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七
「殿下は倒れられて記憶が混乱しているのだろう。退出して休んだほうが良い」
父にしかみえない男は、ホボロンを会場から追い出そうとしている。
「いや、私にはまだやることがある。シェラティエラと話をせねば」
彼女に向き直る。
青緑の瞳の男に縋りついたままの彼女に。
「君には酷いことをした。申し訳ない。
子爵令嬢にうつつを抜かして君と婚約破棄などしてしまうなんて。
心を入れ替えるからどうか、もう一度婚約をしてもらえないだろうか」
きちんと謝罪し、もう一度とシェラティエラを願う。
周りはざわつき、戸惑う声も上がっていた。
王族が謝罪をするという事はそれほどまでに珍しい。
だから、ホボロンは周囲の声を気にも留めなかった。
こちらを真っ直ぐ見つめるシェラティエラに怯えの色は消え、隠れていた男の背から横へと移動する。
「…殿下。訂正したい箇所がいくつかございます。
私と殿下は婚約を結んだことはいままで一度もありません。私は幼い頃に婚約したのは現辺境伯様です」
「なにを言う。婚約していたのは私のはずだ」
「いいえ。私が愛するのは昔から旦那様一筋です。
それに、人妻は王妃にはなれません。殿下がいくら望んだとしても」
「っ…ならば側妃に」
「側室については、現在廃止になっています。現国王がお決めになられました。ご存知のはずですが」
父に似た男が横槍を入れる。
「そんなわけ、」
母が側妃を望んでいたのだから、そんなはずないのだが。
「前国王が、ずっと側妃にと望んでいた令嬢がいたせいで、王太后は心を痛めていました。国王は王太后の姿を見て側室制度を廃止しました」
「お祖父様にそんな人物が…」
いたのだろうか…?
「ええ。若くして過労で亡くなりましたので私の記憶も薄いのですが、確か…よく呟いていた名は…『シェラ…ティエラ』…と、?」
大公は記憶を辿りながら、口にした名前にはっとした。
「殿下、先程まで誰の名を呼んでいましたか」
「…」
ホボロンは理由がわからない嫌な感じを覚えた。
「辺境伯夫人を、ラフィテア殿をなんと呼ばていましたか」
ぐちゃぐちゃに絡まっている糸が少しずつ解けていく。
「ラフィテア、…とは誰だ」
口の中が乾く。青緑の瞳の男は先程なんと言った。
『私のラフィ』
ホボロンが声をかけたのはシェラティエラだ。
事の成り行きを見つめていたシェラティエラが、一歩前に歩み出た。
ああ。なんだろう。
すごく嫌な予感がする。
凛としたその姿はシェラティエラによく似ている。
「『シェラティエラ』は私の祖母です」
ホボロンは、目眩を起こし思考を放棄した。
父にしかみえない男は、ホボロンを会場から追い出そうとしている。
「いや、私にはまだやることがある。シェラティエラと話をせねば」
彼女に向き直る。
青緑の瞳の男に縋りついたままの彼女に。
「君には酷いことをした。申し訳ない。
子爵令嬢にうつつを抜かして君と婚約破棄などしてしまうなんて。
心を入れ替えるからどうか、もう一度婚約をしてもらえないだろうか」
きちんと謝罪し、もう一度とシェラティエラを願う。
周りはざわつき、戸惑う声も上がっていた。
王族が謝罪をするという事はそれほどまでに珍しい。
だから、ホボロンは周囲の声を気にも留めなかった。
こちらを真っ直ぐ見つめるシェラティエラに怯えの色は消え、隠れていた男の背から横へと移動する。
「…殿下。訂正したい箇所がいくつかございます。
私と殿下は婚約を結んだことはいままで一度もありません。私は幼い頃に婚約したのは現辺境伯様です」
「なにを言う。婚約していたのは私のはずだ」
「いいえ。私が愛するのは昔から旦那様一筋です。
それに、人妻は王妃にはなれません。殿下がいくら望んだとしても」
「っ…ならば側妃に」
「側室については、現在廃止になっています。現国王がお決めになられました。ご存知のはずですが」
父に似た男が横槍を入れる。
「そんなわけ、」
母が側妃を望んでいたのだから、そんなはずないのだが。
「前国王が、ずっと側妃にと望んでいた令嬢がいたせいで、王太后は心を痛めていました。国王は王太后の姿を見て側室制度を廃止しました」
「お祖父様にそんな人物が…」
いたのだろうか…?
「ええ。若くして過労で亡くなりましたので私の記憶も薄いのですが、確か…よく呟いていた名は…『シェラ…ティエラ』…と、?」
大公は記憶を辿りながら、口にした名前にはっとした。
「殿下、先程まで誰の名を呼んでいましたか」
「…」
ホボロンは理由がわからない嫌な感じを覚えた。
「辺境伯夫人を、ラフィテア殿をなんと呼ばていましたか」
ぐちゃぐちゃに絡まっている糸が少しずつ解けていく。
「ラフィテア、…とは誰だ」
口の中が乾く。青緑の瞳の男は先程なんと言った。
『私のラフィ』
ホボロンが声をかけたのはシェラティエラだ。
事の成り行きを見つめていたシェラティエラが、一歩前に歩み出た。
ああ。なんだろう。
すごく嫌な予感がする。
凛としたその姿はシェラティエラによく似ている。
「『シェラティエラ』は私の祖母です」
ホボロンは、目眩を起こし思考を放棄した。
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