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四
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私が過去の記憶から復帰すると、ぞろぞろと騎士達が彼らの拘束を始めていた。
「俺を誰だと思っている!親父に言いつけるぞ!」
騎士団長の子息が喚いている。
騎士団長より拘束を命じた陛下のほうが立場が上なのだが、この大丈夫だろうかこのぽんこつは。
「団長から『暴れたら、腕か足の一本くらい斬り落として来ても問題ない』とのことなんで。
腕、足どちらにするか選ばせてやる」
騎士が剣を抜いて子息の肩に当てればへなへなと腰をぬかし、絨毯を湿らせた。
宰相子息は大人しく拘束されたが、魔法師団長子息は魔法で抵抗し、騎士らが張っていた反射壁に攻撃魔法を跳ね返さ自滅していた。
そして殿下は…。
「ちちうえったすけてっちちうえぇ」
駄々をこねていた。
陛下は完全に引いているけども…。
こちらを見るなり、助けろ助けろと喚き出したが、「婚約解消され他人になった人間なのでそのような義理はない」と告げると、何故かショックを受けた顔をして大人しくなった。
彼らがどんな処分を受けるのかわからないが、彼らの父親は優秀な人間だ。
身内といえど甘い処罰はきっと望まない。
ーーー
陛下と共に場所を移すと、深々と謝罪された。
王太子との婚約解消より先に廃嫡手続きを行ったようだ。
廃嫡のため、婚約を解消とした方が私の傷にならないだろうという配慮らしい。
新しい婚約者の打診もあったが、それは断った。
ただ、聞き入れてもらえるのならばと願ったのは、王太子の婚約者としてつけてもらった護衛騎士をそのまま賜りたい、と。
王族に仕える護衛は優秀だ。
一令嬢如きに与えられる人材ではないのだが、陛下は快く差し出した。
陛下にはお見通しなのかもしれない。
「結婚式には呼んで欲しい」と言われ思わず赤面してしまい、笑われた。
ーーー
「お嬢様、どうかされました?」
邸に帰る馬車内で、賜ったばかりの護衛騎士が覗き込んでくる。
「なんでもないっ」
「…顔が赤いですよ?」
「疲れたのっ」
はしたなくも護衛騎士の胸に顔を寄せた。
腰に腕を回してぎゅっと抱き締めれば、頭を撫でて返してくれた。
王太子達の情報を逐一教えてくれたのは彼だった。
王太子の近衛騎士とやり取りしていたようで、妙な薬を手に入れたらしいと聞いて、王太子との茶会で口をつける前にわざとカップを落としたり、理由を付けお茶請けを取り上げたり、けして二人きりにならないよう守ってくれていた。
「…あのね、私の婚約者になってほしいのだけれど」
「それは、…お断りします」
私の一世一代の告白はあっさり断られた。
「…っ、そう…」
思わず声が震えた。
いつ何時も、感情を面に出してはいけないのに。
「そうではなくて、お嬢様。俺の妻になって下さい」
「っう、?」
「婚約などすっとばして結婚しましょう」
誰かにかっさらわれる前に。
「けっ、結婚するっ」
嗚咽混じりにそう答えると、顔を上向かされ唇が重なった。
「俺を誰だと思っている!親父に言いつけるぞ!」
騎士団長の子息が喚いている。
騎士団長より拘束を命じた陛下のほうが立場が上なのだが、この大丈夫だろうかこのぽんこつは。
「団長から『暴れたら、腕か足の一本くらい斬り落として来ても問題ない』とのことなんで。
腕、足どちらにするか選ばせてやる」
騎士が剣を抜いて子息の肩に当てればへなへなと腰をぬかし、絨毯を湿らせた。
宰相子息は大人しく拘束されたが、魔法師団長子息は魔法で抵抗し、騎士らが張っていた反射壁に攻撃魔法を跳ね返さ自滅していた。
そして殿下は…。
「ちちうえったすけてっちちうえぇ」
駄々をこねていた。
陛下は完全に引いているけども…。
こちらを見るなり、助けろ助けろと喚き出したが、「婚約解消され他人になった人間なのでそのような義理はない」と告げると、何故かショックを受けた顔をして大人しくなった。
彼らがどんな処分を受けるのかわからないが、彼らの父親は優秀な人間だ。
身内といえど甘い処罰はきっと望まない。
ーーー
陛下と共に場所を移すと、深々と謝罪された。
王太子との婚約解消より先に廃嫡手続きを行ったようだ。
廃嫡のため、婚約を解消とした方が私の傷にならないだろうという配慮らしい。
新しい婚約者の打診もあったが、それは断った。
ただ、聞き入れてもらえるのならばと願ったのは、王太子の婚約者としてつけてもらった護衛騎士をそのまま賜りたい、と。
王族に仕える護衛は優秀だ。
一令嬢如きに与えられる人材ではないのだが、陛下は快く差し出した。
陛下にはお見通しなのかもしれない。
「結婚式には呼んで欲しい」と言われ思わず赤面してしまい、笑われた。
ーーー
「お嬢様、どうかされました?」
邸に帰る馬車内で、賜ったばかりの護衛騎士が覗き込んでくる。
「なんでもないっ」
「…顔が赤いですよ?」
「疲れたのっ」
はしたなくも護衛騎士の胸に顔を寄せた。
腰に腕を回してぎゅっと抱き締めれば、頭を撫でて返してくれた。
王太子達の情報を逐一教えてくれたのは彼だった。
王太子の近衛騎士とやり取りしていたようで、妙な薬を手に入れたらしいと聞いて、王太子との茶会で口をつける前にわざとカップを落としたり、理由を付けお茶請けを取り上げたり、けして二人きりにならないよう守ってくれていた。
「…あのね、私の婚約者になってほしいのだけれど」
「それは、…お断りします」
私の一世一代の告白はあっさり断られた。
「…っ、そう…」
思わず声が震えた。
いつ何時も、感情を面に出してはいけないのに。
「そうではなくて、お嬢様。俺の妻になって下さい」
「っう、?」
「婚約などすっとばして結婚しましょう」
誰かにかっさらわれる前に。
「けっ、結婚するっ」
嗚咽混じりにそう答えると、顔を上向かされ唇が重なった。
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