魅了によって堕ちる者と救われる者

基本二度寝

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スラーシアは久しぶりに、心地よく目覚めることができた。

半ば強制的に受けさせられていたバルドの治癒がない日は、痛みで眠れない夜もあった。
連日に渡る王太子達の無自覚な攻撃に身体が悲鳴を上げていたから、今日みたいに痛みで起こされなかったのは久々だった。

ふと、胸に他者の体温と重みを感じた。
スラーシアの顔の横に、いつも傷を癒やしてくれるバルドがシーツに顔を突っ伏していた。
重みの原因は、彼の腕がスラーシアの胸の上にあったからだ。

「…?バルド?」

彼の顔に触れようとして、何も身に着けていないことに気づく。
彼も、そして自分も。

「えっあ、なんでっ」

口腔粘膜接触の治癒は、初めこそ恥ずかしかったけれど回数を重ねて慣れた。
慣れるほどに回数を重ねた。
あまりに、何度も治癒されるものだから、顔をしかめてお説教されたこともある。
重篤になれば、口の接触だけじゃなく身体を深く繋げての治療になるのだぞ、と。

この状況は、まさか。

スラーシアの顔に熱が集まった。

不思議と不快や嫌悪の気持ちは沸かなかった。
治癒の為、不可抗力でも純潔を失えば王太子との婚約継続は不可能。
王太子殿下の望み通り、婚約は破棄されるだろう。

「よかった…」

安堵で目尻に涙が滲む。

殿下の婚約者としての責務をようやく放棄出来る。

元々、スラーシアには手の余る問題だった。
解決策を見出だせずに、ただ、痛みに耐えるしかなかった。

バルドの身体に腕を回して抱き合うような体勢になる。

「ありがとう、バルド」

二重の意味で感謝する。
スラーシアを彼らから救ってくれた事。
婚約を破棄できる理由をくれた事。

ふいに、強く抱き寄せられた。

「次からはもっと早く助けを求めろよ」

「…起きてたの?」

「今起きた」

聞きなれない掠れ艶めいた声色がスラーシアの耳を刺激する。
今の状況を思い出して、また赤面した。

「つ、次があるの、?」
「あるだろ。俺達の縁は切れてない。ラーシの爺さんに婚約の申し入れをした」

「…え?」

「ラーシを傷物にするから俺にくれって。いかつい顔して大笑いされたけどな」

スラーシアの祖父は厳しい人という印象だった。
孫であっても甘やかしてくれた記憶はない。
その祖父が笑うなんて。

「傷物になるのなら、婚約なんてまどろっこしいこと言わずにとっとと結婚しろって言われた」

「けっこ?!」

「侯爵に命じられたら、俺の立場じゃあなぁ」

王族相手に啖呵を切りに行くような男が宣う。

照れもあり、バルドの腕から抜け出そうと藻掻くが、簡単には行かなかった。

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