114 / 129
1月24日 Side涼18
しおりを挟む
カランと聞き慣れた鐘が鳴る扉を開けると「いらっしゃいませ」と可愛らしい店員さんが迎えてくれた。
そう!私の彼女だ。
茶色いエプロンをつけてコーヒーを運ぶ姿はここのお店のベテラン店員さんである。親しみやすい可愛らしい笑顔で看板娘でもある。凪沙がここで働くようになってから、お客様の数が増えたと母さんも言っていた。
「あら涼、もう来たの?」
「ちゃんと時間通りに来てるよ」
今日は凪沙と交際1ヶ月記念日なので事前に母さんには、いつものバイト時間より早めに帰れるようにお願いをしていた。忙しかったらダメとは言われたけど、見た感じそれほど忙しそうにも思えないので大丈夫だろう。
「凪沙ちゃん上がっていいわよ」
「はーい」
テーブル席を片付けた凪沙が「ちょっと待っててね」と言って休憩室に入って行った。
凪沙にはデートをしようとだけ伝えてある。
駅前に新しくオープンしたカフェに行って、そのお店の人気メニューのパンケーキを食べる。そこで交際1ヶ月記念で用意したプレゼントを渡して、バイト疲れただろうからゆっくり私の家で一緒に映画見ようと誘う。ちょっとエッチな映画を見て良い雰囲気になったところで………
ふふ
美味しいものを食べて、プレゼントでお互いの絆を確かめ合い、いい雰囲気に持ち込む。
完璧だ!これは完璧な流れ!
おっと、完全に顔が緩んでいる。高坂にもわかりやすいと言われたばかりだから気をつけないと……
顔を引き締めるために自分の頬をムニムニと揉んでいるとカウンターにいる母さんと目が合った。
「涼………自分の娘ながら、ちょっとその顔はどうかと思うわ……」
「う、うるさい!」
「涼ちゃんおまたせ~……?どうしたの?」
「なんでもないよ。行こ!」
「うん。美月さん。お先に失礼します」
「お疲れ様~オオカミには気をつけてね~」
「うるさい!!」
「?」
手を繋いで駅に向かって歩いていく。
「どこ行くの?」
「駅前に新しいカフェができたんだって、そこのパンケーキ食べに行こ。美味しいらしいよ」
「敵情視察ってやつだね」
「え?」
拳を握ってキリッとした表情をしている。
「喫茶みづきのライバル店ができたんでしょ?」
「いや、そんなつもりはなくて……」
普通に美味しいパンケーキを食べようと思っていたけど、喫茶店で働いた後別の喫茶店に行くのは違ったのかもしれない。それに私はそこの娘でもあるわけだし……
「喫茶みづきにもパンケーキをメニューに入れたらいいかも!今度美月さんに提案してみよ。その前にライバル店のパンケーキの味を覚えておかなきゃ」
普通にデートとしてカフェに誘っただけなのに凪沙はやる気に満ち溢れていた。
お店の内装はオープンしたてということもあり綺麗で明るい雰囲気だった。割と混雑しているが空いている窓際の席に通されて2人でメニューを覗き込む。
「えー。パンケーキだけですごい種類あるね。どれも美味しそう……」
「これとかソフトクリームが山になってる。生クリームにも変更ができるんだ」
パンケーキに力を入れているのか種類も見た目も迫力があり、他のお客もみんなパンケーキを食べているようだった。
「ね。ね。涼ちゃんはどれにする?」
さっきまでは敵情視察だとやる気を出していた凪沙も今ではパンケーキが楽しみになっている様子で、目をキラキラと輝かせている。
「このいちごのパンケーキにしようかな」
「美味しそうだよねぇ」
「凪沙は?」
「私はこれ」
凪沙が指さしたのはアイスとパンケーキのシンプルなやつで、もっと色々フルーツが乗っている可愛らしいのを選ぶのかと思っていたから意外だ。
テーブルに置いてあるボタンをポチと押した。
パンケーキが届くまで少し時間はかかったが、届いた実物を見ると予想以上に大きく美味しそうだった。
「すごい厚みだね」
写真でもわかっていたけど、ホットケーキみたいな薄い感じではなく数センチはありそうなほどの厚みがあるパンケーキは切ってみると柔らかくふわふわしている。
「涼ちゃん。すごい……ふわふわだよ」
目を大きくさせている凪沙は子供のようにパンケーキを口に運んだ。
「涼ちゃん。すごい……美味しい」
語彙力まで子供みたいで可愛い。最初はどうなるかと思ったけど、喜んでるみたいだし良かった。
「凪沙こっちも食べてみる?」
「いいの?」
「いいよ」
イチゴとパンケーキを乗せたフォークを凪沙の口に入れた。途端にまた大きくなる瞳が何も言わなくても美味しいって訴えてきている。
「美味しい……」
「凪沙見てるだけでわかる」
「なんで!?」
「美味しそうに表情がコロコロと変わるんだもん。可愛い」
「涼ちゃんだってわかりやすいんだからね?」
「何が?」
「ずっと私のこと見てるけど、顔緩んでるからね?」
「え!?うそ!?」
頬をムニムニしていると、凪沙がパンケーキを乗せたフォークを差し出してきた。
一口で食べるとシンプルなパンケーキも十分すぎるくらい美味しかった。
私が美味しいと笑うと凪沙も笑顔を返してくれた。
「すごく美味しかったぁ。あのパンケーキって作るの難しいのかなぁ」
「どうだろうね。あんなにふわふわにするのは大変かもしれないね」
凪沙が食後のカフェオレを口にしながら、楽しそうに喫茶みづきのメニューに載せられないか考えている。
よし、ここでプレゼントを渡して良い雰囲気にする!
私はどんな反応するかワクワクしながら、カバンから包装された小さな袋を取り出し凪沙の前に置いた。
「なぁに?コレ」
「今日で交際1ヶ月でしょ?だからプレゼント」
嬉しそうにする凪沙の反応を期待しながら、凪沙の様子を伺うように視線を向ける。
「…………」
「…………?」
凪沙は少し眉を寄せてプレゼントを眺めている。
あ、あれ?なんか思っていた反応と違う……
「な、なぎさ?」
どうしたんだろう。さっきまで楽しそうに話していたのに……
「涼ちゃん……」
「な、なに?」
「ダメだよ」
「え………」
凪沙が真剣な表情を私に向けた。
そう!私の彼女だ。
茶色いエプロンをつけてコーヒーを運ぶ姿はここのお店のベテラン店員さんである。親しみやすい可愛らしい笑顔で看板娘でもある。凪沙がここで働くようになってから、お客様の数が増えたと母さんも言っていた。
「あら涼、もう来たの?」
「ちゃんと時間通りに来てるよ」
今日は凪沙と交際1ヶ月記念日なので事前に母さんには、いつものバイト時間より早めに帰れるようにお願いをしていた。忙しかったらダメとは言われたけど、見た感じそれほど忙しそうにも思えないので大丈夫だろう。
「凪沙ちゃん上がっていいわよ」
「はーい」
テーブル席を片付けた凪沙が「ちょっと待っててね」と言って休憩室に入って行った。
凪沙にはデートをしようとだけ伝えてある。
駅前に新しくオープンしたカフェに行って、そのお店の人気メニューのパンケーキを食べる。そこで交際1ヶ月記念で用意したプレゼントを渡して、バイト疲れただろうからゆっくり私の家で一緒に映画見ようと誘う。ちょっとエッチな映画を見て良い雰囲気になったところで………
ふふ
美味しいものを食べて、プレゼントでお互いの絆を確かめ合い、いい雰囲気に持ち込む。
完璧だ!これは完璧な流れ!
おっと、完全に顔が緩んでいる。高坂にもわかりやすいと言われたばかりだから気をつけないと……
顔を引き締めるために自分の頬をムニムニと揉んでいるとカウンターにいる母さんと目が合った。
「涼………自分の娘ながら、ちょっとその顔はどうかと思うわ……」
「う、うるさい!」
「涼ちゃんおまたせ~……?どうしたの?」
「なんでもないよ。行こ!」
「うん。美月さん。お先に失礼します」
「お疲れ様~オオカミには気をつけてね~」
「うるさい!!」
「?」
手を繋いで駅に向かって歩いていく。
「どこ行くの?」
「駅前に新しいカフェができたんだって、そこのパンケーキ食べに行こ。美味しいらしいよ」
「敵情視察ってやつだね」
「え?」
拳を握ってキリッとした表情をしている。
「喫茶みづきのライバル店ができたんでしょ?」
「いや、そんなつもりはなくて……」
普通に美味しいパンケーキを食べようと思っていたけど、喫茶店で働いた後別の喫茶店に行くのは違ったのかもしれない。それに私はそこの娘でもあるわけだし……
「喫茶みづきにもパンケーキをメニューに入れたらいいかも!今度美月さんに提案してみよ。その前にライバル店のパンケーキの味を覚えておかなきゃ」
普通にデートとしてカフェに誘っただけなのに凪沙はやる気に満ち溢れていた。
お店の内装はオープンしたてということもあり綺麗で明るい雰囲気だった。割と混雑しているが空いている窓際の席に通されて2人でメニューを覗き込む。
「えー。パンケーキだけですごい種類あるね。どれも美味しそう……」
「これとかソフトクリームが山になってる。生クリームにも変更ができるんだ」
パンケーキに力を入れているのか種類も見た目も迫力があり、他のお客もみんなパンケーキを食べているようだった。
「ね。ね。涼ちゃんはどれにする?」
さっきまでは敵情視察だとやる気を出していた凪沙も今ではパンケーキが楽しみになっている様子で、目をキラキラと輝かせている。
「このいちごのパンケーキにしようかな」
「美味しそうだよねぇ」
「凪沙は?」
「私はこれ」
凪沙が指さしたのはアイスとパンケーキのシンプルなやつで、もっと色々フルーツが乗っている可愛らしいのを選ぶのかと思っていたから意外だ。
テーブルに置いてあるボタンをポチと押した。
パンケーキが届くまで少し時間はかかったが、届いた実物を見ると予想以上に大きく美味しそうだった。
「すごい厚みだね」
写真でもわかっていたけど、ホットケーキみたいな薄い感じではなく数センチはありそうなほどの厚みがあるパンケーキは切ってみると柔らかくふわふわしている。
「涼ちゃん。すごい……ふわふわだよ」
目を大きくさせている凪沙は子供のようにパンケーキを口に運んだ。
「涼ちゃん。すごい……美味しい」
語彙力まで子供みたいで可愛い。最初はどうなるかと思ったけど、喜んでるみたいだし良かった。
「凪沙こっちも食べてみる?」
「いいの?」
「いいよ」
イチゴとパンケーキを乗せたフォークを凪沙の口に入れた。途端にまた大きくなる瞳が何も言わなくても美味しいって訴えてきている。
「美味しい……」
「凪沙見てるだけでわかる」
「なんで!?」
「美味しそうに表情がコロコロと変わるんだもん。可愛い」
「涼ちゃんだってわかりやすいんだからね?」
「何が?」
「ずっと私のこと見てるけど、顔緩んでるからね?」
「え!?うそ!?」
頬をムニムニしていると、凪沙がパンケーキを乗せたフォークを差し出してきた。
一口で食べるとシンプルなパンケーキも十分すぎるくらい美味しかった。
私が美味しいと笑うと凪沙も笑顔を返してくれた。
「すごく美味しかったぁ。あのパンケーキって作るの難しいのかなぁ」
「どうだろうね。あんなにふわふわにするのは大変かもしれないね」
凪沙が食後のカフェオレを口にしながら、楽しそうに喫茶みづきのメニューに載せられないか考えている。
よし、ここでプレゼントを渡して良い雰囲気にする!
私はどんな反応するかワクワクしながら、カバンから包装された小さな袋を取り出し凪沙の前に置いた。
「なぁに?コレ」
「今日で交際1ヶ月でしょ?だからプレゼント」
嬉しそうにする凪沙の反応を期待しながら、凪沙の様子を伺うように視線を向ける。
「…………」
「…………?」
凪沙は少し眉を寄せてプレゼントを眺めている。
あ、あれ?なんか思っていた反応と違う……
「な、なぎさ?」
どうしたんだろう。さっきまで楽しそうに話していたのに……
「涼ちゃん……」
「な、なに?」
「ダメだよ」
「え………」
凪沙が真剣な表情を私に向けた。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる