【本編完結】お互いを恋に落とす事をがんばる事になった

シャクガン

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12月30日 Side涼10

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話し終えて隣に座る凪沙を見つめた。

凪沙は驚いたような表情のまま私に色素の薄い茶色い瞳を向けている。

「あの時の子が……涼ちゃんだったの?」
「うん……覚えてる?」

「覚えてる……思い出した。あの辺じゃ見かけない学校のジャージ着ててすごく困ったような表情で、しゃがみ込んでたから気になって声をかけたの。ちょうど予定が無くなったから」
「あの時はありがとう。おかげで遅刻せずに試合にも出れたよ」

「そっか。良かった」

柔らかく微笑んだ凪沙はあの日のことを懐かしむように私を見ていた。

「ずっと黙っててごめんね。いつ言おうか迷ってたんだ」
「私も気付かなくてごめん。長い黒髪がすごく印象的だったから……」

凪沙は手に持っていたイケメンな猫を持ち上げて笑った。


「あの時も今もやっぱり“なんとなく君に似てるよね“」
「………」


思わず私は凪沙を抱きしめた。あの日、凪沙が声をかけてくれた事、走りにくいサンダルでも私の手を引いて学校まで連れて行ってくれた事、お守りがわりだとストラップをくれた事、ずっと私に笑いかけてくれた事、たった1時間くらいの出会いだったのにこうして覚えててくれた事が嬉しかった。

力強く抱きしめると、「苦しいよ涼ちゃん」と笑いながら抱きしめ返してくる。

あの時のお姉さんがこうして私の腕の中にいるんだと思うと心臓がどんどん速くなっていく。
凪沙が私の肩に頭を擦り寄せて、ふふと小さく笑った。

「気づいてたなら、もっと早くに声かけてくれれば良かったのに……高校2年の10月まで声かけられないなんて、涼ちゃんってもしかしてヘタレさんなの?」

痛いところをついてきた。高坂にもたまにヘタレなどと言われるけど、そんな事ないと思う。だって、声かけても凪沙が忘れてるかもしれないし、忘れられていたらちょっと、いやかなりへこむ自信がある。

今は恋人として付き合ってるから話せたけど……

そういうところがヘタレと呼ばれる所以なのか?

「今はもうヘタレじゃない!」
「そう?」

私の肩から顔を上げた凪沙が悪戯っぽい笑みを浮かべた。

そうやって私の事ヘタレだなんて言って、私の事煽ってるんじゃないだろうか。中2のあの時より成長したし、今は携帯で色んな検索ができるようになって、知識だっていっぱい得たんだから。

私は凪沙のシャツに手をかけた。ブラウスのボタンをポチッポチッと外す。

「え?ちょ、ちょっと涼ちゃん!?」

凪沙が慌てて私がボタンを外している手を掴んで止めた。

何?止めるの?凪沙が私の事ヘタレって言ったんだよ?そんな事ないのに……好きだっていう気持ちに気づいてからずっと我慢してきたんだ。

もう我慢しなくていいんだよね?だって恋人だもん。

「んぅ……んっ……」

凪沙の柔らかい唇に吸い付いていく。握られている手がきゅっと強くなって抵抗されるかなと思ったけど、啄むように繰り返し何度も唇を押し付けると、強く握られていた手が緩んでいった。

ぺろっと舌を出して唇を舐めた。

「はっ……」

閉じていた眼が驚いたように私を見つめる。少し開いた唇に舌を割って入れた。
口の中を探って凪沙のを見つけ出すと、クチュといやらしい音が鳴った。

逃げるように少し下がった凪沙の腰を片手でおさえて、胸元のボタンを外していた手はさらにもう一つボタンを外した。

熱い舌が絡まっていく、恐る恐るだった凪沙も呼吸が乱れ私の動きに合わせるように、何度も唇を触れさせた。

「はぁ、ん……」

吸い付くようにすれば、凪沙の声が甘く喘ぎ、その声を聞いて頭が熱くなっていく。声を聞いただけで興奮している。呼吸が早くなり気づけば凪沙が私の胸元のシャツをギュッと握っていた。

呼吸を整えようとゆっくりと唇を離すと、濡れた唇が見えてまたドクンと心臓が跳ねた。茶色い瞳は潤んでこちらを見つめている。頬が朱に染まった凪沙も息を吐いた。

開かれた胸元からちらっと柔らかそうな胸と下着が見えていて、誘われるように顔を寄せて吸い付いた。

ちぅぅと強めに吸う。

「んんっ……りょう…ちゃん……」

唇を離すとくっきりと赤く色づいた肌が現れた。少し痛そうにも見える肌をごめんねという意味も込めて舌で舐める。

「涼ちゃん……」

胸元がはだけてキスマークが見えて、ベッドに背中を預けて潤んだ瞳が私を見つめている。
えろ……

「えろ……」

あ、つい心の声が口から漏れ出た。
凪沙の瞳が大きく見開いて慌てて胸元のシャツを閉じた。

「えっち!!」

潤んでいた目がキッと細められて、睨むようにして眉を寄せている。怒っているわけではなさそうだし、そんな表情や仕草も可愛すぎて口元が緩んだ。


「涼~凪沙ちゃん――」


コンコンガチャと扉が開けられる。ノックからのノータイムで扉を開けるのはもうノックの意味がない。

扉を開け固まった母さんの視線がはだけたシャツを手でをさえている凪沙とそれに迫っているように向き合う私。
交互に視線が動きそして………

「……避妊はちゃんとしなさいね?」

パタンと扉が閉まった。


「なんか色々間違ってます!!!」


凪沙が閉まった扉に叫んだ。


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