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三
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リグツィネはエルシャナの日記を遡って一気に読んだ。
この異国の言語で日記が書かれて始めた、15歳から一昨日までの三年分の記述のみ。
毎日書かれていたわけでもないので昼前には読み終えられた。
用意された昼食を終え、情報の整理をする。
15歳のある日を境に、それ以前のものはこの国の公用語で書かれてあった。
日記を読んだ限り、どうやら学園入学前に怪我を負ってから今のエルシャナになったようだった。
それ以前のものと比べても、文章に令嬢としての品が無くなっている。
本物のエルシャナはその怪我で亡くなったのかもしれない。
怪我をした翌日から異国文字でエルシャナが書き始めた日記には、
『憧れのゲームの世界!
夢じゃない!推しに会える!
学園入学まであと少し…
待っててね!わたしの王子様♡』
とある。
リグツィネに学園でのエルシャナの記憶は殆ど無い。
クラスが違うこともあったし、知り合いでもなかった。
絡まれたことは…あったかもしれないけれど、詳細までは覚えていない。
何もないところでよく転び、チラチラと周りを伺う変な令嬢だと噂があった気もする。
学園生活の日記はほとんど愚痴ばかりだった。
王太子殿下以外にも彼の側近を狙っていたようだけれど、上手くいかないと書いてあった。
エルシャナの成績は芳しくないようだ。
しかし、彼女には魔法の才能はあったようで、黒魔法の事が書かれることが多くなった。
魔法の理論をメモしているようだけれど、理解は出来ない。
ただ、人らしきものを二体、双方向に矢印を向けている絵を見て、やはり入れ替わりの類の魔法なのだと予想した通りだった。
それが当たったところで、どうしようもない。
魔法の才能のないリグツィネには理論を解読し、元に戻る術はない。
(戻れない、か…)
手鏡を再び手に取る。
リグツィネとは違う顔立ち。
大きな瞳に長いまつげ。
小さい顔に、ぷくりとした唇。
「っ…ほんっと、かわいい…」
何この子。
昨夜の彼女は、つり上がった目をしていたけれど化粧でキツめの顔を作っていたようだ。
素顔がこんなに可愛いのにもったいない。
先程、手鏡を渡された時もあまりの可愛さに鼻血を吹くかと思った。
令嬢の矜持としてそこは耐えた!
真下を見下ろせば、谷間も見える。
リグツィネにはない光景だった。
「…くっ…大きい…」
背が高くスレンダー体型だったリグツィネは、低い目線にも感動した。
入れ替わる前は、ヒールを履けば長身の王太子殿下の視線と同じになる位には高かった。
キツイ顔立ちは王妃には向いたけれど、リグツィネ自身はこのエルシャナのような、庇護欲を誘うような顔立ちに憧れていた。
しばし鏡を見つめうっとりとエルシャナの顔を堪能していた。
この異国の言語で日記が書かれて始めた、15歳から一昨日までの三年分の記述のみ。
毎日書かれていたわけでもないので昼前には読み終えられた。
用意された昼食を終え、情報の整理をする。
15歳のある日を境に、それ以前のものはこの国の公用語で書かれてあった。
日記を読んだ限り、どうやら学園入学前に怪我を負ってから今のエルシャナになったようだった。
それ以前のものと比べても、文章に令嬢としての品が無くなっている。
本物のエルシャナはその怪我で亡くなったのかもしれない。
怪我をした翌日から異国文字でエルシャナが書き始めた日記には、
『憧れのゲームの世界!
夢じゃない!推しに会える!
学園入学まであと少し…
待っててね!わたしの王子様♡』
とある。
リグツィネに学園でのエルシャナの記憶は殆ど無い。
クラスが違うこともあったし、知り合いでもなかった。
絡まれたことは…あったかもしれないけれど、詳細までは覚えていない。
何もないところでよく転び、チラチラと周りを伺う変な令嬢だと噂があった気もする。
学園生活の日記はほとんど愚痴ばかりだった。
王太子殿下以外にも彼の側近を狙っていたようだけれど、上手くいかないと書いてあった。
エルシャナの成績は芳しくないようだ。
しかし、彼女には魔法の才能はあったようで、黒魔法の事が書かれることが多くなった。
魔法の理論をメモしているようだけれど、理解は出来ない。
ただ、人らしきものを二体、双方向に矢印を向けている絵を見て、やはり入れ替わりの類の魔法なのだと予想した通りだった。
それが当たったところで、どうしようもない。
魔法の才能のないリグツィネには理論を解読し、元に戻る術はない。
(戻れない、か…)
手鏡を再び手に取る。
リグツィネとは違う顔立ち。
大きな瞳に長いまつげ。
小さい顔に、ぷくりとした唇。
「っ…ほんっと、かわいい…」
何この子。
昨夜の彼女は、つり上がった目をしていたけれど化粧でキツめの顔を作っていたようだ。
素顔がこんなに可愛いのにもったいない。
先程、手鏡を渡された時もあまりの可愛さに鼻血を吹くかと思った。
令嬢の矜持としてそこは耐えた!
真下を見下ろせば、谷間も見える。
リグツィネにはない光景だった。
「…くっ…大きい…」
背が高くスレンダー体型だったリグツィネは、低い目線にも感動した。
入れ替わる前は、ヒールを履けば長身の王太子殿下の視線と同じになる位には高かった。
キツイ顔立ちは王妃には向いたけれど、リグツィネ自身はこのエルシャナのような、庇護欲を誘うような顔立ちに憧れていた。
しばし鏡を見つめうっとりとエルシャナの顔を堪能していた。
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