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「…なんか全然ロマンチックじゃない…」
「ぷっ…確かに」

アドニナは観客席でぷくりと頬を膨らませた。
上演された話は自分たちの事を題材にした物語だとすぐにわかったけれど、当事者と観測者では感じ方が全く違う。

観客は幕間に席を立つ。
アドニナ達も帰りの時間を考えて、観劇を終えることにした。

「領地の一望。実際は私、かなりときめいていたんだけど…」
「傍から見ると、変わり者の令嬢にしかみえないね」
「サーヴィ…?」
「ごめんごめん。ニーナ。愛してるよ」

サーヴィは機嫌を取るかのように、アドニナの額に口付けた。

「サーヴィが見せたかった演劇ってこれだったの?」

アドニナは微妙な顔をした。

「いや、話題になっているって聞いていた話は、仕事に打ち込んでひたすら想い人が戻って来るのを待つ男の話って聞いていたんだけど…」

「まさかー自分と重ねたりしてないよね?」

「えっ、マサカ。まぁラストはハッピーエンドみたいだし。結末は…俺と一緒かも?」

「そうなの?それは見てみたかったかも」

「じゃあまた、観劇しよう」

「今度は試運転じゃない時に、ね?」

アドニナは幼馴染の機械技師と笑いあった。

王都の外の馬車置き場に止めてあるのは、幌の付いた荷台。
馬が居ない馬車は、太陽の光を動力に換えて動く、サーヴィ作のからくり荷車なのだ。

何処まで動くかの試運転のつもりが、王都まで動くとは思わなかった。

「この性能を使って…ぶつぶつ」
「あーあ。またニーナが妙なこと考えはじめた…」

領地と違い、まだ舗装されていない道をガタガタと揺られながら、二人は愛する者たちが待つ故郷へ帰っていった。

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