過保護の王は息子の運命を見誤る

基本二度寝

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「我が息子の生誕祝に多くの出席を感謝する。本日を持って息子カラストは、王太子となる」

壇上から国王が貴族らに宣言をした。
カラストを知るものは眉を顰め、何も知らぬ者はただ素直に祝福を贈る。

国王の隣に立つカラストは笑みをたたえた。

「王太子となるカラストの婚約者を正式に発表する」

カラストは舞台袖に目をやる。
いつも通り可愛げを見せぬアレスフィナと、姉を気遣うリリーザの姿。
その後ろに立つのは王の手駒の魔術師。
平民から実力で成り上がった男を、卑しい身分のくせにと忌々しく思っていた。

その三人が王の合図で袖から姿を見せた。

何故三人揃って…?

ぞろぞろと現れた三人に貴族も、そしてカラストも不審に思う。

「…父上?」

小さく隣から父を呼ぶ。
気づいた父は安心しなさいと言わんばかりに頷いた。

それで納得できるはずもなく。
わけもわからずカラストは成り行きを見つめるしかない。

「公爵家の令嬢。知ってもいるだろうが、右からリリーザ嬢、アレスフィナ嬢。後ろの男は私の側近、若いながらに我が国の最高峰の魔術師グイスだ。…リリーザ嬢、前へ」

国王に言われるままリリーザが一歩前へ出る。

「王太子カラストの婚約者、公爵家の令嬢リリーザ嬢だ」

「…なっ!?」

リリーザは壇上で綺麗な礼をみせる。
驚きの声を上げるカラスト以外に、不満に上がる声はない。

祝福の拍手が会場を包む。

中には首を傾げる者もいた。カラストが吹聴していた言葉を聞いた者たちだろう。

「ち、父上、…?」

「併せて、アレスフィナ嬢の婚約も発表する」

…ああ、先程の発表は過ちか。
混乱しているカラストは口を噤んで王の発言を待つ。

今度はリリーザが一歩下がり、アレスフィナと魔術師が前に出る。

「公表はしていなかったが、公爵の長子アレスフィナは我が剣とも言える魔術師グイスと長く婚約していた。今日この場をもって彼らの婚約と婚姻の発表する」

アレスフィナとグイスは二人で揃って礼をとった。
紹介されたばかりの若い夫婦は一瞬視線を交わらせ、どちらからもとなく微笑む様子に、会場からは温かい拍手が贈られた。

「…婚姻?アレスフィナが…?」

「左様。どうだ、驚いただろう?常々リリーザを愛している、リリーザが婚約者だったならと言っていたそうではないか」

国王は息子に対して優しく微笑んでいる。
王はいつでも息子の望みを叶えた。

だからカラストは勘違いしていた。

カラストの気持ちを父は見通していたと。
そこまで察しの良い父ではなかった。
カラストの言動を真に受けていただけだった。

「待って、ください。父上。父はアレスフィナを婚約者に選んだと昔…」

国王は優しく首を振る。

「息子の婚約者には『公爵家の令嬢』とした」
「あの時、公爵家にはアレスフィナしか子はなかったはずです!ならば」

何故か喜びを見せない息子の姿に王は、首を傾げた。

「私はお前が将来出会う運命の相手を知っていた。だから、婚約者にアレスフィナとは明言しなかった。事実、お前は愛する者と出会った。そうであろう?」

王の耳にはカラストがリリーザに愛を囁いていた事も届いている。

しかし、カラストがリリーザに愛を囁いていたのは、近くにアレスフィナがいた時だけだ。

婚約者でありながら、カラストに関心を示さないアレスフィナの意識を向けたかっただけだった。


カラストは周囲の声を聞かなかった。

アレスフィナに好意を持つなら態度を改めよと言う王妃の言葉も。
こんな事をしても姉の関心は得られませんよと笑うリリーザの言葉も。
父以外には、カラストの想いが気づかれていた。
肝心の父には気づかれなかった。


カラストは、望むものは何でも持っているし手に入れてきた。
すべて父の力で。

手中にあった筈のアレスフィナは幻で、実体は既に他者の物になっていると知り、取り繕うこともできずに、壇上でへたり込んだ。

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