66 / 129
12月23日 Side涼1
しおりを挟む
「うん……うん………わかった………じゃあまた」
父親との通話を切り携帯の画面を見る。
何件かの不在着信の名前を心の中だけで呟いた。
未読のメッセージも溜まっている。でも、開けられずにいる。
開けてしまったら揺らぎそうな決意。未読のメッセージが溜まれば溜まるほど申し訳なさが募っていく。
みんなには何も言わずに学校に行かなくなった。
色々聞かれるのが面倒だったっていうのもあるし、別れが辛くなるっていうのもある。それに他の人に伝えてしまったら、凪沙にも伝わってしまうだろうから……
遠くから見ていた存在が、こんなに近い存在になれただけでも良かったじゃないか……良い思い出ができたと割り切ればいい……
高坂から凪沙が彼氏と別れて喫茶みづきでバイトをすると聞いて、何かのきっかけで“また“話すタイミングができると思った。
母親に頼まれて店番という名目ができた時、休憩室で凪沙と会えた。
そこから学校で話す機会もできて、自然な流れで凪沙を家まで送るという2人だけの時間も作れた。
凪沙は男の子と付き合うタイプの子だから、ただの友達になれるだけで良かった。
――頑張るだけ無駄だなんて私は思ってほしくない
凪沙からそんな言葉を聞いて、昔の苦い過去を思い出した私は少し困らせてやろうという気持ちから、お互いを恋に落とそうと提案した。
実際困った様子をしていたけど、凪沙は拒否をしてこなかった。凪沙にもう少し近づけるチャンスだと思った。
私の我儘に付き合ってくれて、お弁当まで作ってくれるようになって、凪沙のことを知っていくほど思いは強くなった。
少し天然だった。かなりの人タラシだった。優しかった。人一倍頑張り屋だった。あの瞳に見つめられるとドキドキした。冷え性な指先だった。頭を撫でると嬉しそうだった。抱きしめると凪沙の髪から良い匂いがした。笑うと可愛かった。
可能性がない相手を遠くから見ているだけだったのが、いつの間にか恋という気高い山から落ちていった。
私に振り向いて欲しかった。私を意識して欲しくなってしまった。
もしかしたら嫌われるかもしれないという不安もあったけど、強引に凪沙の唇を奪った。
ちょっと暴走してしまったところはあるけど、嫌われなかった、気持ちよかったと言われた時、もしかしたらと希望が生まれた。
誰にも凪沙を渡したくはなかった。だから全力で守ると龍皇子さんに誓ったのに……
私の過去が邪魔をする。
母さんにも私は幸せになってほしいと願っている。
片付けられた部屋を見る。元々荷物の少なかった部屋は更に殺風景になっている。
明後日は大きめのバック一つで出ていくつもりだ。
壁にはもう袖を通さない制服がかけられている。
あと一年と少し着る予定だった制服はまだ綺麗なままだ。
冬休みに入る前に父親と共にアメリカにいくことになった。日本での仕事が片付いたらしい。
自分の部屋から出る。
家には私の他に誰もいない。
『疲れたのよ。もう……最近さらに忙しくなってきちゃったし、ここまで大きくなるまで育てたんだから十分じゃない。私も好きに遊びたいわよ。でも、あなたがいると頑張って働かないといけないじゃない?ずっとやってきたんだからもう私も休もうと思うのよ子育て。解放されたいのよ』
何度も母さんの言葉を思い出す。
もう私のことは邪魔みたいだった。
胸が苦しくなる。辛い気持ちでぎゅっと心臓を掴まれた感覚だ。
足早に廊下に出て、玄関で靴を履く。
玄関の扉を乱暴に開けて外に出た。12月の冷たい風が今の私にはちょうど良く感じる。
ポケットに携帯と小銭だけ。
適当にぶらつこうかと軽装の格好だ。家に1人でいるのは辛かった。
マンションのフロアに出ると見たことのある人物が立っていた。
「りゅ、龍皇子さん………」
「お久しぶりです。悠木さん」
ゆっくりとお辞儀をしてくる龍皇子さんは顔は笑っているが、何か周りにドス黒いオーラがチラチラと見えていて、多分、私、死んじゃう
恐怖に全身に鳥肌が立つ。
「大丈夫ですよ?悠木さん」
「え?」
「すこーしお説教……いえ、お話しするだけですので」
「い、今、お説教って……」
「お話しするだけですよ?」
にこりと微笑んでいるが、全く目元が笑ってない。
そりゃそう。凪沙を守るって誓ったやつの誓いが裏切られた。
龍皇子さんが大切にしている幼馴染。慕っている幼馴染。の事だから私はただでは済まされないだろう。
何をされるのか恐怖を感じながら龍皇子さんに近づいていく。
父親との通話を切り携帯の画面を見る。
何件かの不在着信の名前を心の中だけで呟いた。
未読のメッセージも溜まっている。でも、開けられずにいる。
開けてしまったら揺らぎそうな決意。未読のメッセージが溜まれば溜まるほど申し訳なさが募っていく。
みんなには何も言わずに学校に行かなくなった。
色々聞かれるのが面倒だったっていうのもあるし、別れが辛くなるっていうのもある。それに他の人に伝えてしまったら、凪沙にも伝わってしまうだろうから……
遠くから見ていた存在が、こんなに近い存在になれただけでも良かったじゃないか……良い思い出ができたと割り切ればいい……
高坂から凪沙が彼氏と別れて喫茶みづきでバイトをすると聞いて、何かのきっかけで“また“話すタイミングができると思った。
母親に頼まれて店番という名目ができた時、休憩室で凪沙と会えた。
そこから学校で話す機会もできて、自然な流れで凪沙を家まで送るという2人だけの時間も作れた。
凪沙は男の子と付き合うタイプの子だから、ただの友達になれるだけで良かった。
――頑張るだけ無駄だなんて私は思ってほしくない
凪沙からそんな言葉を聞いて、昔の苦い過去を思い出した私は少し困らせてやろうという気持ちから、お互いを恋に落とそうと提案した。
実際困った様子をしていたけど、凪沙は拒否をしてこなかった。凪沙にもう少し近づけるチャンスだと思った。
私の我儘に付き合ってくれて、お弁当まで作ってくれるようになって、凪沙のことを知っていくほど思いは強くなった。
少し天然だった。かなりの人タラシだった。優しかった。人一倍頑張り屋だった。あの瞳に見つめられるとドキドキした。冷え性な指先だった。頭を撫でると嬉しそうだった。抱きしめると凪沙の髪から良い匂いがした。笑うと可愛かった。
可能性がない相手を遠くから見ているだけだったのが、いつの間にか恋という気高い山から落ちていった。
私に振り向いて欲しかった。私を意識して欲しくなってしまった。
もしかしたら嫌われるかもしれないという不安もあったけど、強引に凪沙の唇を奪った。
ちょっと暴走してしまったところはあるけど、嫌われなかった、気持ちよかったと言われた時、もしかしたらと希望が生まれた。
誰にも凪沙を渡したくはなかった。だから全力で守ると龍皇子さんに誓ったのに……
私の過去が邪魔をする。
母さんにも私は幸せになってほしいと願っている。
片付けられた部屋を見る。元々荷物の少なかった部屋は更に殺風景になっている。
明後日は大きめのバック一つで出ていくつもりだ。
壁にはもう袖を通さない制服がかけられている。
あと一年と少し着る予定だった制服はまだ綺麗なままだ。
冬休みに入る前に父親と共にアメリカにいくことになった。日本での仕事が片付いたらしい。
自分の部屋から出る。
家には私の他に誰もいない。
『疲れたのよ。もう……最近さらに忙しくなってきちゃったし、ここまで大きくなるまで育てたんだから十分じゃない。私も好きに遊びたいわよ。でも、あなたがいると頑張って働かないといけないじゃない?ずっとやってきたんだからもう私も休もうと思うのよ子育て。解放されたいのよ』
何度も母さんの言葉を思い出す。
もう私のことは邪魔みたいだった。
胸が苦しくなる。辛い気持ちでぎゅっと心臓を掴まれた感覚だ。
足早に廊下に出て、玄関で靴を履く。
玄関の扉を乱暴に開けて外に出た。12月の冷たい風が今の私にはちょうど良く感じる。
ポケットに携帯と小銭だけ。
適当にぶらつこうかと軽装の格好だ。家に1人でいるのは辛かった。
マンションのフロアに出ると見たことのある人物が立っていた。
「りゅ、龍皇子さん………」
「お久しぶりです。悠木さん」
ゆっくりとお辞儀をしてくる龍皇子さんは顔は笑っているが、何か周りにドス黒いオーラがチラチラと見えていて、多分、私、死んじゃう
恐怖に全身に鳥肌が立つ。
「大丈夫ですよ?悠木さん」
「え?」
「すこーしお説教……いえ、お話しするだけですので」
「い、今、お説教って……」
「お話しするだけですよ?」
にこりと微笑んでいるが、全く目元が笑ってない。
そりゃそう。凪沙を守るって誓ったやつの誓いが裏切られた。
龍皇子さんが大切にしている幼馴染。慕っている幼馴染。の事だから私はただでは済まされないだろう。
何をされるのか恐怖を感じながら龍皇子さんに近づいていく。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる