7 / 8
六
しおりを挟む
「シェラティエラ!」
「きゃあ!!」
シェラティエラの腕を掴むと、彼女は悲鳴を上げた。
ホボロンを振り向き、怯えた顔をする。
「す、すまない。気が急っていた。話がしたい」
「殿、下…」
シェラティエラはホボロンから逃れようと後ずさった。
「頼む、聞いてほしい。婚約破棄を取り下げたい。どうか私ともう一度婚約を」
「止めてくださいっ!近づかないで!」
逃げ出そうとするシェラティエラを引き止めたくて、ホボロンは腕をつかむ手に力を込めた。
「落ち着いてくれ、お願いだ。婚約を」
「殿下。腕を離してください」
男がホボロンの手首を捻り上げる。
痛みで掴む力が緩み、その隙にシェラティエラは抜け出し、ホボロンを捻り上げた男の影に隠れた。
「一体どういうつもりですか?」
「なんだお前は!関係無いだろう!邪魔をするな」
男はその言葉に眉を寄せた。
「私のラフィに何用ですか」
「お前のラフィとやらに興味はない!私はシェラティエラと話がしたいだけだ!」
「なんですって?」
男は目を丸くした。
どうやら男は何か誤解をしたのだろう。
後ろに隠れるシェラティエラは男の袖を握って、こちらを伺っている。
優しく話しかけようとして、その薬指に光る指輪に気づいた。
青緑の宝石。
目の前の男の瞳と同じ色。
「…っ」
シェラティエラの結い上げた髪。
それは、この国では既婚女性がする髪型だ。
…まさか、
シェラティエラはすでに、婚姻済だというのか…!?
いや、ちがう。目の前の男はあの代官とは全く違う男だ。
ホボロンはどうなっているのか、全く理解ができない。
「何かあったのか?」
混乱するホボロンの後ろから馴染みのある声がした。
振り返ればやはり思っていた人物。
「父上」
国王の登場だった。
そうだ。父に縋ろう。
落ち着け。冷静になれ。
今ならまだ大丈夫だ。
男と別れさせ、シェラティエラを取り戻す。
「…殿下。貴方の父上は国王陛下だ。私ではない」
一瞬躊躇った後、父は不可解なことを口にする。
「何を言っているんですか。貴方が国王で私の父上でしょう?」
「…異なことを言う。私は臣下に下り大公を賜った」
「…は、?」
目の前の父は国王ではないと言う。
しかし、私の父は国王だとも、言う。
全く意味がわからない。
「きゃあ!!」
シェラティエラの腕を掴むと、彼女は悲鳴を上げた。
ホボロンを振り向き、怯えた顔をする。
「す、すまない。気が急っていた。話がしたい」
「殿、下…」
シェラティエラはホボロンから逃れようと後ずさった。
「頼む、聞いてほしい。婚約破棄を取り下げたい。どうか私ともう一度婚約を」
「止めてくださいっ!近づかないで!」
逃げ出そうとするシェラティエラを引き止めたくて、ホボロンは腕をつかむ手に力を込めた。
「落ち着いてくれ、お願いだ。婚約を」
「殿下。腕を離してください」
男がホボロンの手首を捻り上げる。
痛みで掴む力が緩み、その隙にシェラティエラは抜け出し、ホボロンを捻り上げた男の影に隠れた。
「一体どういうつもりですか?」
「なんだお前は!関係無いだろう!邪魔をするな」
男はその言葉に眉を寄せた。
「私のラフィに何用ですか」
「お前のラフィとやらに興味はない!私はシェラティエラと話がしたいだけだ!」
「なんですって?」
男は目を丸くした。
どうやら男は何か誤解をしたのだろう。
後ろに隠れるシェラティエラは男の袖を握って、こちらを伺っている。
優しく話しかけようとして、その薬指に光る指輪に気づいた。
青緑の宝石。
目の前の男の瞳と同じ色。
「…っ」
シェラティエラの結い上げた髪。
それは、この国では既婚女性がする髪型だ。
…まさか、
シェラティエラはすでに、婚姻済だというのか…!?
いや、ちがう。目の前の男はあの代官とは全く違う男だ。
ホボロンはどうなっているのか、全く理解ができない。
「何かあったのか?」
混乱するホボロンの後ろから馴染みのある声がした。
振り返ればやはり思っていた人物。
「父上」
国王の登場だった。
そうだ。父に縋ろう。
落ち着け。冷静になれ。
今ならまだ大丈夫だ。
男と別れさせ、シェラティエラを取り戻す。
「…殿下。貴方の父上は国王陛下だ。私ではない」
一瞬躊躇った後、父は不可解なことを口にする。
「何を言っているんですか。貴方が国王で私の父上でしょう?」
「…異なことを言う。私は臣下に下り大公を賜った」
「…は、?」
目の前の父は国王ではないと言う。
しかし、私の父は国王だとも、言う。
全く意味がわからない。
771
あなたにおすすめの小説
婚約破棄が国を亡ぼす~愚かな王太子たちはそれに気づかなかったようで~
みやび
恋愛
冤罪で婚約破棄などする国の先などたかが知れている。
全くの無実で婚約を破棄された公爵令嬢。
それをあざ笑う人々。
そんな国が亡びるまでほとんど時間は要らなかった。
完結 婚約破棄は都合が良すぎる戯言
音爽(ネソウ)
恋愛
王太子の心が離れたと気づいたのはいつだったか。
婚姻直前にも拘わらず、すっかり冷えた関係。いまでは王太子は堂々と愛人を侍らせていた。
愛人を側妃として置きたいと切望する、だがそれは継承権に抵触する事だと王に叱責され叶わない。
絶望した彼は「いっそのこと市井に下ってしまおうか」と思い悩む……
出て行けと言われた私が、本当に出ていくなんて思ってもいなかったでしょう??
睡蓮
恋愛
グローとエミリアは婚約関係にあったものの、グローはエミリアに対して最初から冷遇的な態度をとり続けていた。ある日の事、グローは自身の機嫌を損ねたからか、エミリアに対していなくなっても困らないといった言葉を発する。…それをきっかけにしてエミリアはグローの前から失踪してしまうこととなるのだが、グローはその事をあまり気にしてはいなかった。しかし後に貴族会はエミリアの味方をすると表明、じわじわとグローの立場は苦しいものとなっていくこととなり…。
くだらない冤罪で投獄されたので呪うことにしました。
音爽(ネソウ)
恋愛
<良くある話ですが凄くバカで下品な話です。>
婚約者と友人に裏切られた、伯爵令嬢。
冤罪で投獄された恨みを晴らしましょう。
「ごめんなさい?私がかけた呪いはとけませんよ」
【完結】嗤われた王女は婚約破棄を言い渡す
干野ワニ
恋愛
「ニクラス・アールベック侯爵令息。貴方との婚約は、本日をもって破棄します」
応接室で婚約者と向かい合いながら、わたくしは、そう静かに告げました。
もう無理をしてまで、愛を囁いてくれる必要などないのです。
わたくしは、貴方の本音を知ってしまったのですから――。
【完結】残酷な現実はお伽噺ではないのよ
綾雅(りょうが)今年は7冊!
恋愛
「アンジェリーナ・ナイトレイ。貴様との婚約を破棄し、我が国の聖女ミサキを害した罪で流刑に処す」
物語でよくある婚約破棄は、王族の信頼を揺るがした。婚約は王家と公爵家の契約であり、一方的な破棄はありえない。王子に腰を抱かれた聖女は、物語ではない現実の残酷さを突きつけられるのであった。
★公爵令嬢目線 ★聖女目線、両方を掲載します。
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
2023/01/11……カクヨム、恋愛週間 21位
2023/01/10……小説家になろう、日間恋愛異世界転生/転移 1位
2023/01/09……アルファポリス、HOT女性向け 28位
2023/01/09……エブリスタ、恋愛トレンド 28位
2023/01/08……完結
嘘の誓いは、あなたの隣で
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢ミッシェルは、公爵カルバンと穏やかに愛を育んでいた。
けれど聖女アリアの来訪をきっかけに、彼の心が揺らぎ始める。
噂、沈黙、そして冷たい背中。
そんな折、父の命で見合いをさせられた皇太子ルシアンは、
一目で彼女に惹かれ、静かに手を差し伸べる。
――愛を信じたのは、誰だったのか。
カルバンが本当の想いに気づいた時には、
もうミッシェルは別の光のもとにいた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる