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2月14日 Side涼28
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「な、なんでここにいるんだよ」
森が女の子を見て狼狽えた。
眉間に皺を寄せて見るからに不機嫌そうな女の子は後輩。可愛らしい女の子はある日の更衣室で森が『最後まで』などと発言していたあの女の子だ。
明言はしていなかったが、最後までなどと発言していたからにはきっと2人は付き合っているのではないかと思っていた。
その後輩が何故ここに?
校舎の端に位置しているこの特別教室は用事がない限りは普通の生徒が来ることもないような場所。そんな場所にわざわざ来たということは、森に用事があり探していたということだろうか……
私が首を傾げていると、森が私に振り返り小声で、でも威圧的に告げてくる。
「お前が呼んだのか!?」
「いやいやいや!知らない!知らないよっ」
「じゃあ、どうしてナツがここにいるんだよっ」
「わからないって!私じゃないしっ」
「お前以外ありえないだろっ!!」
確かにバスケ部の後輩ということもあり、この中では多分唯一面識があるのが私だけれど、だからと言って森との勝負の日に彼女を呼び出すようなことはしていない。
「優奈先輩何してるんですか?」
「っ!」
可愛らしい見た目とは裏腹に口から出てきた声音は低く、込められた感情は怒りに満ちていた。
瞬間に森は顔色を青くして後輩に向き直った。
「えーっと、あれだよ。修学旅行で自由行動を――一緒に回らない?って、話してたっていうか――」
「こんなところでですか?」
私たちには笑顔を向けて、森には鋭い視線をさした。
「う、うん。まぁ―」
「チョコの個数を数えながら?」
机に広げられたチョコを横目で見る。
「そ、それは――」
「悠木先輩と勝負してると伺いましたが?」
森が私を睨みつける。私じゃないって!
ブンブンと首を振って否定をするが、森は私以外ありえないだろと言った感じだ。
他の人に話したりなんてしていないんだけど……他に知っているとしたら……
……結?
でも、結は森と彼女が付き合っているということは知らないはず……
「天城先輩」
「は、はい」
森を睨んでいた彼女は申し訳なさそうな表情に変わり、凪沙に歩み寄って頭を下げた。
「ごめんなさい。優奈先輩がめちゃくちゃな勝負を仕掛けて、天城先輩を賭けるなんてことをしてしまって……」
「え、えっと――?」
凪沙は突然現れた彼女がなんで代わりに謝ってくるのか、わからずに困惑している。
「あ、私一応優奈先輩とお付き合いさせてもらっていて」
「あー。そうなんだ……」
凪沙が視線を森に向けると、森は目を合わせないように目線を横に流した。
「でも、あなたが謝るようなことじゃないよ?それに、涼ちゃんも勝負を受けたわけだし」
凪沙が私を見る。
違うんだよ。これは色々と事情が……などと心の中で言い訳を並べるが言い訳を述べたところで凪沙を賭けたという事実は変わらない。
森と私は2人して彼女たちから視線を逸らした。
「それでもせっかく2人きりになれる時間を奪われるのは、私だったら嫌なので今回の勝負はなかったことにしますね」
「えっ!!せっかく勝ったのに……」
「ゆ・う・な・せ・ん・ぱ・い?……」
「は、はい……」
彼女の口元は笑っているが目が全く笑っていない。怖い……いつもは私より上手な森も後輩の彼女相手にはどうやら敵わないらしい。
「行きますよ。優奈先輩」
「え、どこに?」
「用事はもう済みましたよね?一緒に帰りましょうか」
「あー、えーっと……はい」
「先輩方もお騒がせしました。優奈先輩にはきつくお灸を据えておきます」
ぺこりと頭を下げてから教室の出口に向かう彼女を見て、森が慌てて荷物を片付けてそのあとを追いかける。
「ま、待って!ナツちゃん!」
「もう!優奈先輩ったら、こんなことしてファンクラブの人たちに怒られても知りませんよ!?」
「ご、ごめんって。2人の仲を深めようとおもって――」
2人が出て行き教室の扉が閉じられた。
ファンクラブ……
もしかして龍皇子が彼女をここに呼んだのか?
ブブッと携帯が震えてメッセージを確認する。
“次はないですからね? 龍皇子“
背筋に悪寒が走った。
バレてる。きっと私が凪沙を賭けた勝負をしたことに対して怒っている。凪沙のことが大好きな彼女のことだ、次に凪沙を悲しませるようなことをしてしまったら……私と凪沙を別れるように仕向けてくるかもしれない。
そんな最悪な事態になってしまったらと思うと……考えるだけで体が震えてきそうだった。
「涼ちゃん?」
「………凪沙」
「大丈夫?」
「え?――あ、うん。大丈夫」
私が携帯を見て固まっているのを心配していたらしい。
下から私の顔を覗き込むようにしてきた凪沙と目が合った。
久しぶりに凪沙と目が合って、久しぶりにまともに凪沙の顔が見れて、その仕草の可愛さを再認識して気づけば思わず抱きついていた。
たった数日だというのに、とても長く感じていた。
「っ、どうしたの??」
「久しぶりの凪沙の匂いだ」
「えぇ!嗅いでる!?ちょっ、ちょっと!」
スンスン
この匂い好き。
凪沙が私の腕の中で必死に抵抗をしている。まぁ、凪沙の力なんて私に比べたら全然だし、それに全力で抵抗しているわけでもなさそう。いきなり抱きついたからちょっと恥ずかしそうにしている。
少し力を緩めると顔を上げた凪沙と目が合った。
眉を八の字にさせて少し頬がピンク色に染まり、恥ずかしそうにはにかんだ。
色素の薄い茶色い瞳が私を見つめてくる。
私はその瞳に吸い込まれるようにして顔を近づけていく。
森が女の子を見て狼狽えた。
眉間に皺を寄せて見るからに不機嫌そうな女の子は後輩。可愛らしい女の子はある日の更衣室で森が『最後まで』などと発言していたあの女の子だ。
明言はしていなかったが、最後までなどと発言していたからにはきっと2人は付き合っているのではないかと思っていた。
その後輩が何故ここに?
校舎の端に位置しているこの特別教室は用事がない限りは普通の生徒が来ることもないような場所。そんな場所にわざわざ来たということは、森に用事があり探していたということだろうか……
私が首を傾げていると、森が私に振り返り小声で、でも威圧的に告げてくる。
「お前が呼んだのか!?」
「いやいやいや!知らない!知らないよっ」
「じゃあ、どうしてナツがここにいるんだよっ」
「わからないって!私じゃないしっ」
「お前以外ありえないだろっ!!」
確かにバスケ部の後輩ということもあり、この中では多分唯一面識があるのが私だけれど、だからと言って森との勝負の日に彼女を呼び出すようなことはしていない。
「優奈先輩何してるんですか?」
「っ!」
可愛らしい見た目とは裏腹に口から出てきた声音は低く、込められた感情は怒りに満ちていた。
瞬間に森は顔色を青くして後輩に向き直った。
「えーっと、あれだよ。修学旅行で自由行動を――一緒に回らない?って、話してたっていうか――」
「こんなところでですか?」
私たちには笑顔を向けて、森には鋭い視線をさした。
「う、うん。まぁ―」
「チョコの個数を数えながら?」
机に広げられたチョコを横目で見る。
「そ、それは――」
「悠木先輩と勝負してると伺いましたが?」
森が私を睨みつける。私じゃないって!
ブンブンと首を振って否定をするが、森は私以外ありえないだろと言った感じだ。
他の人に話したりなんてしていないんだけど……他に知っているとしたら……
……結?
でも、結は森と彼女が付き合っているということは知らないはず……
「天城先輩」
「は、はい」
森を睨んでいた彼女は申し訳なさそうな表情に変わり、凪沙に歩み寄って頭を下げた。
「ごめんなさい。優奈先輩がめちゃくちゃな勝負を仕掛けて、天城先輩を賭けるなんてことをしてしまって……」
「え、えっと――?」
凪沙は突然現れた彼女がなんで代わりに謝ってくるのか、わからずに困惑している。
「あ、私一応優奈先輩とお付き合いさせてもらっていて」
「あー。そうなんだ……」
凪沙が視線を森に向けると、森は目を合わせないように目線を横に流した。
「でも、あなたが謝るようなことじゃないよ?それに、涼ちゃんも勝負を受けたわけだし」
凪沙が私を見る。
違うんだよ。これは色々と事情が……などと心の中で言い訳を並べるが言い訳を述べたところで凪沙を賭けたという事実は変わらない。
森と私は2人して彼女たちから視線を逸らした。
「それでもせっかく2人きりになれる時間を奪われるのは、私だったら嫌なので今回の勝負はなかったことにしますね」
「えっ!!せっかく勝ったのに……」
「ゆ・う・な・せ・ん・ぱ・い?……」
「は、はい……」
彼女の口元は笑っているが目が全く笑っていない。怖い……いつもは私より上手な森も後輩の彼女相手にはどうやら敵わないらしい。
「行きますよ。優奈先輩」
「え、どこに?」
「用事はもう済みましたよね?一緒に帰りましょうか」
「あー、えーっと……はい」
「先輩方もお騒がせしました。優奈先輩にはきつくお灸を据えておきます」
ぺこりと頭を下げてから教室の出口に向かう彼女を見て、森が慌てて荷物を片付けてそのあとを追いかける。
「ま、待って!ナツちゃん!」
「もう!優奈先輩ったら、こんなことしてファンクラブの人たちに怒られても知りませんよ!?」
「ご、ごめんって。2人の仲を深めようとおもって――」
2人が出て行き教室の扉が閉じられた。
ファンクラブ……
もしかして龍皇子が彼女をここに呼んだのか?
ブブッと携帯が震えてメッセージを確認する。
“次はないですからね? 龍皇子“
背筋に悪寒が走った。
バレてる。きっと私が凪沙を賭けた勝負をしたことに対して怒っている。凪沙のことが大好きな彼女のことだ、次に凪沙を悲しませるようなことをしてしまったら……私と凪沙を別れるように仕向けてくるかもしれない。
そんな最悪な事態になってしまったらと思うと……考えるだけで体が震えてきそうだった。
「涼ちゃん?」
「………凪沙」
「大丈夫?」
「え?――あ、うん。大丈夫」
私が携帯を見て固まっているのを心配していたらしい。
下から私の顔を覗き込むようにしてきた凪沙と目が合った。
久しぶりに凪沙と目が合って、久しぶりにまともに凪沙の顔が見れて、その仕草の可愛さを再認識して気づけば思わず抱きついていた。
たった数日だというのに、とても長く感じていた。
「っ、どうしたの??」
「久しぶりの凪沙の匂いだ」
「えぇ!嗅いでる!?ちょっ、ちょっと!」
スンスン
この匂い好き。
凪沙が私の腕の中で必死に抵抗をしている。まぁ、凪沙の力なんて私に比べたら全然だし、それに全力で抵抗しているわけでもなさそう。いきなり抱きついたからちょっと恥ずかしそうにしている。
少し力を緩めると顔を上げた凪沙と目が合った。
眉を八の字にさせて少し頬がピンク色に染まり、恥ずかしそうにはにかんだ。
色素の薄い茶色い瞳が私を見つめてくる。
私はその瞳に吸い込まれるようにして顔を近づけていく。
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