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12月24日(3)
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「美月さんは………寂しくないんですか?」
美月さんは下を向いて目を閉じた。何も言わない美月さんは涼ちゃんの事を考えているんだろう。自らが産み育て今では涼ちゃんの方が美月さんより大きい。
一緒に過ごしてきた時間も誰よりも長くて、誰よりも涼ちゃんを見てきた人。
涼ちゃんの幸せを1番に願う人が、涼ちゃんの事を想ってどんな気持ちでアメリカに行く事を薦めたのか。私には想像もできない。
美月さんは口から息をふっと吐いて、また目を開けた時には悲しそうな感情が瞳に現れていた。きっともっと色んな感情が渦巻いているんだろうけど、最初の印象がそれだった。
「寂しくないわけないじゃない……」
小さくつぶやかれた言葉はとても重く感じた。
涼ちゃんの幸せを願った故、美月さん自身の気持ちは押し殺されてしまっていた。
私だって、涼ちゃんがアメリカに行くのは寂しいし行ってほしくない。
自分の気持ちを自覚したのに……
「じゃあ、涼ちゃんはアメリカに行かなくてもいいですよね?」
「…………」
美月さんからの返答はなく静かに俯いた。
「………おうち教えて下さい。それか涼ちゃんの居場所………」
美月さんの瞳はいまだに暗かった。
「もう遅いわ」
「?」
遅いってなんのことだろうと疑問に思うと美月さんは続けた。
「涼なら父親が迎えにきて出て行ったから」
「え?だって明日行くって………」
「飛行機は明日だけど、朝早いみたいで今日のうちにもう出て行ったのよ」
「な、な、何してるんですか!!早く行かないと!!」
「どこにいるかなんて知らないわ……それに会ってどうするの?連れ戻すの?もしかしたら涼だってアメリカに行きたいかもしれないわよ?」
確かにそうだ。涼ちゃんがアメリカに行くことを望んでいたら………私は涼ちゃんをアメリカに行くのを止められない。
「それでも!!涼ちゃんに会わないと、ちゃんと気持ち確認しないと!!」
私は喫茶みづきから出た、まずは駅に向かうことにした。
美月さんはお店もあるので行けない。
携帯を取り出して涼ちゃんへ電話をかけるが、あれからずっとメッセージや電話は全部無視をされていた。今更電話をかけた所で取られることはなかった。
画面を見つめ涼ちゃんのアイコンを見る。コーヒーとバスケットボール。変な組み合わせだと今になって思った。
携帯を操作し、また電話をかけた。
こういう時、心強い味方である要ちゃんだ。今は授業中だしもしかしたら取ってはくれないかもしれないけど……と思ったらあっさりと電話に出てくれた。
『もしもし、龍皇子です』
「あ、要ちゃん!」
私は駅に向かう足を速めながら経緯を説明した。
静かに私の話を聞いていた、要ちゃんが口を開く。
『申し訳ありません。私がちゃんと調べていればこんなことに……』
「要ちゃんのせいじゃないよ?逆に色々と教えてくれて感謝してるんだよ」
『いえ、わたしは……』
要ちゃんは電話の向こうでブツブツと何か言っているようだったが、今はそれどころではなかった。
「それで……要ちゃん。今涼ちゃんがいる、もしくは涼ちゃんが居そうな場所わからないかな?」
『…………そうですね』
要ちゃんは思考を涼ちゃんに変えて考えだした。
『少し調べますので、お時間いただいてもよろしいでしょうか?』
「わ、わかった」
私は電話を切ろうとした時、要ちゃんの声がした。
『明日早朝の飛行機でしたら、空港の近くのホテルに泊まるのかもしれませんね』
そうか。そうだ!明日の早朝の飛行機なんだから当然空港の近くに泊まるはず……
私は電車に乗って空港へ向かった。
平日の昼過ぎの電車内は人は多くない。こんな時間に制服を着て電車に乗っている学生なんてほとんどいないだろう。普通は学校でまだ授業中のはずで、私も先生に何も言わずに飛び出してきたことを今になって気づいた。
メッセージを確認するとちさきちゃんから先生には体調不良で早退したという事を伝えてくれたらしい。感謝している猫スタンプを送信しておいた。
それと涼ちゃんのことも簡潔にメッセージを送る。私が今空港に向かっていることも伝えておく。
今は授業中のはずなのにすぐに既読がついた。ちゃんと授業出てるよね?
ポコっとメッセージが届く。
『悠木涼もう家にいないの!?それで居場所は?まだ日本にいるんだよね?』
「どこにいるかはわからないけど、絶対探す」
『わかった。あたしもそっち行く』
「学校は?」
『体調悪くなってきたわー具合悪いわー』
「………ありがとう」
ちさきちゃんからのメッセージが途切れて、私たちのメッセージのやり取りを見ていたらしい亜紀ちゃんからもメッセージが届く。
『私も体調不良』
亜紀ちゃんもどうやら体調が悪くなってしまったらしい。
怪しまれないように気をつけてねっと送ったけど、3人も体調不良はすでに手遅れかもしれない……
見慣れない風景が流れていく。
普段はこんなところまで来ないので新鮮な気持ちはあるけど、涼ちゃんのことを考えると見慣れない風景で不安な気持ちにもなった。
涼ちゃんは今どこで何をしているのか、要ちゃんの連絡を待ちつつ私はまだ目的地までつかない電車に揺られる。
美月さんは下を向いて目を閉じた。何も言わない美月さんは涼ちゃんの事を考えているんだろう。自らが産み育て今では涼ちゃんの方が美月さんより大きい。
一緒に過ごしてきた時間も誰よりも長くて、誰よりも涼ちゃんを見てきた人。
涼ちゃんの幸せを1番に願う人が、涼ちゃんの事を想ってどんな気持ちでアメリカに行く事を薦めたのか。私には想像もできない。
美月さんは口から息をふっと吐いて、また目を開けた時には悲しそうな感情が瞳に現れていた。きっともっと色んな感情が渦巻いているんだろうけど、最初の印象がそれだった。
「寂しくないわけないじゃない……」
小さくつぶやかれた言葉はとても重く感じた。
涼ちゃんの幸せを願った故、美月さん自身の気持ちは押し殺されてしまっていた。
私だって、涼ちゃんがアメリカに行くのは寂しいし行ってほしくない。
自分の気持ちを自覚したのに……
「じゃあ、涼ちゃんはアメリカに行かなくてもいいですよね?」
「…………」
美月さんからの返答はなく静かに俯いた。
「………おうち教えて下さい。それか涼ちゃんの居場所………」
美月さんの瞳はいまだに暗かった。
「もう遅いわ」
「?」
遅いってなんのことだろうと疑問に思うと美月さんは続けた。
「涼なら父親が迎えにきて出て行ったから」
「え?だって明日行くって………」
「飛行機は明日だけど、朝早いみたいで今日のうちにもう出て行ったのよ」
「な、な、何してるんですか!!早く行かないと!!」
「どこにいるかなんて知らないわ……それに会ってどうするの?連れ戻すの?もしかしたら涼だってアメリカに行きたいかもしれないわよ?」
確かにそうだ。涼ちゃんがアメリカに行くことを望んでいたら………私は涼ちゃんをアメリカに行くのを止められない。
「それでも!!涼ちゃんに会わないと、ちゃんと気持ち確認しないと!!」
私は喫茶みづきから出た、まずは駅に向かうことにした。
美月さんはお店もあるので行けない。
携帯を取り出して涼ちゃんへ電話をかけるが、あれからずっとメッセージや電話は全部無視をされていた。今更電話をかけた所で取られることはなかった。
画面を見つめ涼ちゃんのアイコンを見る。コーヒーとバスケットボール。変な組み合わせだと今になって思った。
携帯を操作し、また電話をかけた。
こういう時、心強い味方である要ちゃんだ。今は授業中だしもしかしたら取ってはくれないかもしれないけど……と思ったらあっさりと電話に出てくれた。
『もしもし、龍皇子です』
「あ、要ちゃん!」
私は駅に向かう足を速めながら経緯を説明した。
静かに私の話を聞いていた、要ちゃんが口を開く。
『申し訳ありません。私がちゃんと調べていればこんなことに……』
「要ちゃんのせいじゃないよ?逆に色々と教えてくれて感謝してるんだよ」
『いえ、わたしは……』
要ちゃんは電話の向こうでブツブツと何か言っているようだったが、今はそれどころではなかった。
「それで……要ちゃん。今涼ちゃんがいる、もしくは涼ちゃんが居そうな場所わからないかな?」
『…………そうですね』
要ちゃんは思考を涼ちゃんに変えて考えだした。
『少し調べますので、お時間いただいてもよろしいでしょうか?』
「わ、わかった」
私は電話を切ろうとした時、要ちゃんの声がした。
『明日早朝の飛行機でしたら、空港の近くのホテルに泊まるのかもしれませんね』
そうか。そうだ!明日の早朝の飛行機なんだから当然空港の近くに泊まるはず……
私は電車に乗って空港へ向かった。
平日の昼過ぎの電車内は人は多くない。こんな時間に制服を着て電車に乗っている学生なんてほとんどいないだろう。普通は学校でまだ授業中のはずで、私も先生に何も言わずに飛び出してきたことを今になって気づいた。
メッセージを確認するとちさきちゃんから先生には体調不良で早退したという事を伝えてくれたらしい。感謝している猫スタンプを送信しておいた。
それと涼ちゃんのことも簡潔にメッセージを送る。私が今空港に向かっていることも伝えておく。
今は授業中のはずなのにすぐに既読がついた。ちゃんと授業出てるよね?
ポコっとメッセージが届く。
『悠木涼もう家にいないの!?それで居場所は?まだ日本にいるんだよね?』
「どこにいるかはわからないけど、絶対探す」
『わかった。あたしもそっち行く』
「学校は?」
『体調悪くなってきたわー具合悪いわー』
「………ありがとう」
ちさきちゃんからのメッセージが途切れて、私たちのメッセージのやり取りを見ていたらしい亜紀ちゃんからもメッセージが届く。
『私も体調不良』
亜紀ちゃんもどうやら体調が悪くなってしまったらしい。
怪しまれないように気をつけてねっと送ったけど、3人も体調不良はすでに手遅れかもしれない……
見慣れない風景が流れていく。
普段はこんなところまで来ないので新鮮な気持ちはあるけど、涼ちゃんのことを考えると見慣れない風景で不安な気持ちにもなった。
涼ちゃんは今どこで何をしているのか、要ちゃんの連絡を待ちつつ私はまだ目的地までつかない電車に揺られる。
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