くらいさせて!」
私はカバンから携帯を取り出して電話帳を開いた。
「没収」
「えっ!?」
あいつが私の手から携帯をヒョイっと取ると後ろからついて来ていた田中くんの方に放り投げた。
慌てて田中くんはキャッチをすると、丁寧に自分のカバンにしまった。
「ちょっと!返して!」
振り返り田中くんに訴えるけど、大人しめな彼は表情も変えず静かに後をついてくるだけだった。
「じゃあ、静かなところに行こうか」
肩を掴まれて離れない健二に無理やり連れて行かれる。
どこに連れて行かれるんだろう……これは本格的にまずいことになりそうだった。
静かなところとは?
知性まで高校デビューをはたしている健二は日本語まで高校デビューだったらしい。
隣の壁からわずかに漏れてくる騒音。
どうやら相当音痴らしい。何を歌っているのかわからない。
個室で防音ではあるが、完全防音ではない室内には隣の部屋の歌声が聞こえてきていた。
部屋についているモニターには見たことあるアイドルが映され、スピーカーからは楽しげな音楽が流れている。
いわゆるカラオケだ。
静かとは無縁なこの場所はハニトーが美味しいらしい。テーブルに無造作に置かれたメニューの数々の中にどデカくハニートーストの写真が紛れている。
涼ちゃんが喜びそうだと現実逃避をしていると、手にグラスを持って部屋に戻ってきた健二が私の隣に腰を下ろした。
「ほら、お前お茶でいいだろ?」
私の分も持ってきたくれたらしいお茶をテーブルに置かれた。
「うん。ありがとう……」
お礼だけ言って飲む気はなかった。ちょっとの優しさを示されても、無理やりここまで連れてこられた身としては好感度なんて元々マイナスなのを更にマイナスにされて、プラスになんてどう転んでもならない。
「それで?話って何?私バイト行かないといけないから早くしてほしいんだけど……」
「凪沙こいつに告られて振ったんだって?」
向かいの席に座るあいつと田中くん。あいつの話をしているんだろう。健二にまでこいつ呼ばわりされて、最早名前なんてないのではないかと思ってしまう……
「そうだけど……それが何?」
「今付き合ってるやついないんだろ?」
「だからってあの人と付き合う気はないけど?」
「じゃあさ。俺とより戻さね?」
ますます高校デビュー頭の健二には考える能力すら備わっていないのかと驚いてしまった。
私からフったのに上から目線でよりを戻さないかなんてよく言えたものだ。あなたと付き合いたくないからフったのに、私とよりを戻せるなんて思っているんだろうか……
「お断りさせていただきます」
「まぁ、それもそうか……簡単には戻れるなんて思ってねぇし。お前ガード固かったもんな。もしかして怖い?優しくするよ?痛いのは最初だけだって。俺上手いから」
あー気持ち悪い。吐き気がする。なんで私はこんな人と一時期だけでも付き合っていたんだろう……
目の前のあいつはずっとニヤニヤして気分が悪い。田中くんはずっと無表情で下を向いている。
この空間にいたくない。
すぐにでも外に飛び出して新鮮な空気を吸いたい。
肩をぐっと掴まれ、健二の方を向かされる。
「だから、やらせろよ」
健二の手が胸元のボタンに伸ばされた。
「え?」
ショッピングモールがある最寄り駅の改札前。携帯を取り出そうと鞄を漁っていると突然名前を呼ばれた。
声がする方を振り向くと見知った顔で、それもあまり会いたくもない部類に入る人だ。
元カレ
高一の時に少しだけお付き合いした人。高校は別だが中学が一緒で仲は良かった。
高校デビューしたらしい彼は高校入学後見た目の印象が変わった。真面目そうな見た目から少しチャラついた感じになり、元々整った顔をしていたからかメガネからコンタクトにしたらイケメン寄りになっていた。
中学のままの印象で付き合ったけど、高校デビューと同時に性格まで変わったのかっていうくらい、下心丸見えで近寄られてドン引きして別れた。
隣には何故この人と一緒にいるんだと思う“あいつ“がいた。
名前も知らない、いつだったか私に告白をしてきたE組のあいつだ。いまだに名前も知らないし知ろうとも思わないけど、元彼と知り合いだったらしい。
もう1人後ろに立っている人は同じ高校、同じ学年の――確か涼ちゃんと同じクラスの田中くんだったかな?大人しめな印象の彼は以前少し話したことがあったと思う。
「偶然じゃん。何してんの?」
「健二には関係ないでしょ」
前よりチャラついた話し方をしてくる元彼(健二 けんじ)はニヤニヤとした笑顔で話しかけてくる。
「なぁ、ちょっと俺達とお話しねぇ?」
「え?ちょ、ちょっと!!」
私の肩を抱き寄せてから駅とは反対方向に歩き出す。健二と名前も知らないあいつに挟まれて後ろには静かに田中くんが付いてきた。
「待って!私これからバイトなんだけど?」
「え?そんなのバイトより俺たちの方が大事でしょ?」
どう考えてもバイトの方が大事に決まってる。高校デビューと同時に知性までどこかに置いてきたらしい健二はガッチリと私の肩を掴んで離しそうにない。
「ホントにバイトだから行かないと!」
「はぁ?俺たちの方が大事だろうが」
「いっ!!……」
掴まれてた肩に力が入れられた。痛い……
隣にいるあいつは私を見下ろして口の端を上げた。
これ逃げられないやつだ。
「わかったから!じゃあ、せめて連絡くらいさせて!」
私はカバンから携帯を取り出して電話帳を開いた。
「没収」
「えっ!?」
あいつが私の手から携帯をヒョイっと取ると後ろからついて来ていた田中くんの方に放り投げた。
慌てて田中くんはキャッチをすると、丁寧に自分のカバンにしまった。
「ちょっと!返して!」
振り返り田中くんに訴えるけど、大人しめな彼は表情も変えず静かに後をついてくるだけだった。
「じゃあ、静かなところに行こうか」
肩を掴まれて離れない健二に無理やり連れて行かれる。
どこに連れて行かれるんだろう……これは本格的にまずいことになりそうだった。
静かなところとは?
知性まで高校デビューをはたしている健二は日本語まで高校デビューだったらしい。
隣の壁からわずかに漏れてくる騒音。
どうやら相当音痴らしい。何を歌っているのかわからない。
個室で防音ではあるが、完全防音ではない室内には隣の部屋の歌声が聞こえてきていた。
部屋についているモニターには見たことあるアイドルが映され、スピーカーからは楽しげな音楽が流れている。
いわゆるカラオケだ。
静かとは無縁なこの場所はハニトーが美味しいらしい。テーブルに無造作に置かれたメニューの数々の中にどデカくハニートーストの写真が紛れている。
涼ちゃんが喜びそうだと現実逃避をしていると、手にグラスを持って部屋に戻ってきた健二が私の隣に腰を下ろした。
「ほら、お前お茶でいいだろ?」
私の分も持ってきたくれたらしいお茶をテーブルに置かれた。
「うん。ありがとう……」
お礼だけ言って飲む気はなかった。ちょっとの優しさを示されても、無理やりここまで連れてこられた身としては好感度なんて元々マイナスなのを更にマイナスにされて、プラスになんてどう転んでもならない。
「それで?話って何?私バイト行かないといけないから早くしてほしいんだけど……」
「凪沙こいつに告られて振ったんだって?」
向かいの席に座るあいつと田中くん。あいつの話をしているんだろう。健二にまでこいつ呼ばわりされて、最早名前なんてないのではないかと思ってしまう……
「そうだけど……それが何?」
「今付き合ってるやついないんだろ?」
「だからってあの人と付き合う気はないけど?」
「じゃあさ。俺とより戻さね?」
ますます高校デビュー頭の健二には考える能力すら備わっていないのかと驚いてしまった。
私からフったのに上から目線でよりを戻さないかなんてよく言えたものだ。あなたと付き合いたくないからフったのに、私とよりを戻せるなんて思っているんだろうか……
「お断りさせていただきます」
「まぁ、それもそうか……簡単には戻れるなんて思ってねぇし。お前ガード固かったもんな。もしかして怖い?優しくするよ?痛いのは最初だけだって。俺上手いから」
あー気持ち悪い。吐き気がする。なんで私はこんな人と一時期だけでも付き合っていたんだろう……
目の前のあいつはずっとニヤニヤして気分が悪い。田中くんはずっと無表情で下を向いている。
この空間にいたくない。
すぐにでも外に飛び出して新鮮な空気を吸いたい。
肩をぐっと掴まれ、健二の方を向かされる。
「だから、やらせろよ」
健二の手が胸元のボタンに伸ばされた。
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