【本編完結】お互いを恋に落とす事をがんばる事になった

シャクガン

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12月12日

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ちさきちゃん、亜紀ちゃん私でB組の教室を覗いた。

楽しそうに談笑しながらお昼ご飯を食べようとしている生徒。教室から手提げ袋を持って出ていく生徒。

お昼休みになって教室で待っていたが、涼ちゃんがなかなか来ないので迎えにきたけれど、B組の教室を見渡しても涼ちゃんの姿は見えなかった。

「あ、凪沙ちゃん!!」

3人で教室の入り口に立っていると後ろから声をかけられた。
振り向くと結ちゃんが購買帰りなのか、手に持った菓子パンを振りながら近寄ってきた。

「今日も凪沙ちゃんかわいいね!どうしたの?今日こそは誰かに用事?」
「あ、うん。涼ちゃんに……」

菓子パンを持っていた手がピタリと止まって、不思議そうに首を傾けた。

「涼くんなら今日来てないよ?」
「えっ?」

「風邪かなぁ?最近寒くなってきたもんねぇ」

結ちゃんは両腕を抱えて腕をさすった。

「凪沙連絡きてたか?」
「ううん」

涼ちゃんからの連絡は来ていたなかった。
今日も涼ちゃんの分のお弁当を作って持ってきている。

「全く……連絡くらいしてくればいいのに……凪沙のお弁当が無駄になるじゃないか」

「え!?凪沙ちゃん涼くんにお弁当作ってきてるの!?」
「うん。今日は無駄になっちゃったけど……」

2人分入ったお弁当袋を持ち上げて苦笑した。

「そ、それっ!!」

結ちゃんがお弁当袋を持った私の手をガシッと握った。

「無駄になるんだったら私が貰ってもいいですか!!」

普段はニコニコとしている瞳がキリリとして私を見つめてくる。

「い、いいけど……結ちゃん……パン――」
「パンなんていつでも食べれるけど!凪沙ちゃんのお弁当は今しか食べられないので!!お願いします!」

「お願いなんてしなくても、私も食べてもらえた方が助かるから……よかったら食べて?」

やったーっと廊下に響き渡るほどはしゃぐ結ちゃんに涼ちゃんの分のお弁当を手渡した。
一緒に食べてもよかったけど、結ちゃんは他の人と食べる約束をしちゃっていたみたいで“自慢する“と言って教室の中に入って行った。

涼ちゃんにはメッセージを送った。




「明日、どうする?」

ちさきちゃんがメロンパンを一口齧って聞いてきた。
明日は涼ちゃんも部活が休みだということで、4人でダブルデートをする予定を立てていた。でも、涼ちゃんが風邪だったら病み上がりに出かけるのは難しい。悪化してもいけないし、治ってないかもしれない。

携帯を見る。涼ちゃんに送ったメッセージは既読にもなっていない。

涼ちゃん……どうしたのかな?
こういう時、ちゃんと連絡してくれそうなのに……そんなに体調が悪いのかな?お見舞い行ってもいいかな……

「風邪かどうかもわからないし……今日はバイトだから美月さんに聞いてみる」
「それがいいかもな。ダメでもまた別の日にしたらいいし」

「うん……」

亜紀ちゃんが私をチラッと見て微笑んだ。

わかってる。告白でしょ?でも、涼ちゃんが風邪じゃダブルデートもできないんだから仕方ないよね?

「別にダブルデートの時じゃなくてもいいんですよ?」
「私の心読まないで!?!?」

何のこと?っと不思議そうに私を見つめてくる。

「何のことだよ?」

ちさきちゃんは普通にわかってないみたいだった。
いずれ話すことにはなるだろうけど、ちさきちゃんにはもうしばらくはこのままでいてほしい。すぐにバレちゃうかもしれないけど………




「おはようございます。美月さん」

「おはよう!凪沙ちゃん」

キッチンにいる美月さんに声をかけると長い髪をいつも通り高い位置で結んで、靡かせながら笑顔で挨拶を返してくれる。

ニコニコと微笑みながら洗い物を続ける美月さんに話しかけた。

「あ、あの涼ちゃん。今日学校お休みだったみたいですけど…風邪ですか?」

涼ちゃんの名前が出た時、美月さんは少し固まった。
すぐにコップを洗う作業を始めたが、その反応に少し違和感を感じる。

「……涼ね……そう。ちょっと体調悪そうだったから休ませたのよ」
「大丈夫ですか?」

「大丈夫。明日には元気になってるわ」

美月さんは私に笑いかけた。

「お見舞いとかって……」
「ほんと大丈夫だから。心配しなくてもいいし、お見舞いも大丈夫よ」

「………」
「ほら、早く着替えてきなさい。今日も忙しくなるからね?」

「……わかりました」

肩をポンと叩かれてから休憩室に入った。

携帯を見てもいまだに涼ちゃんへ送ったメッセージは既読になっていない。


お店は金曜日ということもあって早い時間から混み出してきていた。
いつもの常連さん、仕事帰りで立ち寄った人。夜ご飯を食べにきてくれた人。入れ替わり立ち替わり色んなお客様がやってきていた。

お客様が帰った後の席を片付けていく。
そろそろ上がる時間だが、涼ちゃんはくる気配がない。体調が悪いみたいだし、今日は1人で帰ることになるだろう。

それにお客様が何名か残っていて、美月さんも忙しくしているし少し残って片付けを手伝って行った方が良いかもしれない。


「ごめんね。こんな時間まで残ってもらっちゃって……」
「大丈夫ですよ」

21時半。いつもより30分ほどの残業。

「それに涼もいないし、1人で帰しちゃうこともごめんね。何かあればすぐ連絡してね?」
「はい……あの、ほんとにお見舞いとかダメですか?」

「ごめんね……心配しなくても大丈夫だから……それに帰る時間遅くなってもダメでしょ?」

口元で笑った美月さんは少し困ったように眉を凹ませている。

「わかりました。お先に失礼します」
「お疲れ様」



涼ちゃんへ送ったメッセージは既読にならない。
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