彼女は、罰して命を奪った男の後を追った

基本二度寝

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地下の牢で置き去りにしてきた平民の遺体を、公爵はメリアンテと一緒に連れて帰った、と
相も変わらず淡々とそれを報告した宰相は、王太子に大量の書類を置いて部屋から辞した。

しばらく篭ってそれをやっておけと父からの言伝を残して。

数日後、メリアンテの葬儀があったことを聞いた。
公爵が王太子の葬儀の参列は認めなかった為、国王は王太子に仕事を与えて足止めをしていたのだ。

王太子の婚約者なら、王家の墓地の特別区画に埋葬されるはずなのに、メリアンテはその死の前に王太子との婚約関係を解消された事になっており、公爵家の領地で埋葬された。

婚約解消は、公爵がずっと強く望んでいたことだった。
国王も、息子の今後の為にその提案を受け入れた。

公爵は、自ら舵取りをしていた公共事業から手を引いた。
娘が妃となる国のために、王都の流通網を向上させようと力を入れていた。
公爵家の私財を注ぎ込むほどだった。

それをアテにしていた為、公爵が手を引けば事業予算はない。
賛同者は多数いたが、公爵程事業に対して熱意のある者はいなかった。

王太子がそれを引き継ぐ形になるのだが、事業そのものから撤退するしかない。
計画内容を精査して王太子の予算では賄いかねた。
王都の活性化に繋がるとわかっていても、回収が可能か測りかねる投資に手を出すには勇気がいる。
公爵なら魅力的な様々な案を出していただろうが、国王や議会を説得できる力は、王太子にはない。



仕事漬けの日々を過ごす王太子が望んでなくても、話をしたがる輩がいた。
王太子が知り得なかった情報を知れたのも、その輩のおかげとも言える。

「メリアンテ様と従者ギルバートは同じ棺で葬送されていましたよ。なんで知ってるのかって?そりゃあ、ギルバートの怪我だらけで歪んだ顔を整えてやったからですよ。
殿下が拷問したあの顔をね?
眠っているだけのようにしか見えない程度には整えてやりました」

あの場に現れた魔導医は、王太子を気遣うような婉曲的な物言いもせずありのままに喋る。

「王宮の治癒師らも参列を拒まれましてね。なので私が出向いたのですが、同じ回復士でも役割の違う治癒師と魔導医の存在を知らなかった事を公爵は悔いておられましたね。まぁ我々も一纏めに治癒師と呼ばれることはありますし、数が少ないので城から出ることも表立つこともありませんから仕方ないと思いますけど」

もういい黙れと、出て行けと言っても魔導医は好き勝手喋り続けて止まらない。

「まぁ、傷を塞ぐしかできない治癒師より私が出向いてよかったと思いますよ。同じ棺に入れられた二人の魔力を繋いでやりましたから。
お二人は来世で幸せになってくれるといいですね」

魔導医は、まだギルバートの身体に残っていた魔力を、二人の手を繋がせメリアンテに流入できる道を作ってやった。
死した二人の為というよりも、残された者の慰めに。


公爵の仕事を引き継がされ、メリアンテを過去と扱う父や貴族らの発言に、じわじわと王太子はそれが現実なのだと知る。

メリアンテは、亡くなったのだと。

あのような与太話が真実だったと認めたくない。
とどめを刺したのが自分だと認めたくはない。
王太子が刺したのは平民であって、愛した女ではなかった。…はずなのだ。

「二人で棺に」

王太子の婚約者のままなら、そんなことは出来なかった。
死して二人は結ばれたとでも言うのか。
魔導医が余計な事をした、と苛立っても王太子には何もできない。

「メリアンテと想い合っていたのは私のはずだ」

私達二人の間に、平民の割り込む隙などなかった。
そう信じて疑わないのに、…男に無駄な嫉妬などしなければ、メリアンテはまだ生きながらえていたのかもしれない。

どうしようもない考えが頭を巡る。

誰も王太子を責めはしない。
公爵ですら、王太子を罵ることなく王都を去った。
国王は運が悪かったと苦笑するだけ。
使用人達は腫れ物に触れるかのごとく接している。

厭味ったらしくネチネチと甚振っているのは魔導医くらいなものだった。

メリアンテの話をするのも、今はもう魔導医しかいない。


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