【本編完結】お互いを恋に落とす事をがんばる事になった

シャクガン

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12月24日(1)

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ちさきちゃんが購買で買ってきたやきそばパンの包装を開けた。
隣にはお弁当箱の蓋を開けて箸を取り出している亜紀ちゃんもいる。

涼ちゃんが学校に来なくなって三日目。私は涼ちゃんのお弁当を作ってこなかった。
渡す相手が学校に来ていないのに作ってきても意味がない。

「今日も悠木涼は学校に来てないのか……」
「そうみたい」

ちさきちゃんはやきそばパンに齧り付いてミルクティーを一口の飲んで、私を見る。

「美月さんから何も言われてないの?」
「………」

小さく頷いて自分のお弁当を見つめて黙り込む私に困ったような顔をした。
要ちゃんとの話をしてもいいものか少し悩んだが、黙っていてもいずれは知られる話だと思うし、涼ちゃんと仲の良い2人だから話さないのもしのびなく私は口を開いた。

「一昨日、要ちゃんから電話があって……」
「要ちゃんって龍皇子?」

「うん……涼ちゃんが学校を退学するって……」

「………はぁ!?!?た、退学!?!?」
「ちょっ、声!大きい……」

机を叩いて立ち上がったちさきちゃんは、クラスメイト達の視線をいっぺんに受けてなんでもないです~と言って静かに着席をした。

「凪沙さん。それって本当なんですか?」

声をひそめて亜紀ちゃんは尋ねてきた。

「生徒会の顧問の先生が言ってたみたいだから、多分……」
「………どういうことだよそれ……なんで辞めるの?」

ちさきちゃんは眉を顰めた。
誰も涼ちゃんから直接そう言う話をされたわけでもなくて、本人以外から聞く話に少なからず不満が出ている。友達だと思っていたのになんの相談もなく辞める事実だけが他の人から伝わってきて戸惑いを隠せない。

「私も詳しくはわからなくて……要ちゃんが教えてくれることだけなんだけど……要ちゃんが色々と調べたみたいで、涼ちゃん……アメリカに行くらしい」

「あ、アメリカ?」
「どうしてですか?」

昨日も要ちゃんから連絡が来て、涼ちゃんの事を色々と調べたと言う話を聞いた。そこで話していたのがアメリカに行くと言う話。

「父親がいるみたい」

「なんで何も言ってこないんだよ……あいつは」

ちさきちゃんはついに片手で頭を抱えた。

「それで美月さんは何も言ってないんですか?」

亜紀ちゃんはちさきちゃんが最初にした質問をまた繰り返した。
当然だと思う。涼ちゃんの母親である美月さんは知っているはずなのに、バイトで会う私にすら涼ちゃんの話を全くしてこない。逆に話題にしないよう避けられているようにも思う。

ちさきちゃんは亜紀ちゃんに手のひらを出した。
亜紀ちゃんはそれを見て、ポケットに手を入れて携帯を取り出しちさきちゃんの手のひらに乗せた。

「悠木涼、いつアメリカに行くんだ?」
「わ、わからない……」

ちさきちゃんは亜紀ちゃんの携帯を操作して耳に当てる。

「今退学手続きしているなら、冬休み中か……その前とか……」

亜紀ちゃんが少し考えながらちさきちゃんの横顔を見つめる。
ちさきちゃんは携帯の発信音を聞きながらトントンと机を人差し指で叩いている。

「私も何回か涼ちゃんに連絡してるんだけど、全然連絡とれなくて……」

「やっぱり出ないか……」

携帯を亜紀ちゃんに渡して、ちさきちゃんは立ち上がった。
私と亜紀ちゃんはちさきちゃんを見上げる。

「龍皇子のクラス何組?」
「D組だけど……」

「ちょっと行ってくる」

そういうと食べかけのやきそばパンを机に残したまま教室の出入り口に向かった。
私も一口も食べていないお弁当箱に蓋をして慌てて立ち上がりちさきちゃんの後を追いかけた。


亜紀ちゃんもついてきて、3人でD組に向かった。

D組でも他のクラス同様ちらほらとクラスでお昼を食べている生徒で賑わっていて、全体を見渡したが要ちゃんは教室にはいないみたいだった。

「ねぇ」

ちさきちゃんは教室の入り口付近の机でお昼を食べている生徒に話しかけた。

「龍皇子どこにいるか知らない?」
「龍皇子さん?んーー。わからないかなー?いつもお昼は教室にいないけど、どこで食べてるか知らないんだよねぇ」
「あ、龍皇子さんなら生徒会室じゃね?生徒会副会長だからさ」

話しかけた生徒の向かいに座る生徒がおにぎりを片手に持ちながら話に加わってきた。

「サンキュ」

ちさきちゃんは片手をあげて再び廊下を歩き出す。その後ろを亜紀ちゃんと私がカルガモの子供のように追いかけていく。

大股で廊下を歩いていくちさきちゃんはその勢いのまま、階段を一段飛ばしで登った。三階にある生徒会室の前に到着すると、中から話し声が聞こえてくる。どうやら人はいるらしい。

コンコンコンと生徒会室をノックすると話し声が止んでこちらに向かってくる足音が聞こえてきた。

「はい?」

扉を開けて顔を覗かせたのは見たことのない女生徒でネクタイの色を見ると一年生みたいだ。

「龍皇子いる?」

ちさきちゃんは女生徒をチラッと見た後、肩越しに生徒会室の中を見る。

「何か御用でしょうか?」
「用があるから来たんだけど?」

一年生の後ろから現れた要ちゃんにちさきちゃんは目を鋭くした。

「あ、待って。ちさきちゃんごめんね。要ちゃん別に睨んでるわけじゃないからね?だから、睨み返さないでね?」
「そうなの?めっちゃ睨んでくると思ったら、元からか」

「凪沙様。私の為にありがとうございます。……それで皆様お揃いということは、悠木さんの話ってことでしょうね。少し移動しましょうか」

要ちゃんは生徒会室から出て扉を閉めた。

私たちは要ちゃんの後をついて歩き、すぐ隣の生徒会準備室に入った。






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