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12月22日(2)
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「もしもし。要ちゃん?どうしたの?こんな時間に」
『凪沙様。夜分遅くに申し訳ございません』
「そんなの気にしなくていいよ~。あと、その言葉遣いも嫌だなぁ」
私の小学校からの幼馴染の龍皇子要ちゃんは良いとこのお嬢様なので、私にまで“様“付けしてくるちょっと変わった子だ。でも、距離感感じるからこうやってたまに注意してる。
『あ、え、えっと……凪沙様それはちょっと……』
「……要ちゃん?」
ちょっと低めの声を出した。
『な、凪沙ちゃん……』
ふふーん。ちょっと嬉しくなって声には出さないけど笑った。
街灯が照らす家までの道を歩いていく。
「それで、どうしたの?珍しいよね?」
『あ!な、凪沙…ちゃんに早めにお伝えしたい事がありまして』
「伝えたいこと?」
『ええ。悠木涼さんについて』
「涼ちゃん?」
徐々に家が見えてポケットに入れてある鍵に手を伸ばした。
『悠木涼さんなのですが…………退学手続きが進められているようなのです』
「……退学?」
ポケットから取り出した鍵がチャリンと地面に落ちた。
「な、なに?それ?聞いてないよ?」
声が震えた。
『悠木涼さん自身も他の方にお話している様子はないので、もしかしたらと思い凪沙、ちゃんに連絡をさせていただきました』
涼ちゃんが……退学?だって美月さんは何も言ってなかったし……
「……それ本当なの?」
『ええ。私も今日初めて知りました。生徒会の顧問の先生が言っておられたので間違い無いかと』
震える手で鍵を掴む。
涼ちゃんだって何も言っていなかった。最近はまともに話すらできていなかった。
それでもバイト先の美月さんが、涼ちゃんのお母さんなら知らないはずない。なのに何も話すら出てこなかった。涼ちゃんの話も避けられている感じがした。
『これは憶測なのですが、もしかしたら学校にも、もう来られないかもしれません』
「え……」
『学校は今週で終わって冬休みに入りますので』
「あ……」
今週末から冬休みが始まる。学校はテストも終わり冬休みまでのカウントダウンに入って浮かれた生徒で溢れていた。私はそれどころではなかったので忘れていた。
「退学って……なんで?」
『そこまではわからないのでなんとも……転校ではなく退学というところが少し気になりますが』
「………」
家の鍵を開けて無言で自分の部屋に入った。
『凪沙様大丈夫ですか?』
要ちゃんの心配する声が遠くで聞こえる。
涼ちゃんが退学……
学校に通えなくなる理由……
私は色んな理由を考える、体調面の問題、家庭の問題、金銭的な問題。学校に通えなくなる理由なんて人それぞれあるだろう……
それでも、急に退学なんて……今まで一緒にいてそんなそぶり全くなかった。
体調面はバスケしてるくらい健康的だし、家庭も美月さんがいるので問題なさそう、金銭的?美月さんのお店はバイトを雇えるくらいの稼ぎは出ている訳で……
人間関係も友達の多い涼ちゃんには当てはまりそうにない。
理由が全く思い当たらない。
手に持っていた鞄を床に置いて、ベッドの端に座った。
『凪沙様……』
「要ちゃん教えてくれてありがとう」
『いえ、教えるくらいしか私にはできませんので』
「やっぱり涼ちゃんとちゃんとお話したい……」
『凪沙様……最近悠木さんとお話されている姿を見かけませんでしたね……』
「涼ちゃんと少し色々あって……避けられてるような気がするんだよね」
『あの悠木さんが凪沙様を避ける?……もしかしたらそれも退学の事があって凪沙様を避けていたって事でしょうか?』
「そうなのかな……美月さん……えっと、涼ちゃんのお母さんなんだけど、今日涼ちゃんのお見舞い行きたいって話した時会わせてもらえなかったんだよね」
美月さんも涼ちゃんも退学することを隠していた。
『何か事情がありそうですね……それでも、凪沙様を悲しませるようなことを悠木さんは……』
「か、要ちゃん?」
なんだか電話の向こうから不穏な空気を感じ取った。
『わかりました。この件ですが私も少しお手伝いをさせてもらいたいと思います』
「え?て、手伝い?」
『ちょっと悠木さんには失望を致しましたので、すこーしお説教をさせてもらって、きっと悠木さんと凪沙様の話す時間を確保させていただきます』
「あ、あの……えっと……」
幼馴染から発せらる黒いオーラが私の携帯から漏れ出ていた。
『大丈夫ですよ。凪沙様。凪沙様を悲しませるような人は私がお灸を据えてあげますので』
「そ、そこまでしなくても大丈夫だよ!?ちょっとお話しできたら良いだけだからね!?」
『大丈夫。任せてください』
「え、えぇ……」
こうなった要ちゃんは私には止められそうになかった。
通話終了ボタンを押す。
そのままポチポチと画面を操作して涼ちゃんのアドレスまで辿り着くと通話ボタンを押した。
電子音がなる携帯を耳にあて、涼ちゃんが出てくれることを願った。
発信音はいつまでも途切れる事なく鳴り続ける。
『凪沙様。夜分遅くに申し訳ございません』
「そんなの気にしなくていいよ~。あと、その言葉遣いも嫌だなぁ」
私の小学校からの幼馴染の龍皇子要ちゃんは良いとこのお嬢様なので、私にまで“様“付けしてくるちょっと変わった子だ。でも、距離感感じるからこうやってたまに注意してる。
『あ、え、えっと……凪沙様それはちょっと……』
「……要ちゃん?」
ちょっと低めの声を出した。
『な、凪沙ちゃん……』
ふふーん。ちょっと嬉しくなって声には出さないけど笑った。
街灯が照らす家までの道を歩いていく。
「それで、どうしたの?珍しいよね?」
『あ!な、凪沙…ちゃんに早めにお伝えしたい事がありまして』
「伝えたいこと?」
『ええ。悠木涼さんについて』
「涼ちゃん?」
徐々に家が見えてポケットに入れてある鍵に手を伸ばした。
『悠木涼さんなのですが…………退学手続きが進められているようなのです』
「……退学?」
ポケットから取り出した鍵がチャリンと地面に落ちた。
「な、なに?それ?聞いてないよ?」
声が震えた。
『悠木涼さん自身も他の方にお話している様子はないので、もしかしたらと思い凪沙、ちゃんに連絡をさせていただきました』
涼ちゃんが……退学?だって美月さんは何も言ってなかったし……
「……それ本当なの?」
『ええ。私も今日初めて知りました。生徒会の顧問の先生が言っておられたので間違い無いかと』
震える手で鍵を掴む。
涼ちゃんだって何も言っていなかった。最近はまともに話すらできていなかった。
それでもバイト先の美月さんが、涼ちゃんのお母さんなら知らないはずない。なのに何も話すら出てこなかった。涼ちゃんの話も避けられている感じがした。
『これは憶測なのですが、もしかしたら学校にも、もう来られないかもしれません』
「え……」
『学校は今週で終わって冬休みに入りますので』
「あ……」
今週末から冬休みが始まる。学校はテストも終わり冬休みまでのカウントダウンに入って浮かれた生徒で溢れていた。私はそれどころではなかったので忘れていた。
「退学って……なんで?」
『そこまではわからないのでなんとも……転校ではなく退学というところが少し気になりますが』
「………」
家の鍵を開けて無言で自分の部屋に入った。
『凪沙様大丈夫ですか?』
要ちゃんの心配する声が遠くで聞こえる。
涼ちゃんが退学……
学校に通えなくなる理由……
私は色んな理由を考える、体調面の問題、家庭の問題、金銭的な問題。学校に通えなくなる理由なんて人それぞれあるだろう……
それでも、急に退学なんて……今まで一緒にいてそんなそぶり全くなかった。
体調面はバスケしてるくらい健康的だし、家庭も美月さんがいるので問題なさそう、金銭的?美月さんのお店はバイトを雇えるくらいの稼ぎは出ている訳で……
人間関係も友達の多い涼ちゃんには当てはまりそうにない。
理由が全く思い当たらない。
手に持っていた鞄を床に置いて、ベッドの端に座った。
『凪沙様……』
「要ちゃん教えてくれてありがとう」
『いえ、教えるくらいしか私にはできませんので』
「やっぱり涼ちゃんとちゃんとお話したい……」
『凪沙様……最近悠木さんとお話されている姿を見かけませんでしたね……』
「涼ちゃんと少し色々あって……避けられてるような気がするんだよね」
『あの悠木さんが凪沙様を避ける?……もしかしたらそれも退学の事があって凪沙様を避けていたって事でしょうか?』
「そうなのかな……美月さん……えっと、涼ちゃんのお母さんなんだけど、今日涼ちゃんのお見舞い行きたいって話した時会わせてもらえなかったんだよね」
美月さんも涼ちゃんも退学することを隠していた。
『何か事情がありそうですね……それでも、凪沙様を悲しませるようなことを悠木さんは……』
「か、要ちゃん?」
なんだか電話の向こうから不穏な空気を感じ取った。
『わかりました。この件ですが私も少しお手伝いをさせてもらいたいと思います』
「え?て、手伝い?」
『ちょっと悠木さんには失望を致しましたので、すこーしお説教をさせてもらって、きっと悠木さんと凪沙様の話す時間を確保させていただきます』
「あ、あの……えっと……」
幼馴染から発せらる黒いオーラが私の携帯から漏れ出ていた。
『大丈夫ですよ。凪沙様。凪沙様を悲しませるような人は私がお灸を据えてあげますので』
「そ、そこまでしなくても大丈夫だよ!?ちょっとお話しできたら良いだけだからね!?」
『大丈夫。任せてください』
「え、えぇ……」
こうなった要ちゃんは私には止められそうになかった。
通話終了ボタンを押す。
そのままポチポチと画面を操作して涼ちゃんのアドレスまで辿り着くと通話ボタンを押した。
電子音がなる携帯を耳にあて、涼ちゃんが出てくれることを願った。
発信音はいつまでも途切れる事なく鳴り続ける。
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