過保護の王は息子の運命を見誤る

基本二度寝

文字の大きさ
5 / 9

「カラスト、気づいたか」

目覚めたカラストの視界に、父の顔がある。
頭を撫でる感触は父だったのだろう。

「夢…」
「なにか悪い夢でも見たのか?」

悪い夢だ。

「ええ。とてもひどい夢を見ました。婚約者が…」
「安心しなさい」

王は微笑む。
夢の中と同じように。

安心しろと言われて、カラストは悪い予感がした。
これもまた夢と同じだと思った。

「お前は運命の相手と結ばれる」

「運命…?」

運命の相手。
嫌な予感が確信に変わる。

カラストの寝室の扉を叩く音がする。
母と公爵が顔を見せた。

「壇上で倒れるなど…貴族達の不安を煽って如何するのですか」
「まぁ、そう言うな。慣れぬ場面で緊張したのだろう」
「次期王がそれでどうしますか」

いつも通り厳しい母。
それを宥めるのは父。
そんな二人を周囲は理想の夫婦だと言う。
しかし、父はそうとは思っていない事をカラストは知っている。

「ほら、貴方の婚約者を連れてきましたよ。きちんと挨拶をなさい」

成り行きを見守る公爵の後ろから現れたのは…ー

「これは悪夢の続きか…」

血のつながりがない故アレスフィナに似ていない妹。
アレスフィナの義妹いもうとという肩書がなければ、歯牙にもかけなかった女が現れる。

王は気を使って、ようやく婚約者と公表できた運命の二人を置いて、それ以外の者に退出を命じた。
去り際の、父の自信満々な笑みがカラストの癪に障った。


「殿下。言ったではないですか。素直になればよろしかったのに」

リリーザはカラストと近くに歩み寄り、苦笑する。

「まぁ、仮にそうなされても多少義姉あねの印象が良くなる程度で、婚約は不可能でしたけれどね。私が公爵家に引き取られる前から、フィナ義姉様はグイス義兄様と仲睦まじく過ごしていましたから」

「…何」

あの二人にそんな古くから接点があったのか。
アレスフィナが登城した時には二人にそんな素振りは見せなかった。
王の側にいる男と対面できる場面もそう多くはないが。

「ですが、ご安心ください。私も殿下と同じ価値観を持っておりますよ。あのような、平民の男に心を許す義姉の気持ちは知れません。…かと言って姉妹仲が悪いわけでもありませんけれどね?異性の趣味が合わないだけで、フィナ義姉様を尊敬する気持ちは変わりませんから」

平民とカラストもリリーザも扱き下ろすが、王の側近が平民のままなはずはない。

実力でのし上がった男は、当然王から爵位を賜っている。
平民の男は好いた女を手に入れる為にかなりの努力したのだろう。

カラストはアレスフィナを得るための努力を何かしたか?
欲しいと駄々をこね、得た気になっていた。


アレスフィナがそんなカラストに魅力を感じるはずが無い。
彼女にはカラストより魅力的に感じる男が近くにいた。
きっと平民魔術師の並々ならぬ努力を知って、アレスフィナはそれに応えたのだ。

「私は滑稽だな」

「ええとても」

リリーザは歯に衣着せぬ物言いで、カラストを励ましも慰めもしない。

「空回っていることに気づきもしない殿下はとても可愛らしかったですよ」

どれだけリリーザに愛を語っても、アレスフィナは嫉妬も見せなかった。
嫉妬するはずがない。

アレスフィナの運命の相手はカラストではない。

カラストの運命の相手はアレスフィナだったのに。

あなたにおすすめの小説

【完結済み】婚約破棄したのはあなたでしょう

水垣するめ
恋愛
公爵令嬢のマリア・クレイヤは第一王子のマティス・ジェレミーと婚約していた。 しかしある日マティスは「真実の愛に目覚めた」と一方的にマリアとの婚約を破棄した。 マティスの新しい婚約者は庶民の娘のアンリエットだった。 マティスは最初こそ上機嫌だったが、段々とアンリエットは顔こそ良いが、頭は悪くなんの取り柄もないことに気づいていく。 そしてアンリエットに辟易したマティスはマリアとの婚約を結び直そうとする。 しかしマリアは第二王子のロマン・ジェレミーと新しく婚約を結び直していた。 怒り狂ったマティスはマリアに罵詈雑言を投げかける。 そんなマティスに怒ったロマンは国王からの書状を叩きつける。 そこに書かれていた内容にマティスは顔を青ざめさせ……

(完結)あなたが婚約破棄とおっしゃったのですよ? 

青空一夏
恋愛
スワンはチャーリー王子殿下の婚約者。 チャーリー王子殿下は冴えない容姿の伯爵令嬢にすぎないスワンをぞんざいに扱い、ついには婚約破棄を言い渡す。 しかし、チャーリー王子殿下は知らなかった。それは…… これは、身の程知らずな王子がギャフンと言わされる物語です。コメディー調になる予定で す。過度な残酷描写はしません(多分(•́ε•̀;ก)💦) それぞれの登場人物視点から話が展開していく方式です。 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定ご都合主義。タグ途中で変更追加の可能性あり。

やり直しの王太子、全力で逃げる

雨野千潤
恋愛
婚約者が男爵令嬢を酷く苛めたという理由で婚約破棄宣言の途中だった。 僕は、気が付けば十歳に戻っていた。 婚約前に全力で逃げるアルフレッドと全力で追いかけるグレン嬢。 果たしてその結末は…

捨てられたなら 〜婚約破棄された私に出来ること〜

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
長年の婚約者だった王太子殿下から婚約破棄を言い渡されたクリスティン。 彼女は婚約破棄を受け入れ、周りも処理に動き出します。 さて、どうなりますでしょうか…… 別作品のボツネタ救済です(ヒロインの名前と設定のみ)。 突然のポイント数増加に驚いています。HOTランキングですか? 自分には縁のないものだと思っていたのでびっくりしました。 私の拙い作品をたくさんの方に読んでいただけて嬉しいです。 それに伴い、たくさんの方から感想をいただくようになりました。 ありがとうございます。 様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。 ただ、皆様に楽しんでいただけたらと思いますので、中にはいただいたコメントを非公開とさせていただく場合がございます。 申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。 もちろん、私は全て読ませていただきますし、削除はいたしません。 7/16 最終部がわかりにくいとのご指摘をいただき、訂正しました。 ※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。

【完結】傲慢にも程がある~淑女は愛と誇りを賭けて勘違い夫に復讐する~

Ao
恋愛
由緒ある伯爵家の令嬢エレノアは、愛する夫アルベールと結婚して三年。幸せな日々を送る彼女だったが、ある日、夫に長年の愛人セシルがいることを知ってしまう。 さらに、アルベールは自身が伯爵位を継いだことで傲慢になり、愛人を邸宅に迎え入れ、エレノアの部屋を与える暴挙に出る。 挙句の果てに、エレノアには「お飾り」として伯爵家の実務をこなさせ、愛人のセシルを実質の伯爵夫人として扱おうとする始末。 深い悲しみと激しい屈辱に震えるエレノアだが、淑女としての誇りが彼女を立ち上がらせる。 彼女は社交界での人脈と、持ち前の知略を駆使し、アルベールとセシルを追い詰める貴族らしい復讐を誓うのであった。

完結 婚約破棄は都合が良すぎる戯言

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子の心が離れたと気づいたのはいつだったか。 婚姻直前にも拘わらず、すっかり冷えた関係。いまでは王太子は堂々と愛人を侍らせていた。 愛人を側妃として置きたいと切望する、だがそれは継承権に抵触する事だと王に叱責され叶わない。 絶望した彼は「いっそのこと市井に下ってしまおうか」と思い悩む……

これも愛のカタチ《完結》

アーエル
恋愛
愛のカタチは人それぞれ しかしその方法はあっていますか? 5話完結 他社でも公開

愚かこそが罪《完結》

アーエル
恋愛
貴族として、まあ、これで最後だと私は開き直ってでたパーティー。 王家主催だから断れなかったと言う理由もある。 そんなパーティーをぶち壊そうとする輩あり。 はあ? 私にプロポーズ? アンタ頭大丈夫? 指輪を勝手に通そうとしてもある契約で反発している。 って、それって使用禁止の魔導具『隷属の指輪』じゃん! このバカ、王太子だけどぶっ飛ばしちゃってもいいよね? 他社でも公開