【本編完結】お互いを恋に落とす事をがんばる事になった

シャクガン

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12月24日 Side涼4

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「はっ…はぁはぁ……」

誰もいないフロアに出て壁に手をついた。

上層階にあるホテルフロアだ。さすがにここなら見つからないだろうと思い、階段で登ってきた。
さすがにきつい……上がった息を壁に背をつけて整える。幸い誰も歩いている人はいないみたいだ。

凪沙がいた……

多分私を追いかけてきたんだ……どうやってここの場所を見つけたのか……私だって父さんに連れてこられるまでこのホテルの存在すら知らなかったのに。

正直、嬉しかった。

もう会うことはないと思っていた凪沙が私を追いかけてここまできてくれたから、でもそれ以上はダメだ。凪沙が目の前まで来て話して、笑顔を向けられたら……私は……

壁に預けていた背中を離してホテルの廊下を進んで、ホテルのフロントの横を抜けていく。

もう自分の部屋に戻ろう。

まだ凪沙は私のことを探しているかもしれない。うろちょろしていてはまた凪沙と出くわしかねない。夕食の時間まで部屋で大人しくしていることにする。

エレベーターのボタンを押して降りてきているエレベーターの数字を見上げる。

足音が近づいてきているのが聞こえた。ここのホテルの利用者か真っ黒なスーツが視界の端に見える。

チーンという音と共にエレベーターの扉が開いた。私が乗り込んでスーツ姿の人も後ろからついてきた。かなり大柄な男のようだ。

ボタンを押そうと振り返り手を伸ばす前に男が先にエレベーターのボタンを押して私が押そうとしているのを遮った。

大柄な男はボタンの前から退けようとはせず、そのまま“閉“ボタンを男は押した。

「すみません。あの、」

上昇していくエレベーターの中、男が振り返り私を見下ろした。あれ?この人………

体格の良い男のスーツはパツパツしている。腕は太くスーツが今にも破れそうだ。
黒いサングラスをかけオールバックの黒髪、映画やドラマとかで見るボディガードの人みたいな出立ち。
前に凪沙がホテルに連れ込まれそうになったところを助けてくれた人だ。

「………」
「あ、あの……私……」

チーンとエレベーターが鳴り扉が開く。

「こちらです。悠木様」
「え?いや、私の部屋は……」

肩を軽く掴まれ、エレベーターを降りるよう促される。
エレベーターから降りると、ラウンジがあり宿泊用の部屋が並んでいる他の階とは少し違う造りのようだった。

黒いスーツを着た男が歩き出した。私はその背中を眺めていると、ふと視界に影が差した。
横を見ると黒いスーツがパツパツした男が立っていた。黒いサングラスにオールバックの黒髪。

「えっ!?!?」

先を歩く黒いスーツの男と隣にいる黒いスーツの男を交互に見比べる。

同一人物!?

そのくらい似ている。身長も体格も似ている。でも、よくよく見ると腕のパツパツ具合で言ったら先を歩く黒いスーツの男の方がパツパツしてそうだった。多分凪沙を助けてくれたのは先を歩く黒いスーツの男だろう。

「先をどうぞ」

多分先を歩いている黒いスーツを着た男についていくように言っているんだと思う。
歩き出せば、後ろに黒いスーツを着た男がピッタリと付いてきた。

もう、見た目がそっくりすぎるので先を歩いている多分凪沙を助けてくれた黒いスーツの男を“一号“、私の後に付いている黒いスーツを着た男を“二号“と勝手に名付けた。

前後挟まれる形でどこかに誘導されている私はもう逃げることはできないだろう。

“STAFF ONLY“と建てられた看板を通りすぎていく。勝手に入って大丈夫なんだろうか……でも、この一号と二号は龍皇子さんの関係者。ということはこのホテルが龍皇子家の何らかの関係があるホテルということなのかもしれない。

先を歩いていた一号が一つの扉の前で止まった。振り返り私が一号の横につくと扉を開け中に入るように視線を向けられる。

何も言われず促されるまま着いてきてしまったが、普通なら誘拐じみた行為。もしかしたら監禁や暴力的なことをされかねない。

恐る恐る中を伺うと並べられた机に椅子、ホワイトボードがあるだけの会議室のような場所だった。

一号に背中を押され中に入らされる。驚いて振り向くと一号が扉を閉めてそのまま扉を塞ぐように立っている。

「あの!なんでこんなところに連れてこられたんですか?私に何をするつもりなんですか!?」
「…………」

私の質問なんか耳に届いてないかのように、スーツの内ポケットから携帯を取り出し耳に当てた。

「はい。………確保いたしました。………予定通りに……はい。承知いたしました」

電話を切った一号がこちらを見た。

「お座りになってお待ちください」
「待つって何を?」

それ以上の言葉を言わず扉の前から動こうともせずパツパツのスーツの胸を張った。

何も答えてくれない上に何もすることがないので仕方なく言われた通り椅子に座った。

龍皇子さん関係の人なら身の危険はないと思うが、これから何が起こるか大体予想はついた。


――凪沙………


この後、ここに連れて来られるであろう人物を思い浮かべる。

君はすごい人をたらし込んでいるなと苦笑いを浮かべた。

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