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12月23日 Side涼2
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日が沈んだ後の公園は守ってくれる壁もなく時折吹く風で冷え切っていた。
私と龍皇子さんの今の関係性に似ている。
ブランコにそれぞれ座って、私は足で軽くブランコをブラブラと揺らす。2人の間に冷たい風が通り過ぎていく。
ブルっと体が震える。軽装で出てきてしまったので冷たい風が吹くたびに肌をさすように冷たい。
家から近い公園に移動をしてきたのはいいが、無言の時間だけが過ぎていく。
「龍皇子さん。寒くない?お店とかに入らない?」
「いえ、寒くないので大丈夫です」
龍皇子さんの格好は良質の厚手のコートを羽織っていて暖かそうだった。
私が寒いんだけど……などと言えるはずもなく、静かに話し始めるのを待つしかなかった。
「悠木さん」
「は、はい!」
声が裏返った。
何を言われて、何をされるのか……私は隣で姿勢良くただブランコに座っている龍皇子さんを見る。
「今回の退学の件であなたの周りのことを色々調べさせていただきました」
「え……っと……」
「離婚した父親の住むアメリカに行かれるみたいですね?」
「そこまでわかるの!?」
「えぇ。私の情報網を甘く見ない方が良いですよ」
「………」
龍皇子さんが不敵に笑った。
敵にまわった時が恐ろしすぎる……今は敵か味方か測りかねるが……
「家庭の事情……ということでしょうか。そういうことであれば私がとやかくいう立場ではありませんし、仕方のないことだとは思いますが」
「………」
私がアメリカに行く事までは調べたらわかった事だろう、それでも理由まではわからなかったみたいだ。
「一つ聞きたい事があります」
「何?」
「あなたはアメリカに行きたいんですか?」
「………」
ブランコがキィと音を立てた。
私はアメリカに行きたいわけではない。日本で母と一緒に暮らし、凪沙達と一緒に学校に通いたい。それでも、母にとって私が邪魔になるのなら……私がいない方が幸せになるのなら、私はここを離れるしかない。
「そうですか……」
何も言っていない私の顔色を見て、龍皇子さんはわかったように呟いた。
「私たちはまだ高校生です。子供の私たちが親の都合で振り回されるのは仕方のないこと……」
「………」
そう。私がアメリカに行かなきゃいけないのは仕方ないことで、私が我儘を言ってもどうにもならない。1人でなんでもできる大人にまだなれない。1人で生きていくには大人の力、親の力がまだ必要な立場だ。
龍皇子さんは私がアメリカに行くことを引き止めるわけではないみたいで、受け入れてくれていた。
「それでも……」
私に鋭い目つきで睨んでくる。目つきが悪い龍皇子さんが多分本当に睨んできている視線だ。怖い……
「凪沙様と会わない理由にはなりません。誰にも言わないで学校を辞めて、勝手にアメリカに行くつもりだったんですか?」
「…………」
「凪沙様の連絡を無視して、バイト終わりに凪沙様を家まで送り届ける約束はどうしたんですか?凪沙様を守ると宣言してたのは誰ですか!?」
いつの間にか立ち上がり、私の前に立って上から見下ろす視線が私に突き刺さる。
徐々に言葉に熱がこもって大きくなる声量が公園に響いていく。
「仕方ないんじゃ……」
弱々しく龍皇子さんに言う。
「アメリカに行く事は仕方ないことかもしれませんが、行くまでは約束を守るべきではないんですか?」
龍皇子さんに強く睨まれ、私は視線が足元に落ちていった。
「な、凪沙には……会えない……」
「どうしてですか!?」
落ちていた視線を上げる。睨んでくる視線に負けないよう龍皇子さんの瞳を見つめた。
「私の気持ち知ってるでしょ!?辛いんだよ!話すと絶対気持ちが揺れるし、会うと絶対離れたくなくなる!悲しいお別れなんてしたくないじゃん!!」
つい龍皇子さんに向けて声を荒げてしまう。
こんなのはただの八つ当たりだ。
アメリカに行きたくなくて、凪沙に会いたくて、でも誰にも言えずに心に仕舞い込んだ気持ちを龍皇子さんにぶつけている。
「今でも悠木さんと話せなくて凪沙様は悲しんでいます」
龍皇子さんは寂しそうに眉を凹ませた。
凪沙のことを思っているからこそ、私が凪沙を悲しませているのが許せないのだろう。
「それでも……」
私は立ち上がり龍皇子さんを見る。
見上げるようにしても私を鋭く睨んでくる。
「私は凪沙にはもう会わない。約束を守れなかったのはごめん……」
「………」
何も言わずただ私を見つめてくる。
軽く頭を下げて龍皇子さんの隣を通り過ぎていく。
公園を出て家までの道を歩いて戻る。白い息がふわっと口から出ていくが、体はだいぶ冷えていた。
ポケットに入れた手は冷たくなっている。
ブルブルと携帯が震えて、ポケットから引っ張り出した携帯の画面には何回目かわからないが凪沙の名前が表示されている。
「凪沙………」
ぽそっと口の中でつぶやいてから、携帯を再びポケットに突っ込んだ。
会うと余計辛くなるだけなら、もう会わない方が良い。
凪沙と仲良くなったことを後悔したくないから、今なら引き返せると思うから、だからもう凪沙には会わない。
また私は心の奥底へと気持ちを仕舞い込んだ。
私と龍皇子さんの今の関係性に似ている。
ブランコにそれぞれ座って、私は足で軽くブランコをブラブラと揺らす。2人の間に冷たい風が通り過ぎていく。
ブルっと体が震える。軽装で出てきてしまったので冷たい風が吹くたびに肌をさすように冷たい。
家から近い公園に移動をしてきたのはいいが、無言の時間だけが過ぎていく。
「龍皇子さん。寒くない?お店とかに入らない?」
「いえ、寒くないので大丈夫です」
龍皇子さんの格好は良質の厚手のコートを羽織っていて暖かそうだった。
私が寒いんだけど……などと言えるはずもなく、静かに話し始めるのを待つしかなかった。
「悠木さん」
「は、はい!」
声が裏返った。
何を言われて、何をされるのか……私は隣で姿勢良くただブランコに座っている龍皇子さんを見る。
「今回の退学の件であなたの周りのことを色々調べさせていただきました」
「え……っと……」
「離婚した父親の住むアメリカに行かれるみたいですね?」
「そこまでわかるの!?」
「えぇ。私の情報網を甘く見ない方が良いですよ」
「………」
龍皇子さんが不敵に笑った。
敵にまわった時が恐ろしすぎる……今は敵か味方か測りかねるが……
「家庭の事情……ということでしょうか。そういうことであれば私がとやかくいう立場ではありませんし、仕方のないことだとは思いますが」
「………」
私がアメリカに行く事までは調べたらわかった事だろう、それでも理由まではわからなかったみたいだ。
「一つ聞きたい事があります」
「何?」
「あなたはアメリカに行きたいんですか?」
「………」
ブランコがキィと音を立てた。
私はアメリカに行きたいわけではない。日本で母と一緒に暮らし、凪沙達と一緒に学校に通いたい。それでも、母にとって私が邪魔になるのなら……私がいない方が幸せになるのなら、私はここを離れるしかない。
「そうですか……」
何も言っていない私の顔色を見て、龍皇子さんはわかったように呟いた。
「私たちはまだ高校生です。子供の私たちが親の都合で振り回されるのは仕方のないこと……」
「………」
そう。私がアメリカに行かなきゃいけないのは仕方ないことで、私が我儘を言ってもどうにもならない。1人でなんでもできる大人にまだなれない。1人で生きていくには大人の力、親の力がまだ必要な立場だ。
龍皇子さんは私がアメリカに行くことを引き止めるわけではないみたいで、受け入れてくれていた。
「それでも……」
私に鋭い目つきで睨んでくる。目つきが悪い龍皇子さんが多分本当に睨んできている視線だ。怖い……
「凪沙様と会わない理由にはなりません。誰にも言わないで学校を辞めて、勝手にアメリカに行くつもりだったんですか?」
「…………」
「凪沙様の連絡を無視して、バイト終わりに凪沙様を家まで送り届ける約束はどうしたんですか?凪沙様を守ると宣言してたのは誰ですか!?」
いつの間にか立ち上がり、私の前に立って上から見下ろす視線が私に突き刺さる。
徐々に言葉に熱がこもって大きくなる声量が公園に響いていく。
「仕方ないんじゃ……」
弱々しく龍皇子さんに言う。
「アメリカに行く事は仕方ないことかもしれませんが、行くまでは約束を守るべきではないんですか?」
龍皇子さんに強く睨まれ、私は視線が足元に落ちていった。
「な、凪沙には……会えない……」
「どうしてですか!?」
落ちていた視線を上げる。睨んでくる視線に負けないよう龍皇子さんの瞳を見つめた。
「私の気持ち知ってるでしょ!?辛いんだよ!話すと絶対気持ちが揺れるし、会うと絶対離れたくなくなる!悲しいお別れなんてしたくないじゃん!!」
つい龍皇子さんに向けて声を荒げてしまう。
こんなのはただの八つ当たりだ。
アメリカに行きたくなくて、凪沙に会いたくて、でも誰にも言えずに心に仕舞い込んだ気持ちを龍皇子さんにぶつけている。
「今でも悠木さんと話せなくて凪沙様は悲しんでいます」
龍皇子さんは寂しそうに眉を凹ませた。
凪沙のことを思っているからこそ、私が凪沙を悲しませているのが許せないのだろう。
「それでも……」
私は立ち上がり龍皇子さんを見る。
見上げるようにしても私を鋭く睨んでくる。
「私は凪沙にはもう会わない。約束を守れなかったのはごめん……」
「………」
何も言わずただ私を見つめてくる。
軽く頭を下げて龍皇子さんの隣を通り過ぎていく。
公園を出て家までの道を歩いて戻る。白い息がふわっと口から出ていくが、体はだいぶ冷えていた。
ポケットに入れた手は冷たくなっている。
ブルブルと携帯が震えて、ポケットから引っ張り出した携帯の画面には何回目かわからないが凪沙の名前が表示されている。
「凪沙………」
ぽそっと口の中でつぶやいてから、携帯を再びポケットに突っ込んだ。
会うと余計辛くなるだけなら、もう会わない方が良い。
凪沙と仲良くなったことを後悔したくないから、今なら引き返せると思うから、だからもう凪沙には会わない。
また私は心の奥底へと気持ちを仕舞い込んだ。
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