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二
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「だからっ嫌だったのだ!こうなると、わかっていて王城に連行するなど!」
メリアンテは寝台で横たわっていた。
公爵は娘を抱きしめて涙を流している。
まるで演劇のようだと、王太子は眺めていた。
現実とは思えない。
メリアンテはただ眠っているようにしか見えない。
「婚約を解消してもらうように!何度も掛け合ったのに!」
メリアンテは身体が弱くなった。
泉に落ちてから、時々貧血を起こす様になった。
元々活発な少女だったのに。
とてもではないが王太子妃をやっていくには難しい。
公爵からは何度も婚約の解消を申し入れてられていた。
王は公爵の意見に同意していたが、王太子がそれを認めなかった。メリアンテじゃないなら王位は継がないと突っぱねた。
メリアンテを妻にすると決めていた。
私達は互いに想い合っていた。
想い合う者達が、身分も釣り合う二人が、引き裂かれる事に納得できなかった。
「ギルは!ギルバートはどこですか!」
公爵は周りを見回して誰かを探す。
王太子の顔を見つけると、彼はどこにいったのだと責めた。
「誰の事だ」
「メリアの侍従ですよ!!娘を城に連れて行くなら彼も一緒にとお願いしたはずです」
「さぁ、どこに行ったかな?」
空惚けてみせても、公爵は王太子を睨みつけていた。
「…そんなことより、治癒師に見せてみろ。たちまちメリアンテは元気になれるさ」
この場には治癒師も薬師も魔術師も集まっていた。
この国の粋を集めた優秀な彼らの力があれば、メリアンテも直ぐに元気になれる。
「殿下。我々は亡くなった者は生き返らせません」
治癒師は首を振る。
「この茶番はまだ続くのか」
王太子が寝台に近づきメリアンテの頬に手を伸ばす。
「もういい。早く起きてくれ。私を総出で騙しているつもりかもしれないが、こんな冗談は好きでは、…ない、メリアンテ…?」
メリアンテの頬の冷たさにゾッとした。
これほど温かい部屋にいて、この冷えは何だ。
どういうことだと顔を上げてみれば、メリアンテに付いていた侍女と公爵から睨まれていた。
「ギルは、何処ですか」
「…知らん!奴は逃げた!」
「そんな筈はない。ギルは、命尽きるまでメリアの側にいると誓ったのだから」
公爵までそんな戯言を口にした。
「メリアンテの側にいるのは生涯私一人だ!」
「だから、貴方がメリアンテ様を屠ったのですか?婚約解消が認められる前に。メリアンテ様が殿下の婚約者であるうちに」
不穏な台詞を吐いたのは公爵ではない。
王太子は振り向き、開け放たれた部屋の入り口に立っていたのは王宮の魔導医だった。
メリアンテは寝台で横たわっていた。
公爵は娘を抱きしめて涙を流している。
まるで演劇のようだと、王太子は眺めていた。
現実とは思えない。
メリアンテはただ眠っているようにしか見えない。
「婚約を解消してもらうように!何度も掛け合ったのに!」
メリアンテは身体が弱くなった。
泉に落ちてから、時々貧血を起こす様になった。
元々活発な少女だったのに。
とてもではないが王太子妃をやっていくには難しい。
公爵からは何度も婚約の解消を申し入れてられていた。
王は公爵の意見に同意していたが、王太子がそれを認めなかった。メリアンテじゃないなら王位は継がないと突っぱねた。
メリアンテを妻にすると決めていた。
私達は互いに想い合っていた。
想い合う者達が、身分も釣り合う二人が、引き裂かれる事に納得できなかった。
「ギルは!ギルバートはどこですか!」
公爵は周りを見回して誰かを探す。
王太子の顔を見つけると、彼はどこにいったのだと責めた。
「誰の事だ」
「メリアの侍従ですよ!!娘を城に連れて行くなら彼も一緒にとお願いしたはずです」
「さぁ、どこに行ったかな?」
空惚けてみせても、公爵は王太子を睨みつけていた。
「…そんなことより、治癒師に見せてみろ。たちまちメリアンテは元気になれるさ」
この場には治癒師も薬師も魔術師も集まっていた。
この国の粋を集めた優秀な彼らの力があれば、メリアンテも直ぐに元気になれる。
「殿下。我々は亡くなった者は生き返らせません」
治癒師は首を振る。
「この茶番はまだ続くのか」
王太子が寝台に近づきメリアンテの頬に手を伸ばす。
「もういい。早く起きてくれ。私を総出で騙しているつもりかもしれないが、こんな冗談は好きでは、…ない、メリアンテ…?」
メリアンテの頬の冷たさにゾッとした。
これほど温かい部屋にいて、この冷えは何だ。
どういうことだと顔を上げてみれば、メリアンテに付いていた侍女と公爵から睨まれていた。
「ギルは、何処ですか」
「…知らん!奴は逃げた!」
「そんな筈はない。ギルは、命尽きるまでメリアの側にいると誓ったのだから」
公爵までそんな戯言を口にした。
「メリアンテの側にいるのは生涯私一人だ!」
「だから、貴方がメリアンテ様を屠ったのですか?婚約解消が認められる前に。メリアンテ様が殿下の婚約者であるうちに」
不穏な台詞を吐いたのは公爵ではない。
王太子は振り向き、開け放たれた部屋の入り口に立っていたのは王宮の魔導医だった。
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