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12月24日(2)
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「つか、ここ何?物置?」
「使用していない物を保管している場所ですね」
「物置じゃん!!」
生徒会室ほど広くない場所に棚が並べられ、いつか見たようなポスターやら看板やらが乱雑に置かれている場所に4人で入った。掃除はされているみたいで埃っぽくはない。
「話が長くなるようでしたら、別の場所にしますが……」
「あーいや、長くはならないと……思う」
「悠木涼さんの話でしたね?」
「そう。………あいつマジで学校辞めるの?」
要ちゃんとちさきちゃんが対峙している後で私と亜紀ちゃんが静かに話を聞く。
「事実です」
要ちゃんは淡々と答える。亜紀ちゃんも声色に強弱をつけないで淡々と話すタイプの子だけど、要ちゃんの場合は同じ回答をしていても、確信めいたものを感じる強めの回答なところは違う部分だ。
「なんで辞めるの?」
「………詳しくはわかりません。ただ、父親の住むアメリカに行くということは本当です」
最近まで4人でダブルデートをしたり、お昼を一緒に食べたりしていた友達が何も言わずにいなくなって、連絡も取れなくなるなんて辛いし、寂しい、悲しい。色んな感情が湧いてくる。
要ちゃんが私を心配そうに見る。
私は何も言えず俯いた。
「いつ?いつアメリカに行くの?」
要ちゃんは少し戸惑いつつ、口を開いた。
「明日」
みんなが一斉に要ちゃんを見た。
「……明日?」
誰が言ったのか、私が言ったのかわからないが呟きが聞こえた。
「明日の飛行機だそうです。これは今朝方知ったんです。こんなに早いとは思わなくて……」
「明日って……凪沙……どうする?時間ないよ。あいつとちゃんと話さないとあたしはダメだと思う。ここ一週間ずっと凪沙を見てきたけど、ずっとあいつの事考えてただろ?このままじゃ、後悔すると思う」
ちさきちゃんは私の目を見て訴えかけてくる。
私もずっと涼ちゃんと話したいと思っていた。でも、ずっと先延ばしにしてしまって結局明日涼ちゃんがアメリカに行ってしまうという所まできてしまっていた。
もう迷っている暇さえない。
会いに行こう。
「私……涼ちゃんに会いに行く」
ちさきちゃんがニッと笑った。
私は生徒会準備室を飛び出した。一度教室に戻り広げたままのお弁当箱を鞄にしまって再び教室を出た。
廊下を進んでいくと、ちさきちゃんと亜紀ちゃんがちょうど教室に戻ってくるところに出くわし、頑張れよっと声をかけられる。
もう迷わない。涼ちゃんとちゃんと話をする。私の気持ちを伝える。
このままお別れするなんて絶対後悔をする。
私は電車に飛び乗った。
涼ちゃんの暮らしている家はわからないけれど、美月さんのところに行けば涼ちゃんに会わせてくれるかもしれない。ずっと話をあやふやにされ続けていたが、アメリカに行くことを黙っているくらいだ。何かしらの理由はあるのかもしれない。
今はお昼を過ぎてお店のピークは去った後、お店にはお客様が数名いるだけで平和な空気を漂わせている。
昼のアルバイトの子がテーブルを拭いて回っている。美月さんの姿は見えないがキッチンにいるはずだ。
カランと扉を開けて中に入った。
キッチンからいらっしゃいませ~といつもの美月さんの声が聞こえた。アルバイトのお姉さんが私に気づいて軽く手を振ってきた。
お店の奥に入っていくと、目を丸くして驚いた様子を見せる美月さんがいた。
「え?凪沙ちゃん?どうしたの?学校は??」
「聞きました。涼ちゃん、アメリカに行くんですか?」
美月さんが驚いた表情のまま口を閉ざした。
「どうして何も言ってくれなかったんですか?」
「……それは……涼が言わないでって……」
私に知られたら無理にでも会いに行こうとするからだろう。やっぱり避けられていたということ……
「どうして涼ちゃんはアメリカに行くんですか?」
「ちょ、ちょっと待って。流石にここだと話が聞こえちゃうから、休憩室に……」
私は美月さんに連れられて休憩室兼更衣室に入った。
扉を閉めた美月さんが振り返り私を見つめてくる。少し困ったような表情をしている。
「涼は父親のところで一緒に暮らす為にアメリカに行くの」
「それは知っています。涼ちゃんは自分の意思でアメリカに行くことにしたんですか?」
今まで一緒に過ごしてきて、一度もアメリカに行きたいなどという話は出てこなかった。それなのに急に涼ちゃんに避けられるようになり、父親の元に行くという話が出てきた。
「それは………今より良い暮らしができるし、父親の所で生活した方が将来的にも良いのよ」
「それって涼ちゃんの意思は入っているんですか?」
美月さんは視線を逸らした。
「もしかして、美月さんがそうしろって言ったんですか?」
涼ちゃんの気持ちを無視して美月さんが無理やりそうしろと言ったのではないのか。高校生の私たちはもう大人と子供の中間地点にいる。自分の事は自分で決められるように成長をしている。
視線を逸らしたまま何も言ってこない美月さんに私は怒りがこもった声を出してしまった。
「そんなのただの親のエゴじゃないですか……」
逸らしていた視線が再び私に戻りきつく睨まれる。
「あなたに何がわかるのよ!!子供の幸せを願わない親はいないわ!!」
「アメリカに行って、良い暮らしができて、将来的にも良いからってそれで涼ちゃんは幸せなんですか!?誰も友達もいない別の国に行って辛かったり戸惑ったりするんじゃないんですか?涼ちゃんはそこに行きたいって言ったんですか!?」
私に言い返されて言葉が詰まる美月さんは私を睨みながら小さく言葉に出した。
「そんなの最初だけよ……慣れたら友達だっていくらでもできるわ……」
「美月さんは………寂しくないんですか?」
こんなに涼ちゃんの事を想っているのに寂しくないわけないですよね?
「使用していない物を保管している場所ですね」
「物置じゃん!!」
生徒会室ほど広くない場所に棚が並べられ、いつか見たようなポスターやら看板やらが乱雑に置かれている場所に4人で入った。掃除はされているみたいで埃っぽくはない。
「話が長くなるようでしたら、別の場所にしますが……」
「あーいや、長くはならないと……思う」
「悠木涼さんの話でしたね?」
「そう。………あいつマジで学校辞めるの?」
要ちゃんとちさきちゃんが対峙している後で私と亜紀ちゃんが静かに話を聞く。
「事実です」
要ちゃんは淡々と答える。亜紀ちゃんも声色に強弱をつけないで淡々と話すタイプの子だけど、要ちゃんの場合は同じ回答をしていても、確信めいたものを感じる強めの回答なところは違う部分だ。
「なんで辞めるの?」
「………詳しくはわかりません。ただ、父親の住むアメリカに行くということは本当です」
最近まで4人でダブルデートをしたり、お昼を一緒に食べたりしていた友達が何も言わずにいなくなって、連絡も取れなくなるなんて辛いし、寂しい、悲しい。色んな感情が湧いてくる。
要ちゃんが私を心配そうに見る。
私は何も言えず俯いた。
「いつ?いつアメリカに行くの?」
要ちゃんは少し戸惑いつつ、口を開いた。
「明日」
みんなが一斉に要ちゃんを見た。
「……明日?」
誰が言ったのか、私が言ったのかわからないが呟きが聞こえた。
「明日の飛行機だそうです。これは今朝方知ったんです。こんなに早いとは思わなくて……」
「明日って……凪沙……どうする?時間ないよ。あいつとちゃんと話さないとあたしはダメだと思う。ここ一週間ずっと凪沙を見てきたけど、ずっとあいつの事考えてただろ?このままじゃ、後悔すると思う」
ちさきちゃんは私の目を見て訴えかけてくる。
私もずっと涼ちゃんと話したいと思っていた。でも、ずっと先延ばしにしてしまって結局明日涼ちゃんがアメリカに行ってしまうという所まできてしまっていた。
もう迷っている暇さえない。
会いに行こう。
「私……涼ちゃんに会いに行く」
ちさきちゃんがニッと笑った。
私は生徒会準備室を飛び出した。一度教室に戻り広げたままのお弁当箱を鞄にしまって再び教室を出た。
廊下を進んでいくと、ちさきちゃんと亜紀ちゃんがちょうど教室に戻ってくるところに出くわし、頑張れよっと声をかけられる。
もう迷わない。涼ちゃんとちゃんと話をする。私の気持ちを伝える。
このままお別れするなんて絶対後悔をする。
私は電車に飛び乗った。
涼ちゃんの暮らしている家はわからないけれど、美月さんのところに行けば涼ちゃんに会わせてくれるかもしれない。ずっと話をあやふやにされ続けていたが、アメリカに行くことを黙っているくらいだ。何かしらの理由はあるのかもしれない。
今はお昼を過ぎてお店のピークは去った後、お店にはお客様が数名いるだけで平和な空気を漂わせている。
昼のアルバイトの子がテーブルを拭いて回っている。美月さんの姿は見えないがキッチンにいるはずだ。
カランと扉を開けて中に入った。
キッチンからいらっしゃいませ~といつもの美月さんの声が聞こえた。アルバイトのお姉さんが私に気づいて軽く手を振ってきた。
お店の奥に入っていくと、目を丸くして驚いた様子を見せる美月さんがいた。
「え?凪沙ちゃん?どうしたの?学校は??」
「聞きました。涼ちゃん、アメリカに行くんですか?」
美月さんが驚いた表情のまま口を閉ざした。
「どうして何も言ってくれなかったんですか?」
「……それは……涼が言わないでって……」
私に知られたら無理にでも会いに行こうとするからだろう。やっぱり避けられていたということ……
「どうして涼ちゃんはアメリカに行くんですか?」
「ちょ、ちょっと待って。流石にここだと話が聞こえちゃうから、休憩室に……」
私は美月さんに連れられて休憩室兼更衣室に入った。
扉を閉めた美月さんが振り返り私を見つめてくる。少し困ったような表情をしている。
「涼は父親のところで一緒に暮らす為にアメリカに行くの」
「それは知っています。涼ちゃんは自分の意思でアメリカに行くことにしたんですか?」
今まで一緒に過ごしてきて、一度もアメリカに行きたいなどという話は出てこなかった。それなのに急に涼ちゃんに避けられるようになり、父親の元に行くという話が出てきた。
「それは………今より良い暮らしができるし、父親の所で生活した方が将来的にも良いのよ」
「それって涼ちゃんの意思は入っているんですか?」
美月さんは視線を逸らした。
「もしかして、美月さんがそうしろって言ったんですか?」
涼ちゃんの気持ちを無視して美月さんが無理やりそうしろと言ったのではないのか。高校生の私たちはもう大人と子供の中間地点にいる。自分の事は自分で決められるように成長をしている。
視線を逸らしたまま何も言ってこない美月さんに私は怒りがこもった声を出してしまった。
「そんなのただの親のエゴじゃないですか……」
逸らしていた視線が再び私に戻りきつく睨まれる。
「あなたに何がわかるのよ!!子供の幸せを願わない親はいないわ!!」
「アメリカに行って、良い暮らしができて、将来的にも良いからってそれで涼ちゃんは幸せなんですか!?誰も友達もいない別の国に行って辛かったり戸惑ったりするんじゃないんですか?涼ちゃんはそこに行きたいって言ったんですか!?」
私に言い返されて言葉が詰まる美月さんは私を睨みながら小さく言葉に出した。
「そんなの最初だけよ……慣れたら友達だっていくらでもできるわ……」
「美月さんは………寂しくないんですか?」
こんなに涼ちゃんの事を想っているのに寂しくないわけないですよね?
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