彼女は、罰して命を奪った男の後を追った

基本二度寝

文字の大きさ
3 / 9

しおりを挟む
「だからっ嫌だったのだ!こうなると、わかっていて王城に連行するなど!」

メリアンテは寝台で横たわっていた。
公爵は娘を抱きしめて涙を流している。

まるで演劇のようだと、王太子は眺めていた。

現実とは思えない。
メリアンテはただ眠っているようにしか見えない。

「婚約を解消してもらうように!何度も掛け合ったのに!」

メリアンテは身体が弱くなった。
泉に落ちてから、時々貧血を起こす様になった。
元々活発な少女だったのに。

とてもではないが王太子妃をやっていくには難しい。
公爵からは何度も婚約の解消を申し入れてられていた。

王は公爵の意見に同意していたが、王太子がそれを認めなかった。メリアンテじゃないなら王位は継がないと突っぱねた。

メリアンテを妻にすると決めていた。
私達は互いに想い合っていた。
想い合う者達が、身分も釣り合う二人が、引き裂かれる事に納得できなかった。

「ギルは!ギルバートはどこですか!」

公爵は周りを見回して誰かを探す。
王太子の顔を見つけると、彼はどこにいったのだと責めた。

「誰の事だ」
「メリアの侍従ですよ!!娘を城に連れて行くなら彼も一緒にとお願いしたはずです」

「さぁ、どこに行ったかな?」

空惚けてみせても、公爵は王太子を睨みつけていた。

「…そんなことより、治癒師に見せてみろ。たちまちメリアンテは元気になれるさ」

この場には治癒師も薬師も魔術師も集まっていた。
この国の粋を集めた優秀な彼らの力があれば、メリアンテも直ぐに元気になれる。

「殿下。我々は亡くなった者は生き返らせません」

治癒師は首を振る。

「この茶番はまだ続くのか」

王太子が寝台に近づきメリアンテの頬に手を伸ばす。

「もういい。早く起きてくれ。私を総出で騙しているつもりかもしれないが、こんな冗談は好きでは、…ない、メリアンテ…?」

メリアンテの頬の冷たさにゾッとした。
これほど温かい部屋にいて、この冷えは何だ。

どういうことだと顔を上げてみれば、メリアンテに付いていた侍女と公爵から睨まれていた。

「ギルは、何処ですか」
「…知らん!奴は逃げた!」
「そんな筈はない。ギルは、命尽きるまでメリアの側にいると誓ったのだから」

公爵までそんな戯言を口にした。

「メリアンテの側にいるのは生涯私一人だ!」
「だから、貴方がを屠ったのですか?婚約解消が認められる前に。メリアンテ様が殿下の婚約者であるうちに」

不穏な台詞を吐いたのは公爵ではない。
王太子は振り向き、開け放たれた部屋の入り口に立っていたのは王宮の魔導医だった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔法のせいだからって許せるわけがない

ユウユウ
ファンタジー
 私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。  すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。

卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。

ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。 そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。 すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。

婚約者への愛を薔薇に注ぎました

恋愛
妹と違って家族にも、婚約者にも愛されなかったメルティナ。王国一の魔法使いエミディオの力で時間を巻き戻し、彼の妻になったメルティナは今とても幸福に満ち溢れていた。 魔法薬店を営むメルティナの許に、元婚約者が現れた。 嘗て狂おしい程に愛した元婚約者を見ても、愛がすっかりと消えてしまったメルティナの心は揺れなかった。 ※なろうさんにも公開しています。

【完結】アラマーのざまぁ

ジュレヌク
恋愛
幼い頃から愛を誓う人がいた。 周りも、家族も、2人が結ばれるのだと信じていた。 しかし、王命で運命は引き離され、彼女は第二王子の婚約者となる。 アラマーの死を覚悟した抗議に、王は、言った。 『一つだけ、何でも叶えよう』 彼女は、ある事を願った。 彼女は、一矢報いるために、大きな杭を打ち込んだのだ。 そして、月日が経ち、運命が再び動き出す。

【完結】私が愛されるのを見ていなさい

芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定) 公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。 絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。 ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。 完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。  立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

【完結】よりを戻したいですって?  ごめんなさい、そんなつもりはありません

ノエル
恋愛
ある日、サイラス宛に同級生より手紙が届く。中には、婚約破棄の原因となった事件の驚くべき真相が書かれていた。 かつて侯爵令嬢アナスタシアは、誠実に婚約者サイラスを愛していた。だが、サイラスは男爵令嬢ユリアに心を移していた、 卒業パーティーの夜、ユリアに無実の罪を着せられてしまったアナスタシア。怒ったサイラスに婚約破棄されてしまう。 ユリアの主張を疑いもせず受け入れ、アナスタシアを糾弾したサイラス。 後で真実を知ったからと言って、今さら現れて「結婚しよう」と言われても、答えは一つ。 「 ごめんなさい、そんなつもりはありません」 アナスタシアは失った名誉も、未来も、自分の手で取り戻す。一方サイラスは……。

処理中です...