【本編完結】お互いを恋に落とす事をがんばる事になった

シャクガン

文字の大きさ
99 / 129

あの日 Side涼2(中学生)

しおりを挟む
彼女はバス停まで到着すると時刻表を眺めて、携帯で時間を確認している。

「ねぇ、何時までに着けば間に合うの?」
「あ、えっと。集合時間が10時です」

うーん。と唸りながら時刻表と睨めっこをして、ギリギリ間に合いそうかな?とか呟いている。
立ってみてわかったけど、彼女の身長は私より随分と低かった。大人びた雰囲気があるし年上だと思うから、私より背の低い彼女の印象は可愛らしいお姉さんという感じに落ち着いた。

「多分、この後のバスに乗れば間に合うと思う!」
「たぶん……」

振り返って笑顔を見せた彼女は腰に手を当てて大丈夫!と胸を張った。たぶんとかギリギリとかちょっと怪しい部分が多いけど、いちいち仕草が可愛かったり笑顔が可愛かったりで、間に合わなかったとしてもいいやって思えるくらい気持ちが楽だった。



バスが到着して2人席に並んで座ると携帯が鳴った。
さっき先生に聞いてくると言って電話を切った同級生からだった。

慌てて電話を取って、できるだけ小声で話す。

「もしもし……」
『あ、先生に聞いてきたよ!6番のバスで⚪︎⚪︎行きに乗って途中の――』

「あーっと、もうバスに乗ったから……」
『え!?誰かに聞いたの?大丈夫?バス停降りてからちょっと距離あるんだけど……』

「多分大丈夫だから……今バスの中だから切るね」
『本当に?大丈夫?』

バスで電話するのはマナー違反なのですぐに切った。
通路側に座った彼女が「クラスメイト?」と聞いてきた。

「そうです。同じバスケ部で」
「バスケ部!だから身長高いんだね!練習試合か何か?」

私の身長が高いというよりかは彼女の身長が高くないからだと思うんだけど、そこは口を噤んだ。私はバスケ部の中ではそれほど大きい方ではない。平均か少し低いくらいの位置にいる。バスケをやるならもう少し身長があった方が良い方だと思う。

「バスケの練習試合があって、⚪︎×中学校に行かないといけなくて」
「練習試合かぁ。かっこいいね!スタメン?」

「一応……」

すごーい!と目を大きくさせてニコニコと笑った。

「あれでしょ?円陣くんで“頑張るぞー““おー!!“とかやるんでしょ?で、マネージャーが作ってくれたバスケットボール型のお守り持って試合するんだ!?それか、怪我で出場できなくなったチームメイトの写真を飾って団結力を結束させる」
「偏見がすごい……」

「えーやらないの?」
「あ、いや、円陣は組んだりします。あとお守りとか……」

「やっぱバスケットボール型のお守り?」
「普通です!普通のお守り……今日はちょっと忘れちゃいましたが」

「え?お守り忘れたの!?」

私はコクンと頷いた。

「それで駅前で迷子になっちゃたのか……」

そのせいかはわからないけど、集合場所を間違えたことは本当に焦った。
でも、そのおかげで今こうしてお姉さんが私が不安にならないように、明るく話しかけてくれるこの状況は私には嬉しかった。


バスの中でずっとお姉さんは私に話を振ってくれた。他愛もない話でいつからバスケ始めたの?だとか、私が下ろしたままにしている長い髪も邪魔にならないの?だとか、ポニーテールにして試合してるっていうと似合いそう!だとか言って終始笑いかけてくれた。

お姉さんが携帯を取り出して時間を確認する。

「次のバス停で降りてそこから歩くんだけど、今9時50分だからちょっと急がないとだね」
「え、あ、はい」

お姉さんとお話しするのはすごく楽しくてあっという間に降りるバス停に近づいてきていた。
もっと色々とお話をしたかった。

私も携帯を取り出して時間を確認するふりをする。連絡先とか交換してもいいのではないか、いや、でも見ず知らずの中学生に連絡先とか聞かれても嫌がられてしまうかもしれない。

「ちょっとごめんね?」
「え?」

お姉さんが私に近づいてきて手を伸ばした。

目の前にお姉さんの胸があり、ふわりと香る花のような香りが私の頭の中を沸騰させた。上昇する体温とドキドキと早まる鼓動、顔に熱が集まってくる。

お姉さんは窓側にある降車ボタンを押すと元の位置に戻っていった。

あー、彼氏さんが羨ましい。付き合うならこういう人がいいな……優しくて、可愛くて、良い匂いがして、髪もふわふわしてて触り心地が良さそう。笑顔も素敵で、あの茶色い瞳に見つめられたら……

お姉さんの横顔をじっと見つめていたら、私の視線に気づいたお姉さんが私をみて「大丈夫だよ」と微笑んだ。

茶色い瞳が私を捉えて、その瞳が私しか写していなくて、私だけをずっとみていて欲しいと思ってしまう。

この人には彼氏がいるのに。男の人が好きな女の子……私なんかがそんなことを思ってしまうのは迷惑がかかる。


私はポケットに携帯電話をしまった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる

まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」 父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。 清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。 なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。 学校では誰もが憧れる高嶺の花。 家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。 しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。 「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」 秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。 彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。 「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」 これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。 完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。 『著者より』 もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。 https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858

処理中です...