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2月14日
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朝、昇降口で涼ちゃんを見かけた。
下駄箱から上履きを取り出そうとしている所で、下駄箱から出てきたのは可愛くラッピングされているチョコだった。
チョコを眺めて小さく口元が緩んだ。数個のラッピングされたチョコをカバンにしまい上履きに履き替えているところに下級生が近づいていく。友達同士なのか2人の女の子が涼ちゃんに話しかけ、後ろ手に持っていたチョコを同時に涼ちゃんに渡す。
それを涼ちゃんが嬉しそうに微笑みながら受け取った。会話までは聞こえないけれど「ありがとう」と口が動いているのがわかった。
顔を赤くしながら廊下を駆けていく女の子2人が私の横を通り過ぎていった。あの2人も涼ちゃんに好意があるっていうことなんだと思う。本命チョコっていうやつだろう。
通り過ぎた2人の背中を見つめる。
視線を涼ちゃんに戻せば、また違う女の子が涼ちゃんにチョコを渡しているところだった。涼ちゃんモテすぎではないだろうか……
「そんなに彼女のことが気になる?」
「ひぅっ」
息がかかるほど耳元で囁かれて変な声が出てしまった。
慌てて耳を押さえて振り返れば、そこには朝から快活そうに笑う森さんがいた。
「い、いきなり何するんですかっ!!」
「ん?耳弱いの?可愛いね?」
だから耳に息を吹きかけないでっ!
「そ、っそんな話をしてるんじゃないんですっ!」
「あ、そうだったね。天城さんずっと悠木のこと見つめてるんだもん。気になるのかなって思って。それともチョコ渡しに行こうとしてた?」
耳に息を吹きかけるのはやめてくれたけれど、依然距離は近い。
「そ、そりゃ……勝負の日だから……気になるに決まってるじゃないですか」
「ふーん。それだけ?」
だから耳元に息を吹きかけないでいただきたい。
私の心を見透かすような視線を向けられる。
「はぁ。モテるんだなって、ちょっと………」
「妬いちゃうよね?」
わかってるならわざわざ聞かなくてもいいのに。
「悠木もさモテるけど、天城さんだってモテるでしょ?あいつすぐヤキモチ妬いてるっしょ?すごく天城さんのこと好きなんだろうなってわかるんだけどさ――」
「なんですか?」
涼ちゃんがヤキモチ焼きなのは私も知っているし、私のことがすごく好きなんだろうなというのも感じている。
森さんが涼ちゃんを見つめながらさらに続けた。
涼ちゃんはまたチョコを貰っている。
「バスケにも影響出ちゃうんだよね。この間、喧嘩してたでしょ?」
この間というのは多分1ヶ月記念で涼ちゃんがプレゼントを渡そうとしてきた時のことを言っているんだとすぐにわかった。それ以外付き合ってから喧嘩と呼べるほど涼ちゃんとギクシャクしたことはない。
「別に喧嘩ってわけじゃないですけど」
「それでも部活中にぼーっとしてるくらいには影響されてたんだよ。しかも、今悠木と距離置いてるんだって?いやー、部活もなんかモチベーションが無さそうだから終わった後に聞いたら“凪沙が足りない“とか言ってて笑ちゃったわ」
森さんはお腹を抱えて声を殺しながら笑った。
「それは、すみません……そこまで影響が出てるなんて知らなくて」
「いやいや、天城さんのせいじゃないって。悠木がもう少し自分のメンタルをコントロールできるようになればいいだけだからさ」
「じゃあ、なんで私を賭けたんですか?そんなことしたら影響でますよね?」
思い出し笑いをして目頭の涙を指で拭っている森さんが一息ついた。
「んー?2人の仲をもっと深めたいから?」
「引き離したいように見えますけど……」
「簡単に深まるような仲じゃ、まだまだ浅いから。ちょっと試練があった方が仲がより深まるでしょ」
「そうですか……じゃあ、今回の勝負は負ける予定なんですね」
私たちの仲を深めるためにやっているなら、元から勝敗は決まってるって言うことだと思う。森さんは勝つ気なんて最初からなかったと言うことだ。
「まさか!勝負は真剣勝負だから燃えるんじゃん。私は負ける気なんてないけど?」
「え?」
「それに今回は秘策もあるからね」
森さんは大きめのリュックサックをガサリと揺らした。
「と、言うわけで――はい。コレ」
ポケットから森さんが小さいチョコを私の手のひらに乗せた。
「なんですか?」
「バレンタインだからね?」
森さんが期待するように私に視線を向けてくる。手のひらに乗せられたチョコはどう見ても友チョコように用意されたものだとわかる。
なるほど。そう言うことか……
「森さんと友達になった覚えはないんですけどね」
「こんなに話してて友達じゃないだなんて酷いなぁ……」
私はカバンから小さく包装されたチョコを一つ取り出して森さんに渡した。
「ありがとっ!これ、手作り?やっぱ天城さんって女子力高いねぇ」
「あまり褒められてる気がしないですね」
「すごく褒めてるって!悠木には本命渡すんでしょ?」
「それで負けたら返してもらいますからね?」
「この一個で負けるようじゃ、悠木もまだまだだったって事であたしと修学旅行二日目を楽しもうね?」
「やっぱり返してください」
「おっと?チャイムが……それじゃ、また放課後に!!」
「はぁ……」
まだチャイムは鳴ってないというのに、渡したチョコを掲げるようにして手を振って廊下を駆けていく。
気づけば涼ちゃんもいなくなっていた。
下駄箱から上履きを取り出そうとしている所で、下駄箱から出てきたのは可愛くラッピングされているチョコだった。
チョコを眺めて小さく口元が緩んだ。数個のラッピングされたチョコをカバンにしまい上履きに履き替えているところに下級生が近づいていく。友達同士なのか2人の女の子が涼ちゃんに話しかけ、後ろ手に持っていたチョコを同時に涼ちゃんに渡す。
それを涼ちゃんが嬉しそうに微笑みながら受け取った。会話までは聞こえないけれど「ありがとう」と口が動いているのがわかった。
顔を赤くしながら廊下を駆けていく女の子2人が私の横を通り過ぎていった。あの2人も涼ちゃんに好意があるっていうことなんだと思う。本命チョコっていうやつだろう。
通り過ぎた2人の背中を見つめる。
視線を涼ちゃんに戻せば、また違う女の子が涼ちゃんにチョコを渡しているところだった。涼ちゃんモテすぎではないだろうか……
「そんなに彼女のことが気になる?」
「ひぅっ」
息がかかるほど耳元で囁かれて変な声が出てしまった。
慌てて耳を押さえて振り返れば、そこには朝から快活そうに笑う森さんがいた。
「い、いきなり何するんですかっ!!」
「ん?耳弱いの?可愛いね?」
だから耳に息を吹きかけないでっ!
「そ、っそんな話をしてるんじゃないんですっ!」
「あ、そうだったね。天城さんずっと悠木のこと見つめてるんだもん。気になるのかなって思って。それともチョコ渡しに行こうとしてた?」
耳に息を吹きかけるのはやめてくれたけれど、依然距離は近い。
「そ、そりゃ……勝負の日だから……気になるに決まってるじゃないですか」
「ふーん。それだけ?」
だから耳元に息を吹きかけないでいただきたい。
私の心を見透かすような視線を向けられる。
「はぁ。モテるんだなって、ちょっと………」
「妬いちゃうよね?」
わかってるならわざわざ聞かなくてもいいのに。
「悠木もさモテるけど、天城さんだってモテるでしょ?あいつすぐヤキモチ妬いてるっしょ?すごく天城さんのこと好きなんだろうなってわかるんだけどさ――」
「なんですか?」
涼ちゃんがヤキモチ焼きなのは私も知っているし、私のことがすごく好きなんだろうなというのも感じている。
森さんが涼ちゃんを見つめながらさらに続けた。
涼ちゃんはまたチョコを貰っている。
「バスケにも影響出ちゃうんだよね。この間、喧嘩してたでしょ?」
この間というのは多分1ヶ月記念で涼ちゃんがプレゼントを渡そうとしてきた時のことを言っているんだとすぐにわかった。それ以外付き合ってから喧嘩と呼べるほど涼ちゃんとギクシャクしたことはない。
「別に喧嘩ってわけじゃないですけど」
「それでも部活中にぼーっとしてるくらいには影響されてたんだよ。しかも、今悠木と距離置いてるんだって?いやー、部活もなんかモチベーションが無さそうだから終わった後に聞いたら“凪沙が足りない“とか言ってて笑ちゃったわ」
森さんはお腹を抱えて声を殺しながら笑った。
「それは、すみません……そこまで影響が出てるなんて知らなくて」
「いやいや、天城さんのせいじゃないって。悠木がもう少し自分のメンタルをコントロールできるようになればいいだけだからさ」
「じゃあ、なんで私を賭けたんですか?そんなことしたら影響でますよね?」
思い出し笑いをして目頭の涙を指で拭っている森さんが一息ついた。
「んー?2人の仲をもっと深めたいから?」
「引き離したいように見えますけど……」
「簡単に深まるような仲じゃ、まだまだ浅いから。ちょっと試練があった方が仲がより深まるでしょ」
「そうですか……じゃあ、今回の勝負は負ける予定なんですね」
私たちの仲を深めるためにやっているなら、元から勝敗は決まってるって言うことだと思う。森さんは勝つ気なんて最初からなかったと言うことだ。
「まさか!勝負は真剣勝負だから燃えるんじゃん。私は負ける気なんてないけど?」
「え?」
「それに今回は秘策もあるからね」
森さんは大きめのリュックサックをガサリと揺らした。
「と、言うわけで――はい。コレ」
ポケットから森さんが小さいチョコを私の手のひらに乗せた。
「なんですか?」
「バレンタインだからね?」
森さんが期待するように私に視線を向けてくる。手のひらに乗せられたチョコはどう見ても友チョコように用意されたものだとわかる。
なるほど。そう言うことか……
「森さんと友達になった覚えはないんですけどね」
「こんなに話してて友達じゃないだなんて酷いなぁ……」
私はカバンから小さく包装されたチョコを一つ取り出して森さんに渡した。
「ありがとっ!これ、手作り?やっぱ天城さんって女子力高いねぇ」
「あまり褒められてる気がしないですね」
「すごく褒めてるって!悠木には本命渡すんでしょ?」
「それで負けたら返してもらいますからね?」
「この一個で負けるようじゃ、悠木もまだまだだったって事であたしと修学旅行二日目を楽しもうね?」
「やっぱり返してください」
「おっと?チャイムが……それじゃ、また放課後に!!」
「はぁ……」
まだチャイムは鳴ってないというのに、渡したチョコを掲げるようにして手を振って廊下を駆けていく。
気づけば涼ちゃんもいなくなっていた。
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