番たくない!

基本二度寝

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王都に戻り、ビビはウィドを両親に紹介しようと実家に連れて帰った。

「愛しの番!」

帰宅するなり、嫌な男の声がしてウィドにしがみついた。

「あぁ…ビビおかえり」
「誰だ貴様!私の番に気安く触るなっ」

父の声と、不快な声が同時にした。
抱き上げられたウィドの腕の中でビビは挑発するように彼に口付けた。

「ななななっなにをするのだ!私の愛しのっ」
「父様。ウィドが私の恋人です。結婚するなら彼以外とは考えられません」

苦笑する父は頷いて、二人を応接室にと促した。

「そういうわけですので、婚約の申し入れはお断りいたします」

父は伯爵家の子息を笑顔で断りを入れる。
何度も断っているのに、「番に会わせろ。会えばわかる」と聞かなかった。
結果、ビビは他の男を連れてきて、これみよがしにいちゃついていた。

「なぜ!何故!お前は私の番だろう!わからないのか?こんなに愛しく思っているのに」

ビビは番をじっと見ていた。
地団駄を踏む男を冷めた目で。

「…うん。何も感じない。やっぱりあれが番だなんて信じられないわ。気の迷いだったのかな」

ウィドが抱きしめている腕に力を込めた。
それに気づいて見上げれば愛しい恋人が優しく見つめている。

「ウィドが番ならよかったのに」

ビビの言葉にウィドは微笑んだ。




ビビを平民と虐げていた伯爵家の子息は、急に彼女を「番だ!」と吹聴し、周りを戸惑わせた。
手のひらを返したようなビビへの態度に、周囲は距離を取り、成り行きを見守った。
結局、ビビからは冷たくあしらわれ婚約も成立せず、子息の番発言は虚言なのではと疑った。
最終的に爵位を笠に婚約しようとしたが、ビビの父、魔法師団副団長の肩書は爵位を凌ぐ効果があったようで、伯爵家は国王陛下直々にお叱りを受けた。

ビビは早々に家を出て、ウィドと国を離れていたが、諦めきれない子息はそんなことも知らず、男爵家の周りを彷徨い、うんざりしたビビの父は、異動を申請して母と二人で辺境に引っ込んだ。

顔つきも変わり、やつれて尚、ふらふら番を求める伯爵子息に周りの見方は少しずつ変わった。

「番」とは呪いのようだと。

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