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12月24日 Side涼3
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広々とした室内は掃除も行き届いていて、1人がけソファにテーブル、大きい窓からはプールまで見える。そして部屋の真ん中にダブルベット。いや、それ以上のサイズはありそうだ。クイーンとか言ったかな?1人で寝るには広すぎるベッドは真っ白なシーツが皺一つ無く整えられていた。
「涼。今日で最後なんだ。ディナーの時間まではゆっくりして過ごすといい。ここのホテルは色んなお店も入ってて楽しめると思う」
そう言って父さんはテーブルに数枚のお札を置いて出て行った。
高校生の娘にこんな広い部屋を1人で使わせるなんておかしいと思う。だからって父親と同じ部屋なんて嫌だけど……ただ血が繋がっているだけで、一緒に過ごした時間なんてほとんどなくて記憶も薄い。ほぼ他人みたいな感覚の人と一緒にいるのは苦痛だった。
母さんの顔を思い出す。
昼前に父さんが迎えにきて、2人でお店に行った。少し混み始めたキッチンで忙しそうに働く母さんに『今までありがとうございました』と頭を下げた。
他にも色々言いたいことはあったはずなのに何も思いつかなくて結局その一言だけだった。
母さんは働く手を止めて私に振り返り柔らかく微笑んで『いってらっしゃい』と一言だけでまたすぐに仕事に戻って行った。
もう戻ることはないのに“いってらっしゃい“ってそれだけかよ。と思ったけれど、きっと母さんからしたら私なんてその程度の娘だったんだなと実感した。
携帯のバイブがブブッと震えた。
凪沙からまた不在着信が入っている。さっき震えたのはどうやらメッセージみたいで相手は龍皇子要。東雲からもメッセージが入っていた。まだ授業中のはずなのに携帯いじってるなんて悪い奴らだな。なんて思いながらメッセージを開かずにポケットにしまった。
明日の早朝にはこのホテルを出て空港に向かいそのままアメリカに行く予定になっている。
まだ夕方にもなっていないし、夕食まで暇だから少し歩き回るのもいいかもしれない。
私は部屋を出て、お店が集まるフロアにいくことにした。
テーブルに置かれたお札は取らなかった。
色んなお店が立ち並ぶフロアに到着して周りを見渡すとカップルのお客が目立つ。お店は緑と赤の装飾で彩られて軽快な音楽が流れている。
「クリスマス……」
そうだ今日はクリスマスイブだった。どうりでカップルは多いし、赤い服を着て白い髭を生やした置物が目立つと思った。
どのお店もクリスマスモード全開だし、洋菓子店はケーキ販売に忙しそうだ。
嬉しそうに腕を絡ませて歩いているカップルを見る。幸せそうだなって嫉ましく感じてしまう。
せっかくなら凪沙と一緒に歩いてまわりたかった。きっと他愛ない話をしながら嬉しそうに色んなお店を見ていくんだ。
それでこのキーホルダーを見て『涼ちゃんに似てるよね』なんて言って笑うんだ。
雑貨屋に並んでいるキーホルダーを手に取った。メッセージで以前凪沙に送ったスタンプのキャラクターだ。イケメンな猫がポーズを決めている。スタンプを送った後凪沙がこのスタンプシリーズの猫、涼ちゃんに似てるから似合うねなんて言っていた。
似合うってどういう事?って思ったけど、凪沙が送ってきた犬のスタンプは凪沙に似ていて凪沙に似合っていると思ったからそういうことなんだろう。多分……
口元が勝手に上がった。1人で笑ってるなんて気持ち悪いな。
キーホルダーをレジに持っていく。小さな紙袋に入れられたイケメンな猫をカバンにしまった。凪沙との思い出があるスタンプのキャラクターは楽しい気持ちを思い起こせえるきっかけになりそうで、アメリカに連れて行きたくなった。
結局誰にもお別れの挨拶をしなかった。龍皇子さんに会ったときも特にお別れって感じの雰囲気でもなかったし、なんなら睨まれてたし?凪沙に会わせようとしてきてたけど、会わないで家を出てきたから龍皇子さんに怒られそうだな……
東雲と高坂も凪沙の事で怒ってそうだなぁ。
お店を出てまた一軒一軒見てまわる。
特に欲しいものはないけど、部屋に戻ったところで何もすることはない。どこかで暇を潰せそうなところがないかフロアマップを見た。ゲームセンターくらいか暇を潰せそうなところ……
フロアマップから視線を外してゲームセンターがある方向へと視線を向けた。
誰かが視線の端から走っているのが見えた。この場にふさわしくない雰囲気で走っている。よく見ると見たことある制服だった。
はぁはぁと肩で息をしているのが遠くからでもわかった。
「涼ちゃん!!!!!!」
周りの人が驚いたように女の子を見つめた。
「な、凪沙……」
なんでこんなところに?どうやってきたの?なんでここにいるってわかったの?
色んな疑問が湧いては沈んでいく。
口に出すことができない。
会いたいと思っていた。話したいと思っていた。
私は凪沙を見つめるしかできなかった。そんな私に向かって凪沙が早歩きで近づいてきているのがわかった。
揺らぎそうな気持ちをまた押し込める。この気持ちはもう取り出さないと決めている。
私は振り返り凪沙がいる方とは反対方向に走り出した。
「涼。今日で最後なんだ。ディナーの時間まではゆっくりして過ごすといい。ここのホテルは色んなお店も入ってて楽しめると思う」
そう言って父さんはテーブルに数枚のお札を置いて出て行った。
高校生の娘にこんな広い部屋を1人で使わせるなんておかしいと思う。だからって父親と同じ部屋なんて嫌だけど……ただ血が繋がっているだけで、一緒に過ごした時間なんてほとんどなくて記憶も薄い。ほぼ他人みたいな感覚の人と一緒にいるのは苦痛だった。
母さんの顔を思い出す。
昼前に父さんが迎えにきて、2人でお店に行った。少し混み始めたキッチンで忙しそうに働く母さんに『今までありがとうございました』と頭を下げた。
他にも色々言いたいことはあったはずなのに何も思いつかなくて結局その一言だけだった。
母さんは働く手を止めて私に振り返り柔らかく微笑んで『いってらっしゃい』と一言だけでまたすぐに仕事に戻って行った。
もう戻ることはないのに“いってらっしゃい“ってそれだけかよ。と思ったけれど、きっと母さんからしたら私なんてその程度の娘だったんだなと実感した。
携帯のバイブがブブッと震えた。
凪沙からまた不在着信が入っている。さっき震えたのはどうやらメッセージみたいで相手は龍皇子要。東雲からもメッセージが入っていた。まだ授業中のはずなのに携帯いじってるなんて悪い奴らだな。なんて思いながらメッセージを開かずにポケットにしまった。
明日の早朝にはこのホテルを出て空港に向かいそのままアメリカに行く予定になっている。
まだ夕方にもなっていないし、夕食まで暇だから少し歩き回るのもいいかもしれない。
私は部屋を出て、お店が集まるフロアにいくことにした。
テーブルに置かれたお札は取らなかった。
色んなお店が立ち並ぶフロアに到着して周りを見渡すとカップルのお客が目立つ。お店は緑と赤の装飾で彩られて軽快な音楽が流れている。
「クリスマス……」
そうだ今日はクリスマスイブだった。どうりでカップルは多いし、赤い服を着て白い髭を生やした置物が目立つと思った。
どのお店もクリスマスモード全開だし、洋菓子店はケーキ販売に忙しそうだ。
嬉しそうに腕を絡ませて歩いているカップルを見る。幸せそうだなって嫉ましく感じてしまう。
せっかくなら凪沙と一緒に歩いてまわりたかった。きっと他愛ない話をしながら嬉しそうに色んなお店を見ていくんだ。
それでこのキーホルダーを見て『涼ちゃんに似てるよね』なんて言って笑うんだ。
雑貨屋に並んでいるキーホルダーを手に取った。メッセージで以前凪沙に送ったスタンプのキャラクターだ。イケメンな猫がポーズを決めている。スタンプを送った後凪沙がこのスタンプシリーズの猫、涼ちゃんに似てるから似合うねなんて言っていた。
似合うってどういう事?って思ったけど、凪沙が送ってきた犬のスタンプは凪沙に似ていて凪沙に似合っていると思ったからそういうことなんだろう。多分……
口元が勝手に上がった。1人で笑ってるなんて気持ち悪いな。
キーホルダーをレジに持っていく。小さな紙袋に入れられたイケメンな猫をカバンにしまった。凪沙との思い出があるスタンプのキャラクターは楽しい気持ちを思い起こせえるきっかけになりそうで、アメリカに連れて行きたくなった。
結局誰にもお別れの挨拶をしなかった。龍皇子さんに会ったときも特にお別れって感じの雰囲気でもなかったし、なんなら睨まれてたし?凪沙に会わせようとしてきてたけど、会わないで家を出てきたから龍皇子さんに怒られそうだな……
東雲と高坂も凪沙の事で怒ってそうだなぁ。
お店を出てまた一軒一軒見てまわる。
特に欲しいものはないけど、部屋に戻ったところで何もすることはない。どこかで暇を潰せそうなところがないかフロアマップを見た。ゲームセンターくらいか暇を潰せそうなところ……
フロアマップから視線を外してゲームセンターがある方向へと視線を向けた。
誰かが視線の端から走っているのが見えた。この場にふさわしくない雰囲気で走っている。よく見ると見たことある制服だった。
はぁはぁと肩で息をしているのが遠くからでもわかった。
「涼ちゃん!!!!!!」
周りの人が驚いたように女の子を見つめた。
「な、凪沙……」
なんでこんなところに?どうやってきたの?なんでここにいるってわかったの?
色んな疑問が湧いては沈んでいく。
口に出すことができない。
会いたいと思っていた。話したいと思っていた。
私は凪沙を見つめるしかできなかった。そんな私に向かって凪沙が早歩きで近づいてきているのがわかった。
揺らぎそうな気持ちをまた押し込める。この気持ちはもう取り出さないと決めている。
私は振り返り凪沙がいる方とは反対方向に走り出した。
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