【本編完結】お互いを恋に落とす事をがんばる事になった

シャクガン

文字の大きさ
115 / 129

1月24日 Side涼19

しおりを挟む
「ダメだよ」

なにがダメなんだろう?交際1ヶ月記念にプレゼントを渡すのがそんなにダメだったの?
私は凪沙の言葉の真意がわからずただ戸惑った。

「ダメって?なにがダメなの?」
「涼ちゃん毎月こうやってプレゼントを渡すつもりなの?」

「あ、いや……それはわからないけど……でも、凪沙と付き合えて1ヶ月経って嬉しくて……」
「うん。私も涼ちゃんと付き合えて嬉しいよ?こうやって記念日を覚えててくれるのも嬉しい」

「じゃあ、なにがダメなの?」
「わざわざプレゼント用意してくれなくてもいい」

「なんで?だって記念日だよ?」
「1ヶ月記念日でしょ?わかってる。でも、1ヶ月記念日でわざわざ用意しなくてもいいの」

騒がしい店内にはそれほど響かないだろうけど、徐々に声が大きくなっていく。

「用意しなくていいってなんで?」
「毎回こうやってプレゼント用意するの大変でしょ」

「大変じゃないよ?」
「でも、プレゼントしなくていいから」

「なんでプレゼント渡したらダメなの?」

凪沙が額に手を当てて眉を更に寄せている。
少し怒っているような様子をしていて、こんな凪沙を見るのが初めてだった。

「だから、1ヶ月記念日で用意しなくてもいいの」
「それじゃ、わからないよ!!」

少し大きな声が出てしまって、驚いたように凪沙がビクッとして私を見つめてくる。

「あ、ご、ごめん……」
「ううん。ごめんね。……もう出よっか」

凪沙は半分くらい残っているカフェオレとプレゼントをそのままにして席を立った。


店を出ると、外は暗くなってきていて寒さがより際立っていた。
風が吹いて寒く、ポケットに手を突っ込んでできるだけ肌が出ないように防御する。

少し先を歩いている凪沙がはぁと白い息を吐いた。

無言の時間が過ぎていて、気づけば凪沙は駅の改札を通っていく。

本当なら私の家に誘う予定で電車に乗ることはなかったはずが、凪沙はそのまま帰るつもりのようでなにも言わないで電車に乗り込んだ。

私は静かに凪沙の後をついていくだけだった。1人で家に帰せないし、この雰囲気のまま別れるのも嫌でなんとか話しかけようと思うけれど、なんて声をかけたら良いかわからなかった。

「じゃあ、またね。送ってくれてありがとう」
「え……」

いつの間にか凪沙の家に到着していて凪沙が微笑んでから振り返り家に向かって歩いていく。

「あ、あの……凪沙……」

足を止めてくれてた凪沙は私に振り返って笑う。

「ごめんね涼ちゃん。私のワガママなんだけど、プレゼントは用意しなくてもいいからね?」

私が勝手にプレゼントを渡そうとしただけなのに、凪沙の方が謝ってくる。受け取ってくれるだけでいいのになんで……

「凪沙が謝ることじゃないから!私の方がごめん……」

わかった。それだけ言って凪沙は家に入って行った。

プレゼントを渡そうと思っただけ、それだけなのにあんなに拒絶されるとは思わなかった。

初めての喧嘩になるのかな。

謝ったし、私の謝罪も凪沙は受け取ってはくれたけど、それでも別れ際のお互いの空気は微妙なまま。
私のモヤモヤは晴れていないし、なんでダメだったのかもわからない。口先だけで謝ったところでお互いが納得していなければ意味がない。



「え?涼?何してるの?」

ずっと凪沙のことを考えていて、声をかけられるまで母さんの帰宅に気づかなかった。時計を見れば0時を過ぎているし、私は凪沙に渡す予定だったプレゼントを握り込んで、ずっとソファに座り込んでいたらしい。体がところどころ痛くなっていた。

「なんでもない」
「いやいや、なんでもないなんて顔してないからね?凪沙ちゃんと何かあったの?あんなに記念日だって浮かれてたじゃない」

「………」
「何があったの?」

母さんの口調は優しくなって心配そうに顔を覗き込んできた。
私は今日あったことを話した。

パンケーキを食べに行った事、お店にパンケーキのメニューを入れたらどうだろうって凪沙が嬉しそうに話していた事、記念日だからプレゼントを渡そうとした事、それを凪沙が拒絶した事。でも、私は何故プレゼントを渡したらダメなのかわからなかった事をできるだけ伝わるように母さんには話した。

「なるほどね」

母さんは思い当たる節があるのかわかったように頷いた。

「1ヶ月記念日にプレゼントは渡さなくていいって言ってたんでしょ?」
「うん」

「あなたたち“まだ“1ヶ月しか付き合ってないのよ?」
「……うん?」

「涼はちょっと落ち着いて凪沙ちゃんと付き合いなさい」
「……うん??」

「凪沙ちゃんと付き合えたのが嬉しいのはわかるけど、ちょっと浮かれすぎなのよ」

母さんは私の頭をポンポンと撫でて「ちゃんと2人で話し合いなさい」と言ってさっさとお風呂に入りに行ってしまった。

“まだ“1ヶ月?浮かれ過ぎ?

それが凪沙がプレゼントを受け取ってくれなかった理由……?
そういえば凪沙は“毎月プレゼントを渡すつもりなのか“とも言っていた。

この日、私は眠れないままずっとそのことについて考えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...