57 / 129
12月11日(2)
しおりを挟む
「いやいやいやいやいや!!無理だよ!!だって、私自分の気持ちすらまだわからな――」
「また、“キス“したいって思ったんじゃないんですか?」
「し……したいとは言ってない。してもいいかもって……」
「好きでもない人だったらしてもいいかもなんて言わないですよね?」
亜紀ちゃんのメガネが光に反射した。
廊下の隅に迫られて見つめられ、体も心も追い詰められている。自分の気持ちに迫られている。
「………」
お弁当を美味しそうに食べてくれるところ
球技大会で棄権することになった時そばにいて優しく微笑んで慰めてくれたこと
抱きしめられると落ち込んでいた気持ちが落ち着いた
元彼に無理やりホテルに連れていかれそうになったとき、涼ちゃんが私を見つけてくれた
名前を呼ばれて、涼ちゃんの姿が見えて、すごく嬉しかった
涼ちゃんに思わず飛びついた時、強く抱きしめてくれて一気に安堵感に包まれた
手を繋いだ時の温もりも、頭を撫でてくれる優しい手つきも、優しく微笑んでくれるあの瞳も
キスが気持ちいいなんて初めて知った
全部好きだった
今までの記憶がぐわーと頭の中で駆け巡った。
初めてだったから気づかなかったのかもしれない。この感情は知らなかった。他の人じゃ感じないこの感情が私が涼ちゃんを好きという気持ちなんだろう。
涼ちゃんがしてくれた事、一緒に過ごしてきた日々は私は好きだった。
見事に私は涼ちゃんに恋に落とされていた。
顔を両手で覆った。顔が熱い。
自覚した瞬間、驚くぐらい体が熱くなって鼓動がはやくなった。
指の隙間から亜紀ちゃんを見ると、いつもの無感情な瞳と口元がかすかに微笑んでいるように見える。
「涼さんも凪沙さん同様モテますからね。早めに行動しないと恋人作っちゃうかもしれないですよねぇ」
「そ、そんなこと!……」
ないとは思うけど……だって、涼ちゃんだって私の事を恋に落とそうとしているわけだし、他に好きな人を作ろうなんてしないはずだけど……
恋って気づいたら落ちているって知った今、他に好きな人ができていたなんて事もありえる話で……
「ダブルデートの時に告白したらいいんじゃないですか?」
「で、でも!フラれに行くようなものじゃない?それに告白なんてした事ないし……」
「………(フラれないと思うけど)そうですね。でも、気持ち伝えるのは大事じゃないですか?」
「…………」
涼ちゃんに恋に落ちましたと伝えるべきだろうか。お互いを恋に落とすと約束をしたわけだし、伝えたあとも私が涼ちゃんを恋に落とす事を頑張ればいい話だ。
「まだ時間はありますし、いっぱい考えたらいいと思いますけど……HRまでの時間はあまりないのでそろそろ教室に戻りませんか?」
「うん。ありがとう。相談に乗ってくれて」
「凪沙さんの新たな一面を見れて私も楽しかったです」
「面白がってる!?!?」
2人で教室に戻ろうと廊下の先を見ると、ちょうど涼ちゃんが教室に向かっているのが遠くの方で見えた。
隣には同じバスケ部の人たちだろうか、結ちゃんと他の女生徒の姿もあって楽しそうに笑っている。女生徒がおもむろに涼ちゃんと腕を組んでそのまま教室に入っていった。
「凪沙さん。顔!顔!」
「え?顔?」
「すごいムッとした顔してましたよ?」
「えっ!?そんな顔してないよ!?」
「無自覚ですか?」
そんな表情した覚えなんてない。ちょっとモヤっとしたような気はするけど、表情までは変わるような感じではなかった。
「そんな、さっき自覚した気持ちで私は顔にまで感情はでないよ」
「無自覚」
亜紀ちゃんの眼鏡の奥から冷たい眼差しが飛ばされてきた。
仕返しとばかりに当然の疑問をぶつけてみた。
「亜紀ちゃんはちさきちゃんには告白しないの?」
「………しないですよ」
「何で?」
「幼馴染ですからね。ちさきが今の関係が良いと思ってることくらいわかります」
「でも、気持ちを伝えるのは大事なんでしょ?」
亜紀ちゃんの表情が少し暗くなった。
私は今さっき自分の感情を自覚したけれど、亜紀ちゃんはずっと前からちさきちゃんへの感情を自覚していた。片思いだって長く続いていたはずだ。
「ちさきが好きだから伝えないっていうのもあるんですよ」
「好きだから伝えない?」
亜紀ちゃんが早足になって教室の方に向かっていく。歩くの早いなぁ!!
好きだから伝えないっていうのはどういう事だろう?好きという気持ちを伝えたらダメなの?好きなのに?
私にはまだ好きという感情が難しかった。
B組のクラスの前を通りかかる。
中を覗けば涼ちゃんはまだ女生徒に腕を組まれ談笑していた。
いつまでくっついてる気なんだろう。
あまりにもじっと見つめていたためか涼ちゃんの隣にいた結ちゃんが私に気づいて駆け寄ってきた。
「おはよう凪沙ちゃん!朝から可愛い!!珍しいね。朝からB組に来るなんて!誰かの用事?呼ぼうか??」
「ううん。たまたま通りかかっただけだから大丈夫だよ」
「凪沙!おはよう!」
腕に女生徒をくっつけた涼ちゃんも来た。
「天城さんじゃないですか。おはようございまぁす」
「お、おはよう……」
コアラのようにベッタリと涼ちゃんの腕にしがみつきなが挨拶してくる女生徒に挨拶をしたけれど、表情はちゃんと作れただろうか。
またムッとした表情にならないように気をつけた。
「凪沙ちゃんなんか怒ってる?」
「え?全然怒ってないよ?じゃ、じゃあもうHR始まるから行くね!!またね!」
どうやら表情筋はコントロールできてなかったらしい。ノーコンめ
「また、“キス“したいって思ったんじゃないんですか?」
「し……したいとは言ってない。してもいいかもって……」
「好きでもない人だったらしてもいいかもなんて言わないですよね?」
亜紀ちゃんのメガネが光に反射した。
廊下の隅に迫られて見つめられ、体も心も追い詰められている。自分の気持ちに迫られている。
「………」
お弁当を美味しそうに食べてくれるところ
球技大会で棄権することになった時そばにいて優しく微笑んで慰めてくれたこと
抱きしめられると落ち込んでいた気持ちが落ち着いた
元彼に無理やりホテルに連れていかれそうになったとき、涼ちゃんが私を見つけてくれた
名前を呼ばれて、涼ちゃんの姿が見えて、すごく嬉しかった
涼ちゃんに思わず飛びついた時、強く抱きしめてくれて一気に安堵感に包まれた
手を繋いだ時の温もりも、頭を撫でてくれる優しい手つきも、優しく微笑んでくれるあの瞳も
キスが気持ちいいなんて初めて知った
全部好きだった
今までの記憶がぐわーと頭の中で駆け巡った。
初めてだったから気づかなかったのかもしれない。この感情は知らなかった。他の人じゃ感じないこの感情が私が涼ちゃんを好きという気持ちなんだろう。
涼ちゃんがしてくれた事、一緒に過ごしてきた日々は私は好きだった。
見事に私は涼ちゃんに恋に落とされていた。
顔を両手で覆った。顔が熱い。
自覚した瞬間、驚くぐらい体が熱くなって鼓動がはやくなった。
指の隙間から亜紀ちゃんを見ると、いつもの無感情な瞳と口元がかすかに微笑んでいるように見える。
「涼さんも凪沙さん同様モテますからね。早めに行動しないと恋人作っちゃうかもしれないですよねぇ」
「そ、そんなこと!……」
ないとは思うけど……だって、涼ちゃんだって私の事を恋に落とそうとしているわけだし、他に好きな人を作ろうなんてしないはずだけど……
恋って気づいたら落ちているって知った今、他に好きな人ができていたなんて事もありえる話で……
「ダブルデートの時に告白したらいいんじゃないですか?」
「で、でも!フラれに行くようなものじゃない?それに告白なんてした事ないし……」
「………(フラれないと思うけど)そうですね。でも、気持ち伝えるのは大事じゃないですか?」
「…………」
涼ちゃんに恋に落ちましたと伝えるべきだろうか。お互いを恋に落とすと約束をしたわけだし、伝えたあとも私が涼ちゃんを恋に落とす事を頑張ればいい話だ。
「まだ時間はありますし、いっぱい考えたらいいと思いますけど……HRまでの時間はあまりないのでそろそろ教室に戻りませんか?」
「うん。ありがとう。相談に乗ってくれて」
「凪沙さんの新たな一面を見れて私も楽しかったです」
「面白がってる!?!?」
2人で教室に戻ろうと廊下の先を見ると、ちょうど涼ちゃんが教室に向かっているのが遠くの方で見えた。
隣には同じバスケ部の人たちだろうか、結ちゃんと他の女生徒の姿もあって楽しそうに笑っている。女生徒がおもむろに涼ちゃんと腕を組んでそのまま教室に入っていった。
「凪沙さん。顔!顔!」
「え?顔?」
「すごいムッとした顔してましたよ?」
「えっ!?そんな顔してないよ!?」
「無自覚ですか?」
そんな表情した覚えなんてない。ちょっとモヤっとしたような気はするけど、表情までは変わるような感じではなかった。
「そんな、さっき自覚した気持ちで私は顔にまで感情はでないよ」
「無自覚」
亜紀ちゃんの眼鏡の奥から冷たい眼差しが飛ばされてきた。
仕返しとばかりに当然の疑問をぶつけてみた。
「亜紀ちゃんはちさきちゃんには告白しないの?」
「………しないですよ」
「何で?」
「幼馴染ですからね。ちさきが今の関係が良いと思ってることくらいわかります」
「でも、気持ちを伝えるのは大事なんでしょ?」
亜紀ちゃんの表情が少し暗くなった。
私は今さっき自分の感情を自覚したけれど、亜紀ちゃんはずっと前からちさきちゃんへの感情を自覚していた。片思いだって長く続いていたはずだ。
「ちさきが好きだから伝えないっていうのもあるんですよ」
「好きだから伝えない?」
亜紀ちゃんが早足になって教室の方に向かっていく。歩くの早いなぁ!!
好きだから伝えないっていうのはどういう事だろう?好きという気持ちを伝えたらダメなの?好きなのに?
私にはまだ好きという感情が難しかった。
B組のクラスの前を通りかかる。
中を覗けば涼ちゃんはまだ女生徒に腕を組まれ談笑していた。
いつまでくっついてる気なんだろう。
あまりにもじっと見つめていたためか涼ちゃんの隣にいた結ちゃんが私に気づいて駆け寄ってきた。
「おはよう凪沙ちゃん!朝から可愛い!!珍しいね。朝からB組に来るなんて!誰かの用事?呼ぼうか??」
「ううん。たまたま通りかかっただけだから大丈夫だよ」
「凪沙!おはよう!」
腕に女生徒をくっつけた涼ちゃんも来た。
「天城さんじゃないですか。おはようございまぁす」
「お、おはよう……」
コアラのようにベッタリと涼ちゃんの腕にしがみつきなが挨拶してくる女生徒に挨拶をしたけれど、表情はちゃんと作れただろうか。
またムッとした表情にならないように気をつけた。
「凪沙ちゃんなんか怒ってる?」
「え?全然怒ってないよ?じゃ、じゃあもうHR始まるから行くね!!またね!」
どうやら表情筋はコントロールできてなかったらしい。ノーコンめ
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる