過去に戻った筈の王

基本二度寝

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「殿下は倒れられて記憶が混乱しているのだろう。退出して休んだほうが良い」

父にしかみえない男は、ホボロンを会場から追い出そうとしている。

「いや、私にはまだやることがある。シェラティエラと話をせねば」

彼女に向き直る。
青緑の瞳の男に縋りついたままの彼女に。

「君には酷いことをした。申し訳ない。
子爵令嬢にうつつを抜かして君と婚約破棄などしてしまうなんて。
心を入れ替えるからどうか、もう一度婚約をしてもらえないだろうか」

きちんと謝罪し、もう一度とシェラティエラを願う。
周りはざわつき、戸惑う声も上がっていた。
王族が謝罪をするという事はそれほどまでに珍しい。
だから、ホボロンは周囲の声を気にも留めなかった。

こちらを真っ直ぐ見つめるシェラティエラに怯えの色は消え、隠れていた男の背から横へと移動する。

「…殿下。訂正したい箇所がいくつかございます。
私と殿下は婚約を結んだことはいままで一度もありません。私は幼い頃に婚約したのは現辺境伯様です」

「なにを言う。婚約していたのは私のはずだ」

「いいえ。私が愛するのは昔から旦那様一筋です。
それに、人妻は王妃にはなれません。殿下がいくら望んだとしても」

「っ…ならば側妃に」
「側室については、現在廃止になっています。現国王がお決めになられました。ご存知のはずですが」

父に似た男が横槍を入れる。

「そんなわけ、」

母が側妃を望んでいたのだから、そんなはずないのだが。

「前国王が、ずっと側妃にと望んでいた令嬢がいたせいで、王太后は心を痛めていました。国王は王太后の姿を見て側室制度を廃止しました」

「お祖父様にそんな人物が…」

いたのだろうか…?

「ええ。若くして過労で亡くなりましたので私の記憶も薄いのですが、確か…よく呟いていた名は…『シェラ…ティエラ』…と、?」

大公は記憶を辿りながら、口にした名前にはっとした。

「殿下、先程まで誰の名を呼んでいましたか」
「…」

ホボロンは理由がわからない嫌な感じを覚えた。

「辺境伯夫人を、ラフィテア殿をなんと呼ばていましたか」

ぐちゃぐちゃに絡まっている糸が少しずつ解けていく。

「ラフィテア、…とは誰だ」

口の中が乾く。青緑の瞳の男は先程なんと言った。

『私のラフィ』

ホボロンが声をかけたのはシェラティエラだ。

事の成り行きを見つめていたシェラティエラが、一歩前に歩み出た。

ああ。なんだろう。
すごく嫌な予感がする。

凛としたその姿はシェラティエラによく


「『シェラティエラ』は私の祖母です」

ホボロンは、目眩を起こし思考を放棄した。


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