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五
「カラスト、気づいたか」
目覚めたカラストの視界に、父の顔がある。
頭を撫でる感触は父だったのだろう。
「夢…」
「なにか悪い夢でも見たのか?」
悪い夢だ。
「ええ。とてもひどい夢を見ました。婚約者が…」
「安心しなさい」
王は微笑む。
夢の中と同じように。
安心しろと言われて、カラストは悪い予感がした。
これもまた夢と同じだと思った。
「お前は運命の相手と結ばれる」
「運命…?」
運命の相手。
嫌な予感が確信に変わる。
カラストの寝室の扉を叩く音がする。
母と公爵が顔を見せた。
「壇上で倒れるなど…貴族達の不安を煽って如何するのですか」
「まぁ、そう言うな。慣れぬ場面で緊張したのだろう」
「次期王がそれでどうしますか」
いつも通り厳しい母。
それを宥めるのは父。
そんな二人を周囲は理想の夫婦だと言う。
しかし、父はそうとは思っていない事をカラストは知っている。
「ほら、貴方の婚約者を連れてきましたよ。きちんと挨拶をなさい」
成り行きを見守る公爵の後ろから現れたのは…ー
「これは悪夢の続きか…」
血のつながりがない故アレスフィナに似ていない妹。
アレスフィナの義妹という肩書がなければ、歯牙にもかけなかった女が現れる。
王は気を使って、ようやく婚約者と公表できた運命の二人を置いて、それ以外の者に退出を命じた。
去り際の、父の自信満々な笑みがカラストの癪に障った。
「殿下。言ったではないですか。素直になればよろしかったのに」
リリーザはカラストと近くに歩み寄り、苦笑する。
「まぁ、仮にそうなされても多少義姉の印象が良くなる程度で、婚約は不可能でしたけれどね。私が公爵家に引き取られる前から、フィナ義姉様はグイス義兄様と仲睦まじく過ごしていましたから」
「…何」
あの二人にそんな古くから接点があったのか。
アレスフィナが登城した時には二人にそんな素振りは見せなかった。
王の側にいる男と対面できる場面もそう多くはないが。
「ですが、ご安心ください。私も殿下と同じ価値観を持っておりますよ。あのような、平民の男に心を許す義姉の気持ちは知れません。…かと言って姉妹仲が悪いわけでもありませんけれどね?異性の趣味が合わないだけで、フィナ義姉様を尊敬する気持ちは変わりませんから」
平民とカラストもリリーザも扱き下ろすが、王の側近が平民のままなはずはない。
実力でのし上がった男は、当然王から爵位を賜っている。
平民の男は好いた女を手に入れる為にかなりの努力したのだろう。
カラストはアレスフィナを得るための努力を何かしたか?
欲しいと駄々をこね、得た気になっていた。
アレスフィナがそんなカラストに魅力を感じるはずが無い。
彼女にはカラストより魅力的に感じる男が近くにいた。
きっと平民魔術師の並々ならぬ努力を知って、アレスフィナはそれに応えたのだ。
「私は滑稽だな」
「ええとても」
リリーザは歯に衣着せぬ物言いで、カラストを励ましも慰めもしない。
「空回っていることに気づきもしない殿下はとても可愛らしかったですよ」
どれだけリリーザに愛を語っても、アレスフィナは嫉妬も見せなかった。
嫉妬するはずがない。
アレスフィナの運命の相手はカラストではない。
カラストの運命の相手はアレスフィナだったのに。
目覚めたカラストの視界に、父の顔がある。
頭を撫でる感触は父だったのだろう。
「夢…」
「なにか悪い夢でも見たのか?」
悪い夢だ。
「ええ。とてもひどい夢を見ました。婚約者が…」
「安心しなさい」
王は微笑む。
夢の中と同じように。
安心しろと言われて、カラストは悪い予感がした。
これもまた夢と同じだと思った。
「お前は運命の相手と結ばれる」
「運命…?」
運命の相手。
嫌な予感が確信に変わる。
カラストの寝室の扉を叩く音がする。
母と公爵が顔を見せた。
「壇上で倒れるなど…貴族達の不安を煽って如何するのですか」
「まぁ、そう言うな。慣れぬ場面で緊張したのだろう」
「次期王がそれでどうしますか」
いつも通り厳しい母。
それを宥めるのは父。
そんな二人を周囲は理想の夫婦だと言う。
しかし、父はそうとは思っていない事をカラストは知っている。
「ほら、貴方の婚約者を連れてきましたよ。きちんと挨拶をなさい」
成り行きを見守る公爵の後ろから現れたのは…ー
「これは悪夢の続きか…」
血のつながりがない故アレスフィナに似ていない妹。
アレスフィナの義妹という肩書がなければ、歯牙にもかけなかった女が現れる。
王は気を使って、ようやく婚約者と公表できた運命の二人を置いて、それ以外の者に退出を命じた。
去り際の、父の自信満々な笑みがカラストの癪に障った。
「殿下。言ったではないですか。素直になればよろしかったのに」
リリーザはカラストと近くに歩み寄り、苦笑する。
「まぁ、仮にそうなされても多少義姉の印象が良くなる程度で、婚約は不可能でしたけれどね。私が公爵家に引き取られる前から、フィナ義姉様はグイス義兄様と仲睦まじく過ごしていましたから」
「…何」
あの二人にそんな古くから接点があったのか。
アレスフィナが登城した時には二人にそんな素振りは見せなかった。
王の側にいる男と対面できる場面もそう多くはないが。
「ですが、ご安心ください。私も殿下と同じ価値観を持っておりますよ。あのような、平民の男に心を許す義姉の気持ちは知れません。…かと言って姉妹仲が悪いわけでもありませんけれどね?異性の趣味が合わないだけで、フィナ義姉様を尊敬する気持ちは変わりませんから」
平民とカラストもリリーザも扱き下ろすが、王の側近が平民のままなはずはない。
実力でのし上がった男は、当然王から爵位を賜っている。
平民の男は好いた女を手に入れる為にかなりの努力したのだろう。
カラストはアレスフィナを得るための努力を何かしたか?
欲しいと駄々をこね、得た気になっていた。
アレスフィナがそんなカラストに魅力を感じるはずが無い。
彼女にはカラストより魅力的に感じる男が近くにいた。
きっと平民魔術師の並々ならぬ努力を知って、アレスフィナはそれに応えたのだ。
「私は滑稽だな」
「ええとても」
リリーザは歯に衣着せぬ物言いで、カラストを励ましも慰めもしない。
「空回っていることに気づきもしない殿下はとても可愛らしかったですよ」
どれだけリリーザに愛を語っても、アレスフィナは嫉妬も見せなかった。
嫉妬するはずがない。
アレスフィナの運命の相手はカラストではない。
カラストの運命の相手はアレスフィナだったのに。
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